企業は自社だけでは、利益をあげ成長していくことはできません。他の企業やユーザーの存在があって初めて売上が生まれ、利益になるのです。特に他の企業との関わりの中では時には話し合いを行い大きな決断を下すこともあるでしょう。今回は、この話し合いつまりネゴシエーションに関してその意味から、ネゴシエーションをする際のポイント、ネゴシエーションに対する誤解などについて解説します。どの企業にも関係あるものなのでぜひ参考にしてみてください。
ネゴシエーションとは
今回のテーマでもある「ネゴシエーション(negotiation)」は、交渉や話し合いといった意味があります。
ビジネスにおけるネゴシエーションとは、例えば、企業同士がある目的を達成するために情報を出し合って、話し合いながらすり合わせを行っていくといった形になります。
ネゴシエーションの使い方・例文について
ネゴシエーションという言葉を聞いたことはあるけど、実際に使ったことはないという人も意外と多いのではないでしょうか。ネゴシエーションは以下の例文のような使い方をします。
「この取引だけど、先方とのネゴシエーションは進んでる?」
「こちらの案件ですが、本格的にスタートする前にもうしこし詳細をネゴシエーションしたいです」
このように、1文目は交渉という意味合いで、2文目は話し合いという意味合いで使用されることがわかるかと思います。
ネゴシエーションが重要な理由
企業間での契約や取引を進める上でネゴシエーションは欠かすことができません。では、なぜネゴシエーションが重要になるのでしょうか。
ネゴシエーションは交渉や話し合いといった意味を持ちますが、その交渉や話し合いは相手の意見にしっかりと耳を傾け、相手がもっとも望むことはなんなのかを判断し自分たちの望むこととの折り合いをうまくつけることを目的としています。
つまり、交渉や話し合いといってもどちらかが一方的に意見を押し付けて無理やり交渉を成立させるのではなく、両者が望む形を可能な限り叶えようとするのです。
自分たちの利益だけでなく、相手の利益のことまで考えるという姿勢は双方の関係を構築する上では非常に重要なものだと言えます。
逆にもし企業が自分たちの利益のみを優先して交渉を行うと、利害の衝突が生まれ交渉はうまくいかない可能性が高くなるでしょう。
このような点から、ネゴシエーションはビジネスにおいて重要だとされるのです。
ネゴシエーションに関する誤解
ネゴシエーションがどういったものか理解できたかと思います。しかし、ネゴシエーション=単なる交渉、話し合いなどと考えているようであれば、それは大きな誤解です。そこで続いては、ネゴシエーションに関して起こりがちな誤解について解説します。
ネゴシエーションは単なるテクニックではない
ネゴシエーションは、こちらの持っていきたい形に持って行ったり、自社の利益をアップさせたりするためのテクニックではありません。
先ほども紹介したように、あくまでも相手とこちらの両方が望む形を可能な限り取り入れてうまく交渉をまとめることを目的としているため、ネゴシエーションをすることで成果が得られるといった類のものではないのです。
ネゴシエーション=説得ではない
また、ネゴシエーションは相手を説得してこちらの望む結果を得ようとするものでもありません。基本的には相手との関係を維持したままで、双方にとってより良い合意を得ることを目指します。
そのため、ネゴシエーションが終わった段階で、どちらか一方が嫌な気持ちになっていたり、仲が悪くなっていたりするのはネゴシエーションとは言えません。説得ではなく、両者にとってのベストな形を目指していきましょう。
勝ち/負けで捉えてはいけない
ネゴシエーションの目的から考えると、ネゴシエーションの結果は勝ち負けで捉えてはいけないということが理解できるかと思います。
しかし、これを誤解してしまうといかに相手を窮地に追いやって勝利するか、どのように駆け引きして自分たちを有利な状況に持っていくか、といったことを考えてしまい、本来のネゴシエーションからはかけ離れたものとなってしまいます。
交渉力は特別なスキルではない
ネゴシエーションは特別なスキルを持っている人だけができるものではありません。基本的に相手との信頼関係を構築したうえで、相手の意見に耳を傾けながらこちらの意見とのすり合わせを行うものなのです。そのため、相手の言葉を素直に聞き入れ、相手のことを理解しようとすることが大切になります。これらのことは何も特別なものではなく、普段の人間付き合いの中から行うものだと考えるとネゴシエーションが誰にでもできるものだと理解できるはずです。
ネゴシエーションで大切なこと
相手との関係を構築しながら行うことになるネゴシエーションですが、行う際に押さえておきたいポイントがいくつかあります。続いては、ネゴシエーションの際に大切になるポイントについて解説します。
事前準備をしっかり行う
やはり交渉ごとなので、事前準備は入念に行うことが大切です。現在の状況や相手の希望とこちらの希望の相違、どこまでなら妥協できるのか、こちらが行う提案に対して想定される返答にはどう行ったものがあるのか、それに対してどう対応するかなど考えることはたくさんあります。
また、なかにはそもそもネゴシエーションだけでは解決できそうにない問題を議論している可能性もあるので、本当にネゴシエーションをする必要があるのかといった点もチェックしておくといいでしょう。
さらに、ネゴシエーションが何回かにわたって行われる場合も、前回の内容を振り返っておくなどして万全の状態で臨むようにしましょう。
相手の話をしっかりと聞く
先ほどから何度も説明しているように、ネゴシエーションは勝ち負けではないため、相手を論破したり、言い負かせたりしてこちらの希望だけを通すことではありません。相手とこちら双方の希望が可能な限り反映させうまく交渉をまとめることを目的としているため、相手の意見に耳を傾けることは欠かせません。
相手とこちら相手の意見なくして、双方の納得いく形に決着させることはできないため、しっかりと相手の話を聞くことを意識してください。
質問で相手の話を引き出す
相手の考えを引き出すために、時には質問をすることもネゴシエーションでは重要です。こちらから投げかける質問によっては相手の本音を引き出すことができるかもしれませんし、思ってもいなかった新しい意見が出てくる可能性もあります。
また、質問であれば相手も答えやすいので、質問をきっかけに活発な意見交換が行われることもあるでしょう。
ネゴシエーション力を研修で高める
ネゴシエーションに関しては、様々な企業や大学によってネゴシエーション力を高める研修が行われています。続いては、これらの研修について紹介します。
インソースの交渉力の研修
インソースの研修では、交渉を「お互いの利得の総和を最大にする」として捉え、様々な交渉方法を学びます。相手からの信頼を得るにはどうすればいいのか、事前準備の重要性、落とし所をどこに設定するか、などまさにネゴシエーションの場で必要となるスキルやノウハウを学んでいきます。
JPSの交渉力研修
JPSの交渉力研修では、新人から経営陣まで幅広い年齢層、職種を対象に、交渉について学ぶことができるプログラムが組まれています。
プログラムは1日かけて行う形になっており、ビジネスゲームの実践やその振り返りを通して、交渉に関する基礎知識やどう行った技術が必要なのかを学んでいきます。また、コミュニケーション講座や交渉戦略講座など実戦の場で役立つ知識を得ることも可能です。
産業能率大学が提供する研修
産業能率大学の研修では、両者が得をするようなWIN-WIN型の交渉術を学びます。WIN-WINを目指す交渉においては自分の意見の論理性ももちろん大切ですが、相手の話を聞き、相手の気持ちを考えることも大切です。
この研修では、論理と心理という2つの側面から交渉術へとアプローチしていくため、自分たちと相手の双方が納得して満足できるような交渉術を身につけることが期待できます。
ネゴシエーションにまつわる本
最後にネゴし絵ションに関する本を5冊紹介します。これからネゴシエーションを学ぼうとしている人はぜひ参考にしてみてください。
プロフェッショナル・ネゴシエーターの頭の中
この本では、多数の実績を持つM&Aアドバイザーが交渉術に関するノウハウを紹介しています。中でも交渉術を「信頼ベースの交渉術」「満足する交渉術」「ワンランク上の心理交渉術」「相手には知られたくない価格交渉術」「売り手の交渉術」「買い手の交渉術」「仲介者の交渉術」という7つの技術によって説明している点が特徴です。
相手と自分の双方が満足するような結果を目指した交渉を行う際に役立つ本です。
おとしどころの見つけ方 世界一やさしい交渉学入門
こちらの本は、その名の通り交渉の初心者向けの入門書としておすすめです。さえない会社員と宇宙人という変わった組み合わせの2人による物語を通して交渉術を学んでいくため読みやく、理解しやすくなっています。
体温の伝わる交渉~702社のコスト削減を実現したプロの作法 (Nanaブックス)
この本は、商品の購入から企業の買収まであらゆる場面での交渉を想定して書かれています。本ではまず交渉の基本的な考えを学ぶほか、実際の交渉フローやケーススタディなども掲載されているので、基本から応用、実践まで一通りの交渉術を把握することができます。また、やってはいけないNG行動についても解説されているなど交渉術のバイブルと言える本です。
ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)
こちらの本は初版の発売から35年以上が経過しているロングセラーの一冊です。ハーバード大学の交渉学研究所という研究所のスタッフによって書かれた本で、交渉において相手が強い時、相手がこちらの話に乗ってこない時、相手が汚い方法を使ってきた時、などでも対応できる交渉術を紹介しています。シンプルな内容なので、交渉術やネゴシエーションを学び始めたばかりの若手ビジネスパーソンにオススメです。
本当に賢い人の 丸くおさめる交渉術
この本では交渉ごとのプロとも言える弁護士が1万件以上の交渉から学んだ丸くおさめるための交渉術を解説しています。
本の内容は交渉が上手くいかない理由について解説しているほか、交渉におけるポイント、落とし所の見つけ方、相手も自分も得をする交渉の仕方などについて解説しています。さらに、価格交渉や納期交渉、トラブル対応などあらゆる場面における交渉の実践例も紹介しているなど実践的な一冊となっています。
まとめ
今回は、ネゴシエーションに関してその概要からなぜビジネスにおいて重要なのか、ネゴシエーションを行う際のポイントなどについて解説してきました。何度も触れているように、ネゴシエーションは勝ち負けを競うものでもなければ、自分たちの利益だけのために行うものでもありません。双方にとってのベストな結果へと導くために行うものです。そのため、相手の意見に耳を傾け、相手のことを理解しようとする姿勢を持つことを忘れないでください。