社会人基礎力とは?意味・3つの能力と12の能力要素・社会人基礎力診断を紹介

社会人基礎力の記事
社会人基礎力は、経済産業省が提唱した概念です。学生から社会人に移行し、職業能力を高めて難しい課題に挑戦していくためには、社会人基礎力が必要です。しかし、終身雇用制度の維持の難しさや就職氷河期、非正規社員の増加により、社会人基礎力を身につけられないビジネスパーソンも出てきています。記事では社会人基礎力の意味、3つの能力と12の能力要素等、社会人基礎力の重要性を解説します。
目次

社会人基礎力とは?

社会人基礎力の意味や再定義について解説します。

経済産業省が提唱した概念

社会人基礎力とは経済産業省が2006年に提唱した概念です。経済産業省は、社会人基礎力を職場や地域社会で多様な人々と仕事をしていくために必要な基礎的な力であると定義しています。学生から社会人への移行を目指すために必要な能力です。

社会人基礎力とは、具体的に「前に踏み出す力」「考え抜く力」「チームで働く力」の3つに分けられます。3つの能力について、詳しくは後述します。

社会人基礎力の再定義

ロンドンビジネススクール教授のリンダ・グラットン氏は著書『ライフシフト』の中で人生100年時代を提唱しました。人生100年時代の中で、ビジネスパーソンは働き方をどう変えていくか問われる時代を迎えています。日本は、2018年の平均寿命は女性が87.32歳、男性が81.25歳と毎年延び続けているため、人生100年時代を現実のものとして受け止める必要があります。

そこで、2006年に定義された社会人基礎力についても再定義する必要が出てきました。2018年、経済産業省は人生100年時代における社会人基礎力を提唱したのです。

2006年の社会人基礎力は学生から社会人への移行について考えられていましたが、再定義された社会人基礎力は、これまで以上に長くなる個人の企業・組織・社会との関わりの中で、ライフステージの各段階で活躍し続けるために求められる力へと変化。幅広い年齢層の人々に対して社会人基礎力を求めるように変わったのです。

社会人基礎力グランプリ

社会人基礎力に該当するような能力は、日本においては学生から社会人へ移行する段階で自然と備わっている能力でした。しかし終身雇用制の維持の難しさや就職氷河期、あるいは非正規雇用の増加等により、社員研修に参加できていないビジネスパーソンが出てきました。

経済産業省は、社会人基礎力を高めようと社会人基礎力グランプリを開催し、企業や大学等で社会人基礎力を養う活動を行っています。

社会人基礎力が求められる背景とは?

なぜビジネスパーソンに社会人基礎力が求められるようになったのか、その背景について具体的に紹介したいと思います。

プロダクトライフサイクルの短期化

社会人基礎力が求められるようになった背景として、製品やサービスの寿命を表すプロダクトライフサイクルが短期化していることが挙げられます。グローバル化の中で企業は生き残りをかけて、消費者のニーズに合う製品を出し続け、あるいはニーズを掘り起こさなければなりません。

プロダクトライフサイクルの短期化に対応するためには、社会人基礎力がベースとなっている必要があります。企業は人材1人ひとりの社会人基礎力を把握し、社会人基礎力を高めていかなくてはなりません。

消費者の発信力の高まり

企業はマーケティング戦略の一環で消費者の発信力の高まりに対応する必要が生じてきました。SNSによって消費者は製品・サービスに対して意見を発信。その発信力が他の消費者にも強い影響力を持つようになっています。

企業は消費者の意見に対応するためのマーケティング、製品・サービスへのイノベーションに経営資源を投資していかなくてはなりません。そのためには、社会人基礎力が備わり、高い能力や成果を発揮できる人材が必要になるのです。

終身雇用制度の変化

終身雇用制度は定年まで労働者を雇用し続ける人事制度であり、正社員の雇用を守る労働基準法に則った人事制度といえます。しかしグローバル化やプロダクトライフサイクルの短期化等により企業は終身雇用制度を維持しにくくなっています。

終身雇用制度が維持しにくい中で、企業が残って欲しいのは優秀な人材です。社会人基礎力を持ち、自分の能力開発や課題解決力の向上に励む人材を求めているのです。

キャズムを乗り越えられない

市場に製品・サービスを普及させる時、初期市場とメイン市場の間に溝(キャズム)が生じます。メイン市場の方が普及率の割合が大きいのですが、キャズムを乗り越えられないと製品・サービスは撤退に追い込まれてしまいます。キャズムを乗り越えるには、社会人基礎力が保たれ、イノベーティブな発想力を持った人材が必要になります。

働く上での強いストレス

働く上で、人は強いストレスにさらされます。ビジネスパーソンには、ストレスやストレスの原因となる逆境・困難に立ち向かい、回復していく力(レジリエンス)が必要になります。レジリエンスはどんな人にも備わっている訳ではなく、鍛えていく必要があります。レジリエンスを鍛えるためには社会人基礎力が不可欠です。

労働者の教育環境の変化

終身雇用制の維持の難しさや就職氷河期によって、教育機会を得られないまま社会人として過ごしている人材がいます。教育機会を得られていなかった自社の人材に対して、社会人基礎力を企業が知ることで何を学習させるべきかがハッキリします。

前述のプロダクトライフサイクルの短期化・消費者の発信力の高まり・キャズム等に対応するため、企業は人材開発に早急に対応すべきといえます。自社の人材の社会人基礎力を高めるための学習環境を整えることが急務となっています。

社会人基礎力の3つの能力と12の能力要素

社会人基礎力は以下の3つの能力、そして12の能力要素で成り立っています。

1. 前に踏み出す力(アクション)
2.考え抜く力(シンキング)
3.チームで働く力(チームワーク)

前に踏み出す力(アクション)

前に踏み出す力(アクション)は「一歩前に踏み出し、失敗しても粘り強く取り組む力」をいいます。ビジネスにおいて失敗をしないことはありえません。失敗したからといって立ち止まるのではなく、成功を目指して取り組んでいける執念が求められているのです。能力要素は次の通りです。

・主体性:物事に進んで取り組む力
・働きかけ力:他人に働きかけ巻き込む力
・実行力:目的を設定し確実に行動する力

考え抜く力(シンキング)

考え抜く力(シンキング)は「疑問を持ち、自ら深く考える力」をいいます。目の前にある事象について、素直に受け取って良い場合と、「これって本当かな?」と疑問を持って考えなくてはならない場合があります。特に、新しい問題に直面した時は、考え抜く力が求められます。仕事や問題には正解はありませんから、自らの力や情報を収集することで仕事をこなし、問題を解決することが期待されます。能力要素は次の通りです。

・課題発見力:現状を分析し目的や課題を明らかにする力
・創造力:新しい価値を生み出す力
・計画力:問題の解決に向けたプロセスを明らかにし準備する力

チームで働く力(チームワーク)

チームで働く力(チームワーク)は「多様な人々とともに、目標に向けて協力する力」のことをいいます。1人で行う仕事はありません。必ず、誰かと共に仕事を行います。あるいは、プロジェクトを組んで仕事を行う時に、見知らぬ他部署の人材と協働することもあるでしょう。多様な人材に対して違和感を持つことなく、協力して仕事にあたることが大切です。能力要素は次の通りです。

・発信力:自分の意見をわかりやすく伝える力
・傾聴力:相手の意見を丁寧に聴く力
・柔軟性:意見の違いや立場の違いを理解する力
・情況把握力:自分と周囲の人々や物事との関係性を理解する力
・規律性:社会のルールや人との約束を守る力
・ストレスコントロール力:ストレスの発生源に対応する力

人生100年時代の社会人基礎力

人生100年時代の社会人基礎力は2018年に再定義された社会人基礎力でした。再定義されたことにより、次の3つの視点が追加となっています。

・学び「何を学ぶか」
・組合せ「どのように学ぶか」
・目的「どう活躍するか」

社会人基礎力診断の紹介

社会人基礎力の定義、構成する能力や能力要素については分かりました。一方で、なかなか自社の社会人基礎力がどの程度あるかを調べるのは難しいところです。そこで、どのくらい社会人基礎力を有しているかを診断できるサービスがありますので、2つ紹介します。

脳内カレッジ

脳内カレッジはアンケート形式で社会人基礎力を診断できるツールです。5分程度で回答できる簡易なツールとなっています。

社会人基礎力診断(日経HR)

日経HRが運営する社会人基礎力診断は大学生向けの社会人基礎力診断ツールです。大学1・2年次向け、大学3・4年次向けに分かれています。

まとめ

社会人基礎力は社会人になって求められる基礎的な能力です。仕事をうまく進めるために、自ら行動し、考え抜いて、チームで仕事をしていかなくてはならないのです。そのために、企業は社会人基礎力を把握し、人材の社会人基礎力を高める必要があります。プロダクトライフサイクルの短期化や消費者の発信力の高まりに対応するため、人材の能力開発のベースとして社会人基礎力は注目を集めています。

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