コンセプチュアルスキルとは、多くの知識や情報を整理・分析して、総合的な判断を行い、物事の本質を見極める能力のことをいいます。コンセプチュアルスキルは、経営層だけでなく、現場のリーダー職においても活用できます。この記事では、コンセプチュアルスキルの意味や定義、活用方法、導入例をご紹介します。
コンセプチュアル・スキルとは?
「コンセプチュアルスキル(conceptual skill)」とは
物事の本質を的確に捉えることにより、個人や組織の持つ可能性を最大限にまで高めることができる能力です。
米国の経営学者でハーバード大学教授のロバート・L・カッツ(Robert L. Katz)氏が管理職に必要なビジネススキルとして提唱しました。
コンセプチュアル・スキルの意味
「コンセプチュアルスキル」は日本語では「概念化能力」と訳され、「物事の本質を見抜く能力」のことをいいます。
コンセプチュアルスキルが高い人材はひとつの経験からも多くのことを学ぶことができます。
物事の仕組みに対して強い関心を持っており、合理的に業務を遂行し、効率的に働くのが特徴です。
ロバート・カッツ氏は、会社経営に必要な能力をビジネススキルとし、大きく3つに分類する「カッツモデル」を提唱しました。
「テクニカルスキル」業務遂行能力に関する
「ヒューマンスキル」対人関係の処理能力に関する
「コンセプチュアルスキル」概念化能力に関する
コンセプチュアルスキルは、経営者や人事部など多くの経営に携わる人材が身に付けるべきマネジメントスキルの一つです。
コンセプチュアル・スキルが重要な理由
コンセプチュアルスキルは、組織上部のマネジメント層に求められる能力ですから、将来性が期待されます。
人事担当者は従業員のコンセプチュアルスキルを把握して、組織上部のマネジメントに活用することが大切です。
人事担当者が従業員のスキル・特性を把握しておくことは、長期的視点から見る人材の育成や人事戦略に役立ちます。
人材教育施策として、リーダーや課長職を対象とした研修、職級にあった研修を定期的に行う企業も増えています。
コンセプチュアル・スキルを高めるメリット
従業員がコンセプチュアル・スキルを高めるメリットは、あらゆる業務に好影響を与えます。
問題解決力が高くなり、現場のトラブル解消や課題達成に大きく役立ちます。
相手の深層心理を正しく理解できるようになり、職場の人間関係にも良い刺激を与えます。
知識や経験を活用しながら、先入観にとらわれない自由な発想を行うため、イノベーションを生みだし、生産性向上に繋がります。
コンセプチュアルスキルは、テクニカルスキル、ヒューマンスキルの3つの相乗効果により、全ての業務に対して良い影響を及ぼすのです。
コンセプチュアル・スキルだけではなく行動力も大事
コンセプチュアルスキルは、個人的資質や潜在能力
といった先天的要素に影響されるため、スキル向上は容易ではありません。
ただし、時間をかけて行動し、物事の本質を見極められるようになれば、優先順位を設定し、効果的な戦略を打ち出すことができます。
コンセプチュアルスキル / ヒューマンスキル / テクニカルスキル の違い
ロバート・カッツ氏は、論文「スキル・アプローチによる優秀な管理者への道(Skills of an Effective Administrator)」の中で、マネージャー層(管理者)に必要な3つの能力について提唱しています。
コンセプチュアルスキルは、組織が成長を続けるために必要なスキルです。
ヒューマンスキル(対人関係能力)は、良好な人間関係を保ち、目標達成に向けた円滑なコミュニケーションを可能にするスキルのこと。
テクニカルスキル(業務遂行能力)は、商品知識、製造技術、加工技術、高度な専門知識など、職務や業務を正しく遂行するために必要な能力です。
コンセプチュアル・スキルの種類一覧
コンセプチュアル・スキルは、以下の6つにさらに細分化できます。
ロジカルシンキング
ロジカルシンキング(Logical thinking)は、目の前の物事を理論的に整理したり、解決までのプロセスを筋道立てて組み上げることができる能力です。
ラテラルシンキング
ラテラルシンキング(Lateral thinking)は、細かなルールや固定概念にとらわれず、自由な発想で斬新なアイデアを生み出すことができる能力のことです。
クリティカルシンキング
クリティカルシンキング(Critical thinking)は、組織内に潜んでいるマイナス要素の存在に早く気付き、複数の改善策の中から、最もリスクの少ない最適解を選別できる能力です。
応用力
応用力は、知識や経験を活用して、新たな課題に対応することができる能力のこと。
過去に解決した課題を活かして共通点を見極め、素早く対応できます。
戦略立案力
戦略立案力(Visioning)は、中長期戦略を組み立てる際に、リスクを最小限に抑え、早期段階から高い精度の結果や事象を予測することができる能力です。
コンセプチュアル・スキルを向上させる方法
強い組織を作り上げるためにコンセプチュアルスキルの向上を意識して、差別化を図りましょう。
業務をどんどんまかせて自分で考える環境にする
業務を任せて自分で考える環境を作り、困難課題を様々な視点から観察すると、組織側が正確に把握することができます。
理論的思考、直感力、柔軟性の高い思考回路を構築できるように心掛けましょう。
評価項目のひとつに盛り込む
能力を高く評価する人事評価制度を組織内に導入し
評価項目のひとつに盛り込みます。
従業員は、目標や目的が明確であるほど努力を積み重ねていくため、先天的要素を持っている人材を見つけやすくなります。
トレーニングや研修に参加する
経営幹部や管理職、現場職員など立場や役割によって異なる階層別研修を実施することで、効率的なスキル育成に繋がります。
コンセプチュアル・スキルのトレーニングや研修
ここからは、コンセプチュアル・スキルのトレーニングや研修の導入事例を見ていきましょう。
株式会社プロジェクトマネジメントオフィス
株式会社プロジェクトマネジメントオフィスの講座では、「コンセプチュアルスキル基本」と「コンセプチュアル思考」、コンセプチュアルスキルの応用までを一貫して学びます。
第1日目の思考編は、本質を把握し、全体像を描きながら創造的、生産的な問題解決や意思決定をする思考を身に着けます。
第2日目の行動編は、本質から考え具体的な行動に落とし込んで体験する内容です。
株式会社ラーニングエージェンシー
株式会社ラーニングエージェンシーの研修では、コンセプチュアルスキルの定義から向上方法、物事の本質を見定めて、仕事を進めるポイントとノウハウを学びます。
物事の本質を捉える思考法を身につけて、1つの出来事から多くを捉えられるようになります。
NTTラーニングシステム株式会社
NTTラーニングシステムズは、人材育成・組織開発分野における集合型研修、通信教育、eラーニング、企業の人材育成の運用基盤を支える教育関連システムを提供しています。
まとめ
先天的要素として捉えられるコンセプチュアルスキルはスキル向上は容易ではありません。
長期的に研修を取り入れることで、ライバル企業と差をつけ、生産性向上に繋がるでしょう。