派遣法改正(2015年)による2018年問題とは?派遣社員や企業への影響は?

2015年発表時には多くのメディアに取り上げられ、話題となった派遣法改正。
しかし、実際にその内容を理解している方はそれほど多くはないのではないでしょうか?
そこで今回の記事では派遣法改正が実際にどのような内容であったかをご説明。
合わせて2018年問題や派遣社員や企業への影響に関してもご説明差し上げます。

目次

派遣法とは?


まず派遣法改正の説明の前に派遣法そのものについてご説明します。
派遣法は正式名称を「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の就業条件の整備等に関する法律」と呼びます。
派遣社員は正社員に比べると不安定な雇用状況であることが大半です。
そこで、派遣社員がこうした弱い立場につけ込まれるのを防ぎ、派遣社員の権利を守るために存在するするのが派遣法です。

法改正の内容

内定通知書とは
→派遣法改正の内容を具体的に紹介
また、無期雇用や特定派遣などのルールについても説明

派遣法改正はこれまで何度か改正が行われてきました。
今回主にご紹介する2015年の法改正の前には2012年に一度大きな法改正が行われています。
その際には正式名称は「労働者派遣事業の適正な運営の確保及び派遣労働者の保護等に関する法律」となりました。
「派遣労働者の保護等に関する法律」と明記されていることから、派遣労働者の権利を保護することに重きをおいていることがわかります。
その変更内容は主に以下です。

・派遣先企業の社員と待遇が均等になるよう配慮すること

派遣労働者の賃金を決定する際、派遣先企業で同種の仕事に従事する社員の水準や、派遣労働者の職務の内容、職務の成果、意欲、能力、経験などが配慮されるようになりました。また教育訓練や福利厚生についても均等待遇を図ることが求められています。

・30日以内の日雇い派遣の原則禁止

「派遣切り」が社会問題としてクローズアップされたときに、日雇い労働者の雇用の不安定さが問題視されたことを受けて、一部の例外を除いて日雇い派遣が原則禁止になりました。
ただし、31日以上であれば、働くことが可能です。また、60歳以上の人や学生、副業として日雇い労働に従事する人、主たる生計者でない人は、引き続き日雇い派遣で働くことができます。

・有期雇用から無期雇用へ転換する機会の提供

本人の希望に応じて、派遣会社は有期雇用の派遣労働者(雇用期間が1年以上)を期間の定めのない雇用へ転換する努力義務が課せられました。

以上が主な法改正の内容です。

派遣法の改正後に何が変わったか

→派遣法改正内容と施行後に変わったことを紹介

派遣法改正後に変わった最も大きなことの一つとして有期雇用から無期雇用へ転換する機会が増えたことが挙げられるでしょう。
それまで派遣という仕事はあらかじめ雇用期間が定められ、それが終了するとまた新たに仕事を探さなければならない非常に不安定な仕事として捉えられていました。
しかし、無期雇用への努力義務が課せられたことによって派遣社員も安定性を得られるようになったのです。
加えて、賃金や福利厚生なども正社員と同様の水準を受けられる機会が増えたため、そのような観点からも派遣社員がより働きやすくなったと言えるでしょう。

抵触とは?

抵触とは「派遣期間制限が切れること」を指し、その期間は3年と定められています。
また期限が切れた翌日のことを「抵触日」と呼びます。

抵触日を迎えると、派遣先企業は派遣社員を受け入れることができなくなり、派遣社員も同一の組織で働くことができなくなります。
そのためいつが抵触日であるかということは正しく認識しておく必要があります。
なぜ、派遣期間が3年であるかは2012年に法改正が行われた際に記された「派遣先企業の社員と待遇が均等になるよう配慮すること」という項目が関係しています。
「3年以上雇用を続けるのであれば、派遣社員ではなく正社員として雇用し機会をより均等化してほしい」という国の意図から期間を3年と設定しているのです。

2015年の派遣法改正とは?

インテグリティーにまつわる企業の取り組み
さて、それでは2015年の法改正に関してご説明します。
変更内容で特に重要なことをピックアップして解説します。

派遣可能制限の見直し

これまで、研究開発や通訳など定められた特定の業務に従事する「政令26業務(専門26業務)」には派遣期間制限がなく、一般的な人材派遣業務である「自由化業務」には原則1年、先ほどご説明した通り最長3年という制限が設けられていました。
法改正後は、業務による期間の区分はなくなり、すべての業務で次の2種類の制限が適用されます。

1.派遣先事業所単位の期間制限

派遣先の同一の事業所に対して適用されます。派遣労働者を受け入れられる期間は、原則3年が限度とされます。
これにより派遣先(就業先)は、 3年を超えて派遣労働者を受け入れる場合、過半数労働組合等への意見聴取手続きが必要です。

2.派遣労働者個人単位の期間制限

派遣労働者に対して適用されます。同一の派遣労働者を派遣先の事業所における同一の組織単位に対し派遣できる期間は、3年が限度です。
これにより派遣元(派遣会社)には、 同一の組織単位に継続して3年間派遣される見込みがある場合、派遣終了後の雇用を継続させるための措置を講じることが、義務付けられています(雇用安定措置の実施)。該当する派遣社員の方は、派遣元に相談をしてみましょう。

雇用安定措置が義務化

派遣社員の雇用の安定化のために、派遣会社は3年間派遣される見込みがあるスタッフに対して、派遣先企業への直接雇用の依頼や新たな派遣先の提供など、雇用安定措置を講じることが義務付けられました(1年以上3年未満の派遣労働者に対しては努力義務の範囲内です)。
派遣社員はこれまでよりも直接雇用のチャンスを広げることで収入・生活の安定をより得やすくなりました。

均衡待遇に関する措置の見直し

賃金や教育訓練制度、福利厚生などの待遇面において、派遣労働者と派遣先企業の正社員との間で不合理な待遇差が生じないよう、派遣会社は均等待遇を推進するべく配慮する義務が生じます。
もし正社員との間に合理的でない理由から労働条件の差が生じている場合、それを改善しなければなりません。

2018年問題とは?

退職金の相場について
派遣社員の業務がより安定するよう施行された2015年の派遣法改正。
その課題として生じた2018年問題とはどのような内容なのでしょうか?
2018年問題とは、2015年の労働者派遣法改正の影響により、多くの企業が2018年前後に雇用契約の見直しを迫られていることです。労働者派遣法で規定された期間制限3年と、労働契約法で規定された無期労働契約転換の時期が重なることにより生じています。

雇い止めが起こるのか?

最も問題視されていることは「雇い止めが起こるのか?」ということです。
雇い止めとは企業が派遣社員の契約を更新しないことです。
これは2015年の派遣法改正によって「有期契約で通算5年を超える労働者が、無期契約への変更を申し込んだ場合、原則、会社側は拒否することができない」とされているためです。
これによって5年以上勤続している派遣社員は全員正社員にしなければならないという誤解が生まれ、コスト面から企業が「法改正が適用される前に派遣社員の契約更新をやめてしまおう」と雇い止めが起こることが可能性として示唆されているのです。
しかし、雇い止めは以下の要件を満たす必要があります。
1.過去に反復更新された有期契約で、その雇い止めが無期契約の解雇と社会通念上同視できると認められるもの

2.労働者において、有期契約の契約期間の満了時にその有期契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの

これによって企業の一方的な理由によって雇い止めが大量に起こるという心配はなさそうです。

派遣法改正によって特定派遣はどうなるの?

特定派遣とは常用型派遣をのみを行うものです。
社員として派遣元に雇用され、別の仕事場に派遣される形です。
一般的にイメージされる登録型派遣よりも、福利厚生などの面から安定性が高胃ことで知られていました。
しかし、2015年の法改正によって特定派遣と一般派遣の区分はなくなりました。
これによって影響を受けるのは一般派遣の認可が取れていない企業です。
当然、労働者派遣事業を続行することができなくなってしまい、派遣企業の淘汰が進む可能性が示唆されています。

企業側の対策と事例

企業側の対策と事例

→企業側の対策や助成金、事例などの紹介

2015年の法改正によって、企業は派遣社員への対応を大きく変更することを義務付けられました。
そこでどのような対応を行っているのか事例をご紹介します。

派遣元が派遣社員を無期雇用とする

2015年の法改正によって2018年以降は派遣社員を無期雇用とする努力義務必要が生じました。
2018年の法改正実施の直前になって混乱しないように、派遣元が派遣社員を無期雇用とする対策が行われています。

助成金制度の利用

2015年の法改正によって派遣元は派遣社員を無期雇用する際にキャリアアップ助成金を得ることが可能となりました。
ただし、助成金を受ける際には以下のような要件が必要となりますのでご確認ください。

1.有期雇用→正規雇用※:1人あたり57万円(72万円)※派遣スタッフ継続だと助成金対象外
2.無期雇用→正規雇用 :1人あたり28.5万円(36万円)
3.有期雇用→無期雇用 :1人あたり28.5万円(36万円)

1.2が活用できるのは、有期(無期)派遣スタッフを派遣元の内勤正社員等に転換するケースになります。派遣スタッフを正規雇用(正社員)と有期雇用と区分している派遣会社も多いと思いますが、正規雇用転換は「転換後に派遣スタッフである場合は対象外」なので注意が必要です。
一方、無期雇用への転換は「派遣スタッフのままでもOK」です。ただし、抵触日前に転換することが必要です。

直接雇用で対策

無期雇用と同様に、あらかじめ正社員へと直接雇用することによって対策を講じている企業もあります。
上記の通り、企業の一方的な理由によって雇い止めを行うことはできないため、この流れは今後ますますまして行くことでしょう。

事例

2015年10月に一般社団法人日本人材派遣協会は、改正派遣法に基づく派遣元企業のキャリアアップ支援の対応例をまとめた資料として『派遣労働におけるキャリアアップ支援事例集 (平成27年度厚生労働省委託事業)』を発表しています。
その中の事例の一つとして「ホームページの活用」が挙げられます。
法改正によって、雇用するにあたっては派遣先・派遣元・派遣社員にその改正内容が周知されていなければなりません。
これまでと同様の雇用形態では法律違反となる可能性があるためです。
しかし、毎回実習の場を設けていては教育コストがかかってしまいます。
そこでホームページを活用することが重要となります。
ホームページでeラーニングなどによって法改正の内容を理解してもらうことが可能となるのです。

まとめ

派遣法改正のまとめ

派遣社員および、派遣先や派遣元にとって重要な2018年問題。
その変更点をしっかりと理解しておかなければ派遣業を続けることができなくなる恐れがあります。
今回の記事がその一助となれば幸いです。

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