ゴーレム効果とは?具体例やビジネスシーンでの活用方法を解説

ゴーレム効果の記事
人に対する期待が低いと、その人の成果は期待通りに下がってしまうことがあります。このような心理的現象をゴーレム効果と言います。上下関係の中で発生しやすい現象で、学校の他にビジネスでも発生が見られる心理的現象です。ゴーレム効果の反対概念であるピグマリオン効果、ゴーレム効果の具体例やゴーレム効果に陥らないための対策について解説します。
目次

ゴーレム効果とは?

ゴーレム効果とは、人に対する期待が低い時に、その人の成果が期待通りに下がってしまう心理的現象を言います。

ゴーレム効果の提唱者

ゴーレム効果の提唱者は米国の教育心理学者ロバート・ローゼンタールです。ローゼンタールは教師・生徒に対して実験を行い、ゴーレム効果を見出しました。

ピグマリオン効果との違い

ローゼンタールが提唱した心理的現象として、ピグマリオン効果もあります。ピグマリオン効果はゴーレム効果の反対概念で、人に対して高い期待をした時に、その人の成果が期待通りに上がるという効果です。

ゴーレム効果が起こりがちな対人関係とは?

ゴーレム効果が起こりがちな対人関係とは上下関係です。ローゼンタールの実験も学校で行われました。学校の教師が生徒に対して「Aくんの成績は良くない」と言うと、生徒の成績が下がっていきます。会社の上司と部下の上下関係も同様です。

ゴーレム効果の具体例とは?

ビジネスにおけるゴーレム効果には、どんな具体例があるかを説明します。

自己肯定感が低下する

営業成績が上がらないAさんに対して、営業所長は「Aさんの成績はダメだな。営業所のお荷物だよ」と言いました。するとAさんはがんばろうとしても営業所長の言葉が足かせとなり、商談をしても「僕はどうせ商談をまとめられない」とゴーレム効果に陥り成績は下降線をたどります。ありのままの自分を受容できないと自己肯定感は下がっていると言えます。このように、自己肯定感が低下するゴーレム効果があります。

人事評価が低下する

ゴーレム効果に陥ると、成果を上げることができないので人事評価が下がります。そうなると、低い評価を受けた人は「低い期待しかされていない」ことを自覚します。そうなればますますゴーレム効果の罠に陥り、パフォーマンスをあげることができなくなります。

難易度の高い仕事・課題に挑戦できなくなる

ゴーレム効果に陥っている人は、高い成果をあげられませんから、上司から責任の重い仕事が回ってきません。従って、軽易な仕事に携わり続けるしかなくなり、スキルアップが望めなくなります。ゴーレム効果に陥っている人は、機会がないので、難易度の高い仕事・課題に挑戦できなくなるのです。仮に機会を与えられたとしても自己肯定感が低いですから難易度の高い仕事をこなしきれません。

難易度の高い仕事をこなすことで、専門性が磨かれ、問題解決力も高まっていきます。しかしゴーレム効果に陥っていると、専門性や問題解決力を涵養することができなくなります。いつまでも軽易な仕事しかできない、パフォーマンスの低い社員が生まれてしまうのです。

組織の生産性が低下する

ゴーレム効果に陥っている人は、期待通りに低いパフォーマンスになってしまうので、その人自身の生産性は上がりません。しかしゴーレム効果が他の社員にも伝播すれば、組織の生産性が低下することにもなり得ます。

例えば、営業所に勤務するAさん・Bさん・Cさんの3名は共に営業スタッフでした。Aさんがゴーレム効果に陥り成績が振るわなくなったので、所長はBさんやCさんにも同じように低い期待をしました。「どうせ君たちもできないんだろう」と。するとBさんもCさんもゴーレム効果に陥り、目標の受注額が未達成となってしまい、組織の生産性が低下することになりました。このようにゴーレム効果が他の社員にも伝播すれば、組織の生産性が低下することになりかねないのです。

自分がゴーレム効果に陥らないための対策

ゴーレム効果は、自身のスキルアップを阻害したり、組織の生産性を低下させたりと、様々な悪影響があります。自分がゴーレム効果に陥らないための対策を解説します。

自己分析する

ゴーレム効果に陥らないようにするため、自分の現状を知ること、つまり自己分析することが重要です。自分が何に強み・弱みを持っているのか?特に、自分の強みを知ることは重要で、強みをもって、成果を上げるにはどうしたら良いか考え抜くことで、こうすれば成果を上げられるというプロセスが分かるようになります。そして現実の職務の中でそのプロセスを実行していけば、成果を上げられることに気付けます。

相手が何を言おうとも、プロセスを実行すれば成果を上げられることを知っているのですから、ゴーレム効果に陥ることなく仕事を進めることができるでしょう。

小さな成功体験を積み上げる

自分は成果を上げられないということで自己肯定感を持たないでいると、ゴーレム効果に陥りやすくなります。代わりに小さな成功体験を積み上げることで、「自分にもできるかもしれない」「やればできる」という自己肯定感を持てるようになります。小さな成功体験が自信に繋がるため、相手のネガティブな反応を恐れることなく仕事をしていけるようになるのです。

課題のハードルを下げる

ゴーレム効果に陥りそうな人は、ちょっとした課題さえも重く受け止めがちです。また成果を出せないのではないかと悩みます。しかし、思い切って課題のハードルを下げることで、課題を解決できるようになります。小さな成功体験と近いですが、優しい課題を解決する経験を積むことで、徐々に課題のハードルを上げていくのです。そうすれば自信がついてくるので、成果を出していけるようになります。

ストレス解消を実践する

ストレス解消に励むことも、ゴーレム効果に陥らないための対策として必要です。くよくよしたり悩んでいたりすると、成果を出せない自分がもどかしく、ゴーレム効果に陥りやすくなります。人間は誰しもストレスを感じますから、ストレス解消を実践し自分を肯定的に受け止めていきたいところです。

相手がゴーレム効果に陥らないための対策

今度は相手がゴーレム効果に陥らないための対策を解説します。

相手の自己肯定感を高める

相手が仕事で成果を出せずに悩んでいる時、追い打ちをかけるように「悩んでいる暇があったら早くやれ」「失敗したくらいで悩んでどうする」等と言っては逆効果。相手の自己肯定感を高めるために、相手の強みを指摘しつつ、業務遂行のために協力的な姿勢を見せます。そうすれば、相手は自分の強みを活かして仕事を完遂できることに気付けるので、自己肯定感を高められるようになります。次は成果を出そうと思うようになります。

課題の難易度を徐々に上げる

相手の実力に見合わない課題をこなせなかったからと言って、非難する必要はありません。避難すればゴーレム効果に陥りやすくなります。課題の難易度をワンランク下げて様子を見て、課題の難易度を徐々に上げるようにするのです。そうすればワンランク下がった課題を解決していくことで成果達成を体験でき、その土台の元に次なる課題に挑戦できるのです。

叱る時は性格に触れず行動を指摘する

ゴーレム効果に陥りやすくなるのを防ぐからと言って、叱らないことが常に適切ではありません。ただ、叱る時は相手の性格に触れず行動を指摘します。「君がおとなしいから商談をまとめられなかったんだろ!」と、おとなしい性格を指摘されると、相手はおとなしい性格を何とか直さなくてはならないと考えます。しかし、成人した人が今さら性格を変えられる訳もありません。相手の悩みをいたずらに増やす結果になります。

叱っている指導者が原因で悩みが増えればゴーレム効果に陥りやすくなります。叱る時は、行動に触れて叱ります。例えば、「商談では、タイミングよく顧客の質問に回答するべきだったんじゃない?」と指導すれば、相手はタイミングよく質問するという行動変容をすべきことに気付きます。行動変容することで成果を上げられることに気付いた相手は、ポジティブに仕事にあたっていけるでしょう。

まとめ

管理職や教師等、指導者から期待を持たれないことによって、期待通りに低い成果を出してしまう心理的現象、ゴーレム効果。ゴーレム効果は組織の生産性が低下したり、社員の自己肯定感を下げたりすることに繋がるので、ゴーレム効果に陥らないよう努める必要があります。自分、もしくは相手がゴーレム効果に陥らないための対策も用意していますので、参考にして下さい。

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