契約社員、アルバイト、パート・・・正社員以外でも私たちの社会には様々な働き方が存在します。これらは総じて「非正規雇用」と呼ばれています。
誰しもが耳にした言葉ではあると思いますが、その定義とは何なのでしょうか?
また正規雇用との違いはどのようなものがあるのでしょうか。
今回の記事ではその定義や割合の推移、問題点などを解説します。
非正規雇用とは
非正規雇用とは各企業や事務所との契約によって決められた期間や時間に従った雇用形態です。
主にパートタイマーやアルバイト、契約社員、派遣社員などの種類があります。
自分の都合に合わせて働くことができる雇用形態として主婦や学生に人気があります。
一方で、通勤時間や労働日程の融通以外の理由で非正規雇用として働いている場合は「不本意非正規」と呼ばれ、問題視されているのです。
正規雇用との違い
非正規雇用と正規雇用の最大の違いは「契約期間」です。
上述した通り、非正規雇用が各企業や事務所との契約によって定められた期間で働くのに対し、正規雇用は定めのない期間で働きます。
また非正規雇用がある程度限られた時間で働くのに対し、正規雇用がフルタイム勤務であるのも違いとしてあげられます。
加えて年収も大きく異なります。
国税庁が2017年に行った民間給与実態統計調査によると、正規雇用の平均年収が493万円だったのに対し、非正規雇用の平均年収は175万円でした。
非正規雇用という形態で働くメリット
非正規雇用という形態で働くメリットとしてあげられるのは「自分のペースに合わせて働ける」ということが挙げられます。
小さなお子さんを抱える母親や定年を迎えた方にとって、フルタイムで働くというのはなかなか難しいです。
そのような方にとって、シフトの融通がききやすい非正規雇用は非常に助かるものでしょう。
またあらかじめ期間が定められて勤務するため、採用されやすいというメリットもあります。
非正規雇用という形態で働くデメリット
非正規雇用という形態で働く最大のデメリットは「正規雇用と比較して年収が低い」ということです。
先述したように正規雇用と非正規雇用の平均年収は300万円ほど格差があります。
また安定して仕事を得ることができないといったことや、福利厚生が正規雇用にしか適用されない場合もあるなども非正規雇用の場合に抱えうるデメリットです。
非正規雇用の種類
それでは非正規雇用にはどのような種類があるのでしょうか?
下記にそれぞれの特徴を説明しながらご紹介します。
アルバイト
アルバイトとは主に高校生や大学生、フリーターといった若者で定められた時間で労働を行うものを指します。
アルバイトという言葉の由来はドイツ語で「仕事」を意味する名刺のArbeitだそうで、明治時代に学生の間で広まったことをきっかけに、この言葉が定着しました。
パートタイム労働者
パートタイム労働者は一般的に子どもが学校に行っている間だけ働くといった主婦の方を指します。
雇用形態はアルバイトと全く同様で、労働基準法の上ではどちらも区別なく扱われます。
そのため実はアルバイトとパートは慣習的に呼び方を変えているだけであり、明確な違いはありません。
派遣社員
派遣社員とは雇用契約を派遣先ではなく、人材派遣会社と結んで働く社員のことです。
よって、福利厚生や給与などは人材派遣会社によって定められます。
仕事の紹介時に、業務内容を詳しく知ることができ、これまでのキャリアを活かして働くことが可能です。
契約社員
派遣社員と混同されやすいのが契約社員です。
派遣社員が人材派遣会社と契約を結ぶ一方、契約社員は企業と期間の定めのある雇用契約を結んで働く社員のことを指します。
非正規雇用はシフトに柔軟な働き方が多いですが、契約社員の場合には正規雇用と同様に、フルシフトが求められる場合もあります。
嘱託社員
嘱託社員は一般的に定年後に再雇用となる社員のことを指します。
ここで一般的としてたのは法律上で明確な定義がなされていないためです。
再雇用の際に給与は労働時間、労働日数を改めて決定した上で働くのです。
定年後も自身のスキルを活かして働くことができ、高齢化社会である日本においては特に重要視されています。
非正規雇用の割合について
次に非正規雇用の割合についてご説明します。
正規雇用と大きな年収格差が発生してしまっている非正規雇用。
しかし柔軟な働き方が可能といったメリットもありますが、その割合はどのように推移しているのでしょうか。
非正規雇用の割合の推移
2017年に総務省が行なった労働力調査によれば、2017年の非正規雇用労働者の割合は約2036万人で、労働者全体の37.3%であることがわかっています。
これだけだとピンとこないかもしれませんが、2002年には29.4%であり、15年間で15ポイント以上も上昇しているのです。
非正規雇用者が増加している理由
このように非正規雇用が増加している理由の一つとして「人手不足」と「高齢化社会」が挙げられるでしょう。
近年日本では慢性的な人手不足が課題となっています。
そのため、定年後にも働ける嘱託社員としての雇用が年々増加しています。
よって非正規雇用労働者が増加していると考えられるのです。
非正規雇用の実態や問題点について
柔軟に働けるというメリットのある非正規雇用ですが、その実態はどのようなものなのでしょうか。
問題点も交えて以下に解説します。
正規雇用と非正規雇用の待遇格差
正規雇用と非正規雇用の待遇格差は非正規雇用労働者が増えるにつれて、深刻化しています。
先述した年収格差もそうですが、能力アップの機会が与えられないことや福利厚生が同一でないことなどもまた大きな待遇格差です。
非正規雇用として働く人がとるべき対応
非正規雇用として働く場合、まず重要なのは福利厚生や年収などの諸条件をしっかりと確認することでしょう。
様々な対策がなされていますが、依然として正規雇用労働者と非正規雇用労働者との待遇格差は是正されていません。
そのため、働き出して「こんなはずではなかった・・・」と感じてしまう恐れがあるのです。
もし諸条件を確認した上で自分が求める条件に見合わないなと感じた場合は、資格をとったり転職活動を行なったりして正規雇用として働くことを検討するのも一つの方法でしょう。
非正規雇用の5年ルールとは
2013年4月に施行された「改正労働契約法」によって、非正規雇用者が同一の企業で働き続け、契約期間が5年を超えると、次回の契約時に無期労働契約を企業に求められるようになりました。
これを「5年ルール」と呼び、待遇格差是正の一つの解決法になると期待されています。
無期転換とは?
無期転換とは有期労働契約が無期労働契約へと転換することを指します。
これによって「次の労働契約の更新の際に契約が終わってしまうかもしれない」といった不安をしなくても済むようになるのです。
上記の5年ルールによって注目され、法律施行から5年を迎えた2018年4月から対象者が現れ始めています。
無期雇用になるメリット
無期雇用による最も大きいメリットは雇用が安定することです。
これによって労働者は安心して業務に取り組むことが可能となります。
また無期雇用になった際に正規雇用労働者と同様の福利厚生を受けられるようになる場合も多く、待遇格差の是正につながるのです。
無期雇用になるデメリットは
無期雇用になるデメリットは仕事量が増える場合があるということです。
ただ雇用期間が変わるだけであり、業務内容は変わらないのですが、企業によってはより責任感のある業務を任せる場合もあるようです。
そのような場合は精神的に負担を抱えてしまう可能性があります。
まとめ
年々増加の一途を辿る非正規雇用。
今回はその実態やメリット・デメリット、昨今話題となった「5年ルール」などを解説しました。
もし非正規雇用として働くことをご検討の方はぜひご参考ください。