内部監査とは?目的・流れ・外部監査との違い・対象範囲・課題を解説

内部監査の記事

内部監査とは組織内の人間が行う監査のことです。内部監査によって企業の不正の発見・問題解決・リスク防止に繋げることができます。企業は内部監査を行い、ステークホルダーの信頼を獲得する必要があります。この記事では、内部監査とは何か・目的・流れ・外部監査との違い・課題などについて解説します。

目次

内部監査とは?

内部監査とは、組織内の人間が行う監査のこと。内部監査は、内部監査部門のように独立した部門が担当します。

内部監査では企業の不正防止やガバナンスの強化を目指して業務・会計の監査を行うことになります。なお、2006年の会社法改正により、大企業においては内部監査の設置が義務化されています。

内部監査の目的

内部監査を行う目的は企業の問題・不正の発見と解決、そしてリスク防止です。例えば企業内で不正が起こるとメディアに大きく報道され、株主や消費者、取引先といったステークホルダーからの信頼を失ってしまい、業績を悪化することになるでしょう。

内部監査部門のような他部署から独立した社内組織が内部監査を行うことで、早期に問題・不正を発見し、解決策を講じていくことが必要になるのです。また、リスクを洗い出しておき、リスク防止策を予め講じることも内部監査の目的の1つです。

外部監査、監査役監査との違い

内部監査は組織内の人間が行う監査のことでした。一方、外部監査とは組織外の第三者が行う監査で、公認会計士のような専門家が企業の財務状態に関する報告書をチェックし妥当性を担保します。外部監査を行うことで、株主や取引先などは企業の財務状態に信頼性を持つことができるでしょう。

監査役監査は、監査役が取締役の職務執行をチェックする監査のこと。取締役が不正をしていないか、計算関係書類が正しく処理されているかといったことを監査するのが監査役監査の役割です。監査役は社内の人間ですが、「取締役の職務執行」に限定して監査する点が内部監査と違う点です。

内部監査の流れ

内部監査はどのような手順で行われていくのでしょうか。内部監査の流れを項目ごとに見ていきましょう。

監査計画の策定

内部監査は行き当たりばったりで行うことはありません。会社の規程に沿って監査計画を策定していきます。監査対象となる対象や内部監査の目標・方針、内部監査スケジュールの作成、内部監査のマニュアル作成・修正などを行います。

監査計画の策定では、監査員の選定も行います。監査対象となる部署に対して影響力を行使できる人材は、監査員に選ぶべきではないでしょう。監査対象の部署から監査員に対して「手心を加える」よう依頼したり、依頼に応じたりするリスクを防ぐことがねらいです。

予備調査

監査の前に予備調査を行います。予備調査は内部監査の1~2か月前くらいに行われます。抜き打ちで調査するのではなく、対象となる部署に対して事前に通知し書類やデータの準備を依頼します。

予備調査では、対象部署の責任者が出て打ち合わせを行います。事前に書類やデータを元に、内部監査ではどんなことを監査するのか情報共有します。なお、不正が疑われる場合には抜き打ちで予備調査を行うことがあります。

監査の実施

監査計画と予備調査が終わり、時期が来たら監査を実施します。内部監査の実施では、対象部署が準備した書類やデータを元に、マニュアル通りに監査を行います。対象部署によって監査内容は異なります。

例えば経理部門への内部監査であれば、経理処理が正しく行われているかを確認します。営業部門であれば、交通費の精算や契約書などを確認します。 仮に内部監査によって不正や問題が発覚したときは、対象部署の責任者と共に問題解決を考えていきます。

監査報告

監査後には経営層や対象部署に対して監査報告を行います。具体的には監査内容を元に評価を行い、監査報告書にまとめて監査報告を行うのです。

改善の提案

内部監査、監査報告を経て改善すべき点が見つかった場合、対象部署には具体的に改善の提案を行います。改善点は何か、どのように改善すべきかといった点について改善目標を明かしながら改善を提案します。

内部監査の対象範囲について

内部監査において内部監査部門が有効性を評価すべき対象範囲は「ガバナンスプロセス」「リスクマネジメント」「コントロール」の3つ。それぞれの内容を確認します。

ガバナンスプロセス

内部監査においてはガバナンスプロセスの有効性を評価します。ガバナンスプロセスは、企業が経営目標を達成するための一連の流れのことです。内部監査においては、組織の課題の把握・共有、アカウンタビリティの確立、倫理観と価値観の高揚などの観点から、ガバナンスプロセスの改善に向けた評価を行います。

リスクマネジメント

内部監査においてはリスクマネジメントの有効性を評価します。内部監査部門は各部門の組織目標、達成状況を把握します。その上で、組織目標の達成を阻むリスクを洗い出し、リスクに応じた解決策を提言していくのです。

コントロール

内部監査においてはコントロールの有効性を評価します。コントロールとは、経営者が組織目標の達成状況を評価する基準を設定し、実際に達成状況を確認することです。コントロール内容が妥当なのか、有効なのかについて内部監査部門は評価し、妥当なコントロール手段になるように改善策を提言するのです。

内部監査の課題

企業のIT化の推進、新型コロナウイルス感染拡大などにより、内部監査が抱える課題が変わってきました。内部監査の最近の課題について解説します。

人手不足による課題

企業全体でIT化が推進される中、内部監査部門の対応にも変化が求められています。稟議や仕事の決裁フローが電子化され、RPAやAIを導入する企業も増えてきています。IT化に伴う内部監査の課題として、監査項目および監査手法の変化に対応することが挙げられます。

また、IT化が加速すると情報システム部門への内部監査の難易度が高くなります。そのため、情報システム部門を内部監査できる人材が不足することが課題となってくるのです。

情報システム部門に教えてもらいながら監査をするのでは内部監査になりません。しかも情報技術は日進月歩で発展していきますから、ITに関する知識、運用面への知見を有する人材を確保していくことが急務となっています。

新型コロナウイルス感染防止に伴う課題

コロナ禍においては、グローバル展開している大手企業は海外の事業所に出張することが難しくなります。内部監査においても現地を訪問せずに、監査していく仕組みと手段が必要になってきます

国内の内部監査であれば、新型コロナウイルスの感染者が落ち着いた段階で現地訪問することもできるでしょう。しかし日本の感染者が落ち着いても海外の感染者数が減少しないこともあり、リモート監査の必要性は高まります。

どのようにリモートで監査を行い、評価を下していくのか、コロナ前では当たり前のようにできたことがコロナ禍では困難になっているのです。

IPOに関する課題

IPO(株式公開)を目指す非上場企業にとって、内部監査は必須事項の一つ。

大手企業のように内部監査部門が存在しない場合、IPOのために内部監査をどうしたら良いかが分からないことが課題となります。IPOの課題は継続的に解決すべき重要課題ということができます。

まとめ

組織内の人間が他部署を監査する内部監査。内部監査を実施することで、企業の不正の発見・問題解決・リスク防止に繋げることができます。内部監査を実施すれば問題を早期に発見、解決することも可能です。

コロナ禍ではグローバル展開する企業の内部監査で海外事業所を訪問できないなど、課題も変化しています。外部環境の変化に柔軟に対応しつつ、内部監査を着実に実施する必要がありそうです。

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