アベノミクスをわかりやすく解説!三本の矢・アベノミクスの成果・課題について紹介

アベノミクスの記事
2012年より始まった第二次安倍政権は、アベノミクスという経済政策を展開し景気回復に一定の成果を挙げました。アベノミクスが掲げる経済政策は三本の矢と言い、日本経済の持続的な成長を目指すものです。成果を挙げた一方、アベノミクスには課題もあります。アベノミクスってよく聞くけれどどういう経済政策なのかが今一つ分からない。そして成果や課題とは?アベノミクスを分かりやすく解説していきます。
目次

アベノミクスとは

アベノミクスとは
アベノミクスとは2012年末に始まった安倍政権による経済政策の名称です。アベノミクスが掲げる経済政策には「三本の矢」が知られています。アベノミクスは「どれだけ働いても暮らし向きが良くならない・富が増えない」という日本経済の課題を克服するための経済政策です。アベノミクスは富の拡大とデフレからの脱却を目指しています。

名称の由来

アベノミクスという名前は1980年代の米レーガン大統領の経済政策レーガノミクスにちなんで付けられています。ちなみにレーガノミクスは減税・通貨供給量の抑制の経済政策だったのに対し、アベノミクスは日銀の大胆な金融緩和に象徴されるような経済政策であるという大きな違いがあります。

三本の矢

アベノミクスの経済政策を代表する政策が三本の矢というもの。三本の矢とは以下の政策を言います。

  • 第1の矢:大胆な金融政策
  • 第2の矢:機動的な財政政策
  • 第3の矢:民間投資を喚起する成長戦略

具体的に説明します。

金融政策

アベノミクスを象徴する金融政策は第1の矢「大胆な金融政策」です。大胆な金融政策とは日本銀行による量的緩和策を意味し、日銀が国債を購入することで市場に通過を供給して「インフレ期待」を起こさせる政策を言います。

インフレ期待が起こるとなぜ良いのでしょうか?それは、実質金利が下がるからですね。実質金利は名目金利(普段私たちが銀行などで目にしている金利のこと)から物価上昇率を差し引いた金利を言います。実質金利が下がれば、企業は金融機関からお金を借りやすくなりますから、インフレ期待が起これば景気が良くなるというメカニズムなのです。

財政政策

アベノミクスの財政政策とは10兆円規模の経済対策予算による政府主導の需要創出を意味します。アベノミクスでは、第1の矢・金融政策で脱デフレを目指して景気を回復させ、第2の矢・財政政策により景気を維持するという関係性があります。

成長戦略

アベノミクスの第3の矢は成長戦略です。成長戦略こそ日本経済を成長させる原動力となるものです。成長戦略は時間の経過によって変遷します。例えば、2013年の成長戦略は「日本再興戦略」というもの。更に2014年の成長戦略は農業のような既得権益の高い分野の規制緩和に踏み込む内容。その他、主なものを以下の通りにまとめてみました。

  • TPP
  • 働き方改革
  • 地方創生
  • 社会保障改革
  • 国家戦略特区

アベノミクスの大きな柱は金融政策

アベノミクスは三本の矢に基づく経済政策ですが、大きな柱は金融政策と言えます。日銀による大胆な金融政策によって、脱デフレを目指したことで内外の人々がインフレ期待を起こしました。それにより10,000程度で低迷していた日経平均株価が上がり現在は20,000円台で推移しました。また、インフレ率が上がることで失業率も低下傾向にあります。

アベノミクスの成果について

アベノミクスの成果について
次にアベノミクスの成果について解説します。

経済成長率の向上

アベノミクスにより実質経済成長率は上昇し、2012年度の0.8%から翌年の2013年度は2.6%増と変化しました。アベノミクスが始まったのが2012年度ですから、アベノミクスは1年で経済成長率の成果を挙げたことになります。

景気の拡大

アベノミクスにより景気は拡大を続けています。政府により、2012年12月を起点とした好景気は何年も続き、2017年9月時点で高度経済成長期のいざなぎ景気を超えたと発表されました。

完全失業率の低下

アベノミクスによって完全失業率が低下しました。2012年度は4.3%と高かった失業率が翌年は4%、さらに翌年も低下し2018年には完全失業率2.4%と雇用状況が改善されています。リーマンショック後の2009年の完全失業率5.1%と比べると失業率は半分に下がっています。

脱デフレへの期待

アベノミクスの柱は日銀を通じた金融政策です。量的緩和政策によってインフレ期待が高まり通貨も供給されることによって、デフレ脱却への期待が高まりました。また、日銀総裁に黒田東彦氏が就き、副総裁には岩田規久男氏等リフレ派と呼ばれる学者が就いたことでも脱デフレへの期待が高まっています。

アベノミクスの金融政策の成果と課題

アベノミクスの金融政策の成果と課題
アベノミクスの柱である金融政策の成果と課題について解説します。

インフレターゲット

アベノミクスは日銀を通じて物価上昇率を2%に上昇させるインフレターゲットを掲げて、政策に取り組んできました。それにより市場は、日本経済は成長重視の経済に変化するだろうと期待しました。反応が早かったのが株価。アベノミクス以前の日経平均株価は10,000円程度でしたが、2019年現在は20,000円台で落ち着いています。また、円安にもなったので輸出企業の収益改善に繋がりました。

フィリップス曲線

物価上昇と完全失業率とのトレードオフの関係を示したのがフィリップス曲線というグラフです。縦軸に物価上昇率を示し、横軸に完全失業率を示したグラフで、物価が上がれば失業率が下がる関係を表します。確かに、アベノミクスの金融政策のお陰でゆるやかながら物価が上昇し、完全失業率が2009年の5.1%から2018年の2.4%にまで大きく下がったのでフィリップス曲線の通りに成果が現れていると言えるでしょう。

脱デフレーションは道半ば

アベノミクスの成果の見出しのところで「脱デフレへの期待」を紹介しましたが、日本経済は脱デフレには至っていません。脱デフレは道半ばと言えます。

確かにアベノミクスが始まる前後では、マイナスだった物価上昇率が上昇に転じています。2013年に0.4%、翌年は2.7%(消費増税効果による一時的なもの)、そして2015年は0.8%とプラスに転じているのです。しかし、日銀の黒田総裁が目指したのは2%の物価上昇率の達成です。ところが消費増税した2014年以外で2%に達したことはないので、脱デフレへの期待はあるものの、依然として日本経済のデフレは解消されていないのが現状です。

アベノミクスの財政政策への課題

アベノミクスの財政政策への課題
最後に、アベノミクスの財政政策への課題について解説します。

財政再建の先送り

毎年、日本は財政赤字を抱えており累積した長期債務残高(借金)は1,000兆円にのぼっています。この金額は大き過ぎてイメージがつきませんが、GDPの2倍と考えると分かりやすいと思います。日本は財政再建をしなければならないのですが、財政赤字は増える一方で、アベノミクスは財政再建について有効な手立てを打てていません。

消費増税分が社会保障費に振り分けられる

消費増税をすることで、増税分を財政再建のために使うことができます。しかしアベノミクスでは消費増税10%を2度も延期し、2019年になってようやく実施しました。しかもその消費増税分は財政再建ではなく子育て等の社会保障費に多くを振り分けることになりました。

これでは財政再建への道筋は遠いと言わざるを得ません。少子高齢化が続く日本において財政再建への着手はまったなしの状態なのですが、アベノミクスは財政再建には多くの課題を残しています。

まとめ

アベノミクスのまとめ
2012年末頃から始まった第二次安倍政権による経済政策アベノミクス。株価上昇や完全失業率の低下等に一定の成果が見られますが、脱デフレに至るにはまだ遠いですし、財政再建に至っては多くの課題を残したままです。歴代最長の長期政権となった安倍政権ですが、経済政策がこのままで良いのか、ビジネスパーソンとして注目し続けていきたいところです。

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