多くの企業は、生産性に大きく影響する「コンピテンシー」を導入しています。
人材開発・評価制度・採用面接に役立つ「コンピテンシー」はどんな活用例があるでしょうか。
今回は、「コンピテンシー」の意味、企業の導入例をご紹介していきます。
コンピテンシーとは?
コンピテンシーとは、好業績・成果につながる行動特性のことをいいます。
特定の業務において、優れた業績や成果を出している人は、何か理由があると考えられます。
その理由に当たるのがコンピテンシー(行動特性)です。
コンピテンシーは大きく分けると「能力」と「行動」に分けられます。
多くの日本企業は「能力」のみを捉えており、行動特性は見落とされる傾向にあるのが特徴です。
特に、人事評価における評価基準は、表面化した成果だけを評価する項目が数多くみられます。
しかし、その背後にある行動特性を評価基準に活かすことで、社内全体の業績や成果を高めることができると考えられています。
コンピテンシーに基づく評価基準は、成果や能力だけではなく、その背景にある行動特性あるいは思考特性も評価することができます。
コンピテンシーの意味や例文
コンピテンシーはどのような場面で使われるのか見ていきましょう。
採用制度にコンピテンシー採用を取り入れて、候補者の潜在能力を引き出しましょう
人事課は他の社員とは異なる特性を備えているコンピテンシーをどう活かすことができるか
商談前に必ずプレゼンを行うコンピテンシーが成果に繋がった
コンピテンシーが企業全体の業績や成果にも直結することもある
そもそも行動特性とは何か
「行動特性」とは、優れた成績・成果を生み出す人が行っている特徴的な行動パターンのことです。
仕事ができる社員とできない社員の差には何がその差を決定するのでしょうか。
成果を挙げる人材に共通している思考、行動パターンは、行動特性またはコンピテンシーと呼ばれています。
行動特性が分かれば、採用の際に優秀な人材を見抜いたり、人事評価の場面で活用することが可能です。
コンピテンシーの種類や例
コンピテンシーには、達成重視の姿勢、他への影響力、洞察力、戦略企画力、柔軟性など様々な種類の能力があります。
1. 思考系能力
リーダーシップ力は、論理的思考力、本質把握力、創造思考力、感性・感受能力など、複数の思考系能力と捉えることができます。
戦略企画力、責任感、チームワーク力なども同様に
リーダーシップ力に求められます。
2. 心理系能力
米国ハーバード大学の心理学者である教授「人の能力を知能テストや適性テストで測定するのは難しい」と指摘しています。
コンピテンシーの可能性を示したことで、社会の関心を集めるようになりました。
3. 対人系能力
コンピテンシーは、伝達・説明力、論理的思考力など、対人理解力を重要視します。
実際に、多くの企業の人事担当者は、中途採用の際に対人理解力、協調性・柔軟性を重視しています。
対人理解力が備わった人材は、協調性・柔軟性、伝達・説明力があり、仕事を迅速に理解し、成果を出すことができます。
コンピテンシーモデルとは
コンピテンシーモデルとは、業種・職種に合わせて具体的なモデルを設定することです。
高評価につながる行動をモデル化することで、従業員は会社が求める姿勢・行動を理解しやすくなります。
人事担当者は、従業員一人ひとりの姿勢・行動を調査して、適材適所な人材活用に役立ちます。
コンピテンシーディクショナリーとは
コンピテンシーディクショナリーとは、ライル・M. スペンサーと シグネ・M. スペンサー(スペンサー&スペンサー)が開発したものです。
職種別に好業績を上げている人にインタビューをして、必要なコンピテンシーを列挙しています。
コンピテンシーモデルの活用例
コンピテンシーは、人事マネジメント、人材育成、採用など様々な場面で活用できます。
企業での活用事例としては、人事評価や採用など、評価制度に取り入れる事例が多くみられます。
コンピテンシー面接での事例は、ハイパフォーマーの行動様式が備わっているか5段階程度で評価します。
一般的な面接よりも、面接官の印象や主観が入らないため、客観的で明確な評価基準となります。
コンピテンシーを利用した人事評価では、コンピテンシー面接と同様に、客観的な評価診断ができるのがメリット。
コンピテンシーモデルの作り方
実際に、コンピテンシーモデルを作るプロセスについて見ていきましょう。
1. 導入する目的などを明確にする
どのような人物を目標とするのか明確化にします。
業績が非常に良い、効率的に業務をこなす、ミスが少ないなど、業種や職種により、様々な目標を設定します。
コンピテンシーモデルの設定は、業種や職種に合わせて構築していく必要があります。
2. 目的を達成するために必要な要素を洗い出す
会社として、目指したい目標を達成できる行動特性を把握するために、必要な要素を洗い出す作業をします。
ハイパフォーマーと面談してヒアリングしたり、複数のハイパフォーマーを中心としたチームを作ると効果的です。
3. 目的と必要な要素をすりあわせ、レベルを設定する
コンピテンシーモデルが完成したら、それぞれレベルを設定して、従業員に周知、共有します。
社員の行動規範として落とし込み、従業員が取るべき行動の指針となります。
作成する際の注意点
コンピテンシーモデルの作成は、行動そのものではなく、状況や思考回路も合わせて参考にすることが大切です。
コンピテンシー評価とは
コンピテンシー評価とは、目標とした行動が取れたか、行動するために必要な取り組みをしたのか、評価を行うことです。
コンピテンシー評価を行うメリット・デメリット
コンピテンシー評価を採用すると、効率的な人材育成が可能となるのが最大のメリットです。
何を努力すればプラスの評価になるか明確になるため、社員のモチベーションも高まり、能力開発や業績向上も期待できます。
コンピテンシー評価のデメリットとしては、評価基準を確立するには時間と手間がかかることです。
好業績を持つ従業員の行動を分析して、評価モデルの設定するまで、導入には時間がかかります。
コンピテンシー評価を運用しながら、成果が上がるように調整も必要です。
コンピテンシー評価シートの作成方法
コンピテンシーを有効に運用するために、自社独自の「コンピテンシー評価シート」が必要です。
評価項目は、役職や等級、資格ごとに具体的な行動内容を示し、評価方法は「3段階」程度にします。
従業員が行動をイメージしやすいように業務内容や業務は具体的に示すことが大切です。
状況や市場に変化があれば、事例は随時変更しましょう。
まとめ
コンピテンシーを有効に活用するには、目指すべき目標「コンピテンシーモデル」の設定は必須です。
コンピテンシーモデルは、定番のテンプレートがあるわけではなく、自社でオリジナル制作する必要があります。
ハイパフォーマンスの考え方は、業種や職種によって異なり、求められる成果も変わるからです。
まずは、自分たちの組織におけるコンピテンシーを明確にして、評価をすることが大切です。