ハッカソンとは?
ハッカソンの意味・語源、ハッカソンが生まれた経緯や目的について解説します。
ハッカソンの意味、語源
ハッカソンとはITビジネスに携わるエンジニア、デザイナー、プランナー、マーケター等が集まってチームを作り、一定期間のうちに共同開発を行うイベントのことです。ハッカソンでは、限られた期間の中でアプリケーションやシステムを開発し、スキルやアイディアを競います。
ハッカソンは、高いIT技術を駆使するハックとマラソンを掛け合わせた造語です。
ハッカソンが生まれた経緯
ハッカソンは2000年前後に米国のIT企業を中心に行われ始めました。日本でハッカソンが生まれたのは2010年頃と遅かったのですが、2011年の東日本大震災の復興支援を契機にハッカソンが盛り上がった経緯があります。
東日本大震災の復興支援としてのハッカソンにはHack for Japanがあります。Hack for Japan のイベントは2011年3月19日から3日間にわたって行われ、Googleや日本マイクロソフト等の外資系企業やリクルートが参加しました。IT企業を中心に始まった日本のハッカソンは、現在では自治体や教育機関でも開催されています。
ハッカソンの構成要素
ハッカソンはどのような要素で成り立っているのでしょうか?ハッカソンは以下の3つの要素で成り立っているといわれます。
2.時間制限
3.成果
すなわち、ハッカソンは、制限時間がある中で参加者がチームを組んで成果を競い合うことが構成要素のポイントとなっています。
ハッカソンの目的とは?
ハッカソンの目的は次の3つに分けられます。
2.社内外の交流を広めるため
3.開発者の能力開発のため
ITビジネスに携わるエンジニア、デザイナー等の開発者は、自社の新規事業に繋げることを目的に、ハッカソンに参加します。ハッカソンで生まれたアイディアを元に新しい事業やイノベーションに繋がることがあるからです。
次に、社内外の交流を広めるためという目的ですが、ハッカソンには様々な会社から多様な人材が集まります。職種もバラバラです。社内外の多様な人材と触れ合うことで、ITビジネスに携わる人たちの中で人間関係が深まり、自社のチームワーク向上や新しいコミュニティの創造にも繋がります。
最後に開発者の能力開発という目的ですが、ハッカソンでは限られた時間でシステムなりアプリケーションなりを開発し、成果をあげなくてはなりません。ハッカソンに参加することで、開発者の能力を高めたいという意図が働きます。
ハッカソンとアイディアソンの違い
ハッカソンと似た概念にアイディアソンがあります。両者の違いは何でしょうか?
ハッカソンの構成要素は同じ
ハッカソンとアイディアソンの構成要素はほぼ同じです。チーム・制限時間・成果といった構成要素はアイディアソンにもあります。
アイディアを生み出すことがアイディアソンの目的
ハッカソンとアイディアソンには違いもあります。ハッカソンがアプリケーションやシステムの構築という成果物で競うのに対し、アイディアソンで競うのはアイディア。元々、アイディアソンはハッカソンの事前準備としてのポジションだったので、違いが生じている訳ですね。ただし、現在ではアイディアソン単体のイベントが開催されることもあります。
国内のハッカソンイベント
2010年頃から始まったとされる日本のハッカソン。どのようなイベントが開催されているのか、主な国内のハッカソンイベントを紹介したいと思います。
Hack Day/Hack U
Yahoo!Japanが主催する Hack Day は、24時間という短い期間でIT開発者の自由な発想を競い合うハッカソンイベントです。元々は社内イベントとして開催されたものですが、2013年よりオープンイベントとして開催。2018年までに6回にわたって開催され続けています。 Hack Uは学生向けのハッカソンイベントで、Yahoo!社員からアドバイスを受けながら成果物を出していくイベントとなります。
デバイスハッカソン
デバイスハッカソンはNTTドコモとNTTドコモベンチャーズが開催したハッカソンイベント。2014年のイベントではゼンリンデータコムや日経新聞等、13社からデバイスやAPIが提供されました。参加者はアイディアを募り、開発し、My Girl(表情に反応して音声を出せる)といったいくつかの試作品を仕上げました。
ソニー【GO FOR IT】
ソニーが主催した GO FOR ITは、院生や大学生向けのハッカソンイベントです。2015年・2017年・2018年の複数の年で開催されています。提供APIとしてはソニーのMESHやXperia Touchがありました。GO FOR ITの参加者数は15名以下の小規模イベントで、身近にあるデバイスや技術を使って成果を競うイベントとなっています。
ハッカソンに参加するメリット
ITビジネスに携わる開発者がハッカソンに参加するとどんなメリットがあるのでしょうか?3ポイントで解説します。
最新鋭の技術を体験できる
ハッカソンイベントに参加すると最新鋭の技術に触れることができます。IT企業が主催するハッカソンであれば主催企業の技術を体験できますし、開発者同士の交流を通じても最新鋭の技術に触れ合うことができるでしょう。しかも、他チームの成果物を見られるので、まだ市場に出ていないような新しい技術を体験することもできます。
IT技術者同士の交流ができる
ハッカソンでは様々な人が参加します。他企業でIT技術の研鑽を積んだ開発者・技術者同士で人間関係を築くことができます。イベントで見知らぬ人と人間関係を築くことには、心情的な交流を行うことに留まりません。新しく、有益な情報を得られるのもハッカソンの交流の魅力です。
1973年、スタンフォード大学のマーク・S・グラノヴェター教授は、「The strength of weak ties」という論文の中で弱い紐帯の強さという社会ネットワークの仮説を発表しました。これは、社会的繋がりが強い人よりも社会的繋がりが弱い人の方が自分に新しい情報や有益な情報を与えてくれるという仮説です。
ハッカソンに置き換えて考えてみましょう。社会的繋がりが強い職場の同僚が持っているIT技術については、よく把握していると思います。しかしハッカソンで出会う人が持つ技術や知識の中には自分が知らない情報もあります。従ってIT技術者同士が交流し合うハッカソンで人間関係を築くことで、自分にとって有益で新規の情報を獲得できる可能性があるのです。これが弱い紐帯の強さの効果ですね。
モチベーション向上に繋がる
ハッカソンに参加することで他社のエンジニアやデザイナーに出会えます。弱い紐帯の強さにより新しく有益な情報を提供するメンバーに会うことで、自分ももっと開発力を高めたいという動機づけになります。また、ハッカソンでの参加者の成果物を見ることでもモチベーション向上に繋がりますね。
ハッカソンの進め方例
ハッカソンは具体的にどのように進められているのか、確認していきましょう。
ハッカソンの企画を考える
ハッカソンを実施するにあたっては、どんなテーマで開催するのか企画を考えることが先決です。成果物を競い合うにしても、成果物をどのように活用するのかといった点についても事前に考えておく必要があります。企画を考えることでハッカソンに魅力を感じた開発者が集まってきます。企画するにあたっては、当日までのスケジュールも作成しておきます。
参加者のターゲットを絞る
企画を考えた後は参加者のターゲットを絞ります。IT技術に詳しい人だけを対象とするのか?あるいはITに詳しい人だけを対象とするのか?ターゲットを絞ることによって募集のやり方が変わってきます。
イベントスタッフの役割を決める
ハッカソンのイベントスタッフの役割を決めておきましょう。司会進行、コーディングを支援する担当者、事務職といった役割に誰をあてるのか、あるいは人材が不足していればどのように募集するのかといった点について洗い出し、当日に適切な人材を割り振れるように準備しておいて下さい。
イベント後のフォローアップを考えておく
ハッカソンのようなイベントでは「やりっぱなし」にならないような注意が必要です。イベント後のフォローアップを考えておくことが大切です。フォローアップというのは、SNSでアンケートを集計して結果を発表するようなことです。内省しないようなフォローアップでは次に活かせません。反省点は見直し、良い点は継続することで初めてハッカソンが成功したといえます。
まとめ
ハッカソンはハックとマラソンの造語という通り、制限時間内にチームが成果物を競い合うイベントです。クリエイティビティを発揮した成果物を見ることは楽しいものです。ハッカソンに参加することで、新たな知見を得たり人材交流ができたりします。国内のハッカソンイベントを検索して、イベントのターゲットに自分が合っていると思ったら参加を検討してみるのも良いでしょう。