会社で部下を持っている人の中には、自分の仕事の一部を部下に任せて成長を促したい、と考える人もいるのではないでしょうか。そのような場合に用いられるのが「権限委譲」です。この記事では、権限移譲の概要からメリット、さらには実際に行う際の注意点などについて解説しています。部下を持つ人はぜひ参考にしてみてください。
権限委譲とは?
まずは、権限以上がどのようなものなのか、その概要について解説します。
メンバーに仕事を任せて育成すること
権限委譲とは、上司が持っている仕事の権限を部下に与えて、部下本人の裁量で仕事を行うことです。
仕事の権限を与える上司は、部下が仕事を行う際に目標は明確に示しますが、具体的な仕事の進め方などは部下に任されているのが特徴です。
仕事を与え自分で取り組ませることで部下の自立性を養い、育成するという意味合いがあります。権限委譲により社員が成長すれば、企業全体の成長にも繋がることが期待されます。
仕事の任せ方について
権限委譲は、「ただ単に部下に仕事を任せればいい」というものではありません。
権限移譲をする意味を理解しない状態で行ってしまうと、かえって部下の成長を阻んでしまったり、仕事の生産性が低下してしまったりする恐れがあります。
権限委譲によって成果を出すためには、権限移譲をなぜ行うのか理解すること、そして周囲のサポートが欠かせません。
権限委譲のメリットとは?
ここからは、権限移譲を行うメリットについて解説します。
どのような特徴があるのか理解しておきましょう。
仕事内容が整理される
権限委譲をする場合、仕事を与える側の人間はどのような仕事を与えるのかをじっくりと考えなければいけません。
難しすぎず、易しすぎないちょうどいい難易度の仕事を与えることが部下の成長に繋がるため、仕事選びは特に重要な要素です。
そのため、仕事を与える前には、その時点で所有している仕事を全て整理することになります。
メンバーの能力が高まる
権限委譲によって与える仕事は、その社員がそれまで取り組んでいた仕事よりも一段階上の仕事となるため、これまでにない経験を積むことができます。
仕事をする際にはうまくいかない部分が出てくるかもしれませんが、試行錯誤してそれらを解決していくことで社員のスキルアップが期待できるでしょう。
また、これまでとは違う仕事を任されることで、社員のモチベーションアップにも繋がるため、それも成長の後押しをしてくれるはずです。
自分の裁量で仕事を進めることになるため、判断能力や責任感も強くなると考えられます。
現場の意思決定が速くなり組織力が高まる
権限委譲によって自分の裁量で仕事ができるようになれば、上司の判断を仰ぐ必要がないため、仕事に関わる意思決定のスピードが短くなると予想されます。
仕事のスピードが上がれば生産性が向上し結果的に組織力も高まるはずです。
管理者(自分)がマネジメントに専念できる
権限委譲は、仕事を任せる側の上司にとってもメリットがあります。
部下に仕事を任せることで、上司の仕事の抱えるタスクが減るため、上司がマネジメントや戦略立案などに注力することができるのです。
権限委譲を実践する時の3つの注意点
権限委譲には様々なメリットがありますが、行う際にはいくつかの点に注意が必要です。
続いては権限委譲実践時の注意点について解説します。
メンバーを信頼すること
権限委譲を行う際の絶対的な条件といっても過言ではないのが、メンバーを信頼することです。
例えば、部下が上司のことを信頼していないと、与えられた仕事を成長のチャンスだとは捉えず「仕事を押し付けられた」と感じるかもしれません。
また、上司が部下を信頼していないと「あいつはミスをするかもしれない。ミスしたら結局こっちにしわ寄せがくる」となり、ワンランク上の仕事を任せる勇気を持つことができません。
このように、権限委譲はお互いがお互いのことを信頼し合うことが前提で成り立ちます。
目的を共有すること
権限委譲を行う際には、上司と部下の間でなぜ権限委譲を行うのか、その目的を共有するようにしましょう。
目的の共有ができていないと、部下はなぜ仕事を任されたのかがわからないため、仕事に取り組みにくくなってしまうかもしれません。
適度な頻度でコミュニケーションを取る
部下と上司の間で適度にコミュニケーションを取ることも必要です。
仕事の裁量を部下に与えるとはいっても、上司が全く関与しない状態だと仕事の進捗状態が把握できないため、締め切り直前になっても仕事が終わっていない、といった事態に陥りかねません。
また、部下から仕事に関する相談を受けることもあるでしょう。そのため、適度にコミュニケーションを取ることが重要となります。
権限委譲のやり方
ここからは、権限委譲の具体的なやり方について解説します。
仕事を整理する
まずは、仕事を与える側の上司が自身の仕事を整理するところから始めます。
権限委譲を行う時点でどのような仕事を抱えているのか、どのような仕事なら部下に与えることができるか、仕事を整理しながら考えます。
また、これまでに部下がどのような仕事を経験していて、何ができて何ができないのか、といった点についても把握しておくと仕事の整理もしやすくなるでしょう。
目的を明確にした上でメンバーに仕事を任せる
仕事の整理が済み、どの仕事を部下に任せるのかが決まったら実際に権限を委譲します。
このとき、先述の通り権限委譲を行う目的をはっきりとさせ、部下に共有するようにしてください。
権限委譲実践時の阻害要因を克服する
権限委譲には、目に見えない阻害要因がいくつか存在するため、それらを克服することも非常に重要なポイントです。阻害要因としてあげられるものには以下のようなものがあります。
- 過度に効率を重視する
- 仕事への思い入れの強さ
- 部下のスキルを過小評価する
部下は、これまで自分が経験してきた仕事よりも、レベルの高い仕事を任されることになるため、必ずしもスムーズに仕事がこなせるわけではありません。
それにも関わらず上司が効率やスピードを求めてしまうと、部下は仕事がやりにくくなってしまいます。また、部下に与えた仕事に上司が強い思い入れがある状態は部下にとっては望ましくありません。
権限委譲の失敗例
うまくいけば社員の成長が期待できる権限委譲ですが、時には失敗してしまうこともあります。ここでは、失敗例を紹介します。
メンバーの力量を確かめずに難度の高い仕事を任せる
権限委譲において重要なポイントの1つが部下にとって適切難易度の仕事を与えることです。
部下にとっては難しい、でも頑張れば達成できるくらいのレベルだと、成長を後押ししてくれるでしょう。
一方で難しすぎる仕事を与えてしまうと、全く対応できず部下の自信を失わせることになってしまいます。
権限委譲のタイミングがバラバラ
権限委譲を行う場合、タイミングにも注意を払う必要があります。
例えば、同期入社の社員がいる場合、一方の社員ともう一方の社員で権限委譲のタイミングがバラバラだと、タイミングが遅い方の社員は「自分よりもアイツの方が評価されている」と感じやる気を失ってしまうかもしれません。
面倒な仕事をメンバーに押し付ける
形の上では権限委譲として、実は面倒な仕事を押し付けているだけのケースも中にはあります。
面倒な仕事でも部下は経験することで成長しないわけではありませんが、部下も「あ、これは面倒な仕事を押し付けているだけだな」と意外とわかるので、信頼を失ってしまう可能性は大いにあります。
まとめ
今回は、権限委譲の概要からメリットや具体的な行う方、失敗例などについて解説しました。
権限委譲は社員が成長する大きな機会となりますが、目的が共有されていなかったり、仕事の難易度があっていなかったりすると、思ったような成果を得ることはできません。
ただ仕事を任せるだけのものではないので、権限委譲を行う場合は、目的をしっかりと理解したうえで実施するようにしましょう。