役職定年ってどんな制度?メリット・デメリットや導入企業の実例を紹介

制度

役職定年とは、一定の年齢になることで専門的な職業役職から外れることを指します。

一般的に「定年」とは、決まった年齢まで会社に勤めることを指しますが、役職定年にはどんな意味合いがあるのでしょう。

今回は役職定年の詳しい解説や導入している企業、メリット・デメリットについて紹介します。

役職定年(役定)とは?

役職定年(役定)とは?

役職定年制とは、部長や課長といった役職についている社員に設けられる人事制度のことです。

設定された年齢に達すると役職を外れることになるもので、基本的にはある年齢以上の人が管理職でいることがなくなります。当然行う業務内容も異なり、給与にも変化が発生します。

ジョブくん
「役職」に設けられた定年制度ということですね。

役職定年後のキャリアプランは、それまでの経験を活かした専門性の高い業務を行うか、単に平社員の立場へとして業務を行うかのいずれかです。

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役職定年の年齢は?

役職定年を何歳にするのかは、企業によって違います。おおむね50代の後半に設定されており、60歳定年制の会社では、その少し前の55歳から57歳くらいになっています。

役職定年の年齢が50代後半となったのには定年の引き上げが挙げられます。

1986年に60歳の定年が努力目標となった結果、国がそれまで負担していた社会保障費を企業が負担するようになりました。

その結果企業が負担する人件費は膨大になり、しかも定年を60歳よりも前とすれば法律違反となってしまったのです。

この膨大な人件費の対策として役職定年が用いられるようになったのです。

役職定年後の給料は?

2018年に明治安田生活福祉研究所が明らかにした調査によると、役職定年経験者に対し、役職定年後の年収を尋ねたところ、9割以上で年収が減少したことが明らかになっています。

年収水準は、役職定年前の「50~75%」が32.6%と最も多く、4割近い38.9%が「50%未満」と回答しており、「変わらない」(5.9%)と「年収増」(1.0%)の合計は1割もありませんでした。

ジョブくん
一般的には「役職から外れると給与は下がる可能性が高い」と覚えておきましょう。

役職定年の退職金は?

給料が減ってしまうという役職定年ですが、退職金も同様に減ってしまうのでしょうか。結論から述べると、退職金が減ってしまうということはありません。

役職定年となりやすい50代後半ごろには、すでに退職金の金額が決定しているケースが多いためです。

また役職定年は単に役職に対する定年制度なので、会社に在籍してさえいれば退職金に変動を与えるケースはほとんどありません。

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役職定年は廃止されないのか

上記のような特徴から、有識者からたびたび問題を指摘されるのが役職定年です。

しかし、現状として廃止されるような気配はありません。

人件費の抑制や社員の使い捨てとも思える制度ですが、役職の有無や意思決定はあくまでも企業側が行うことであり、なかなか制度改正にまで至っていないのが現状です。

ジョブくん
同じ会社で長くキャリアを積みたい人は、役職定年の有無についてあらかじめ確認しておくと良いでしょう。

役職定年(役定)の導入企業の割合と導入事例

役職定年(役定)の導入企業の割合と導入事例

役職定年制度を導入している企業はどれくらいあるのでしょうか?

導入企業の紹介と導入事例をご紹介します。

役職定年の導入企業の割合

HR総研が2018年に行ったアンケートによると、「役職定年を導入しているか?」という質問に対して、

  • 「導入している」(31%)
  • 「制度ではないが慣行としてある」(13%)
  • 「導入していない」(56%)

という回答結果となりました。

企業がメーカー、非メーカーであるかによって大きく結果が異なり、メーカー(45%)、非メーカー(65%)と20ポイントも開きがありました。

NTTの事例

IT業界は他業界と比較して役職定年の導入率が高く、公表はしていないものの、NTTも導入していることがわかっています。

2013年に定年を65歳とする「65歳定年制」を導入しており、一見希望者は長く働けるように思えます。しかし実は生涯賃金は変わらず、若手社員の昇給カーブが緩やかになって全値のバランスをとっているのです。

富士通の事例

富士通には55歳から57歳の間に管理職を外れる役職離任制度と呼ばれるものがあります。

名前は異なりますが、内容は役職定年と同様の意味を持っています。

給料は管理職としての格付けに応じて、離任前の100%、85%、55~85%のどれかになる。実際には25%ダウンの75%になる人がほとんどだそうです。

役職離任した55歳以上の元管理職のSEは増え続けており、2020年には300人を超えることがわかっています。

しかし、このような状況に対して富士通は全く対策を行っていないわけではありません。その対策として幹部社員向けの手厚いキャリア支援を行っています。

早い時期から中高齢期のキャリアを考えていく場を設け、社内に限らず社外においても活躍する機会を求めるような考えを持つよう注力しています。

トヨタの事例

トヨタは2016年に人事制度を見直し、工場で働く従業員は定年退職後も65歳まで現役時代と変わらない待遇を与えることを決定しています。

そのため、工場においては役職定年は存在せず65歳まで給料が減ることなく働くことが可能です。

当然人件費が増大しますが、業務内容をさらに改善し生産性を向上することで対応可能であると予測しています。

役職定年のメリットは?

役職定年のメリットは?

次に役職定年のメリットをご紹介します。

組織の新陳代謝が生まれる

課長や部長などの役職ポストは数に限りがあります。

そのため役職定年制を活用すれば若手を積極的に登用することが可能となり、組織の新陳代謝につながるのです。

役職ポストに若手が就任することは、企業の経営を安定化するためにも非常に重要です。

優秀な人材ほど早く管理職に就くことが多いですが、そうすると、そのポストは長くその人が独占することになってしまいます。

たとえその人が優秀であっても、長く同じポストにいることで社会変化への対応が遅れる可能性が出てきます。

人件費の減少

昔と比較すると減少傾向にありますが、未だ多くの企業が給料は年功序列によって決定しています。

加えて役職に応じても賃金は高くなり、もし高年齢の社員ばかりが課長や部長といった役職に就いたままだと人件費が非常に高くなってしまうのです。

そのため、役職定年によって50代後半の社員を役職者から外すことは人件費の減少に繋がります。

役職定年制を導入すると、賃金のピークが、定年間近ではなくなり、多くの場合定年より少し前の50代なかばにピークが移動します。

これによって全体として人件費を減少させる効果があり、総額人件費管理の面から見て非常に大きなメリットです。

役職定年のデメリットは?

役職定年のデメリットは?

次に役職定年のデメリットをご紹介します。

役割変更後の意欲低下

役職定年の対象となる50代後半ともなれば、企業の経営に深く関わる重要な業務をいくつもこなすようになっていることが多いです。

また役職ともなれば周囲から尊敬されることも多く、役職に就いていることに誇りを持っている社員も多いことでしょう。

そのため、役職定年によって平社員と戻ってしまうとやりがいやプライドを失ったと感じ、意欲が低下してしまうことが多く起こるのです。

役職定年を導入する際にはこの意欲低下をどのようにして防ぐかが重要です。

指揮系統が混乱する

長きにわたりその役職で活躍した社員がいた場合、急に役職者がいなくなったことによって、チームの動きに支障をきたす場合があります。

また後任となる役職者があまり良くない人だった場合、全体のモチベーションが低下したり、役職者のプレッシャーが大きくなるといった問題があります。

役職定年制度を正しく理解しよう

役職定年のまとめ

今回は役職定年に関するさまざまな情報を紹介しました。

日本企業の半数近くが導入している役職定年ですが、導入に際してはメリットやデメリット両方の側面があるのも事実。自分の組織にとって本当に必要であるかは、十分に検討する必要があるでしょう。