度々ニュースでは、大企業の過重労働による過労死が取り上げられています。
過重労働による労働者、うつ病や精神障害など様々な健康被害に繋がる重要な問題です。
政府では様々な対策を掲げていますが、企業側にも意識改革や労働者の健康管理が求められています。
今回は、過重労働の原因や対策法について見ていきましょう。
過重労働とは?
過重労働とは、労使間で定めた時間外労働の範囲を大幅に超えている過酷な状態のことを言います。
どこまでが「過重」「過労」と言えるのかは一概には図ることができません。
一般的には、月100時間あるいは2~6カ月で月80時間を超えた場合は、過重労働とみなされるケースが多いです。
過重労働の意味や目安のライン
過重労働の意味は、法的には明確に定めらていませんが、一般的には長時間労働により、労働者に身体的、精神的に過度な負荷を負わせる労働のことをいいます。
認定基準の一つの目安ラインは、1カ月当たりおよそ80時間を超える時間外労働があった場合です。
そして、脳・心臓疾患の発症前1カ月間に約100時間を超える時間外労働があった場合は、業務と発症の関連性が強いとされています。
認定基準では、1カ月に80時間、100時間以上の時間外労働は「過労死ライン」に当たります。
過重労働と36協定
労働者に法定労働時間を超える残業をさせる場合には、 「36(サブロク)協定 」と呼ばれる労使協定の締結が必要です。
使用者と労働者の過半数で組織する労働組合との間で労使協定「36(サブロク)協定」を締結すると、法定労働時間を超える労働が可能になります。
通常の労働時間制においては、36協定の締結のみで法定時間外労働をさせることができます。
過重労働によって体を壊してしまった人の例
近年は、過重労働、長時間労働により体調を崩す従業員が増えており社会問題となっています。
最悪の場合は、過労死に繋がってしまう事例も出ていますので企業側としても意識革命が必要です。
システムエンジニアの事例
システムエンジニアのプロジェクトリーダーとして勤務する男性(38歳 )は長時間労働により、うつ病にかかり、自殺未遂に至った事例です。
真面目で責任感が強く、仕事ができて上司からの評価が高い上に同僚や部下からも人望が厚い性格。
完璧主義で責任感が強い人が上の立場になると、一人で仕事を抱え込んでしまう傾向があります。
上司への相談をせずに、全て自分で解決しようと必死になっていると、次第に意欲・集中力の低下、将来に対する悲観的な考え、虚無感、食欲低下、体重減少などの症状が起こるように…。
周りに迷惑をかけているという罪業感から自殺企図に至ってしまいました。
このケースの原因は、周囲が気が付かなかったこと、周りに相談できる環境ではなかったことが考えられます。
建設会社員の事例
建設会社の設計士として働く男性(31歳)は過重な業務と長時間労働が重なり、メンタルヘルス不調になったケースです。
まじめで責任感が強く黙々と仕事をこなしていましたが、月100時間前後の残業が続き、現場に泊まり込みや出張も増えて業務量が過大に…。
夜は眠れず朝早く目が覚めて、判断力が落ち、メンタルヘルス不調を引き起こしてしまいました。
このケースも周囲に相談できる上司がいなかった、複雑な現場の労働環境に原因があったと考えられます。
看護師の事例
看護師の女性(30代)は即日入院が非常に多い多忙な病院での業務によって、うつ病となった事例です。
医療チームの一員として医師、他の看護師にも気を遣うあまり、激しい不安・焦燥感を示すようになりうつ病から自殺を考えてしまうように…。
このケースは、職場上司や医師、同僚などの周知徹底、早期発見する必要性があります。
過重労働が発生する要因
経済産業省の「働き方改革に関する企業の実態調査」によれば、過重労働が発生する原因は何点か明らかになっています。
マネージャーが業務量などを把握していない
管理職(マネージャー)が部下の業務量を把握していない場合、過重労働が発生するリスクが高まります。
上司が残業をすることを前提の仕事の指示したり、サービス残業をさせる場合は、マネジメント能力などに問題があると言えます。
そもそもの目標が無理
営業職の場合、ノルマや目標設定を達成することは
業務の性質上当然とも言えます。
しかし、明らかに時間的に無理がある目標が設定がされることはそれ自体が問題です。
あえて困難な目標を設定して、上司からの過剰なプレッシャーと長時間労働を強いられた場合は、過重労働が発生する要因となります。
人員が足りていない
近年の少子高齢化の問題により、どの業界においても人手不足が深刻化し、1人あたりの業務量が多くなっています。
社員個々の能力がどんなに優れていても、業務量が極端に増えた場合は、必然的に労働時間は長くなります。
長時間労働の期間が長くなると、心身の不調を招く人も増えて、病休や退職してしまう原因となるでしょう。
人員配置に問題がある
役職別に見ると、部長クラスは長時間労働を良しとする制度や職場風土に慣れています。
成果主義を重視しない、理解できない世代もいるため、人事担当者としては人員配置のバランスに気を使い、風通しの良い環境をと整える必要があります。
給料が少ない
従業員が給与を増やすために敢えて自ら残業をするケースも少なくありません。
上司が部下の業務について適正に管理して、無駄な残業を削減し、必要な場合に限り残業を認めようにする意識改革も必要です。
企業が行うべき過重労働対策
過重労働を予防して、労働者が無理をしない職場環境づくりには、事業主での対策が求められます。
定期的に面談を行ったり面談の回数を増やす
健康上の不安、疲労の蓄積があることを労働者から申し出があった場合は、医師による面接指導を実施します。
労働安全衛生法に基づき、事業者は長時間労働者に対して、医師による面接指導、保健師による保健指導が義務とされています。
評価制度や給与制度の見直し
長時間働くことを評価する制度ではなく、適正な時間管理をすることが評価される人事制度を導入することが大切です。
時間外労働をする場合は上司に報告を行う、労働時間を部署ごとに集計し、業務が適正かどうかを協議する試みが役立ちます。
本人の適性や希望を考慮した人員配置
人事担当者が従業員それぞれの適性や能力、その他
希望も組み込んだ上で人員配置をすることが大切です。
一人当たりの業務量が多くなる職場では、アウトソーシングを活用することも有効です。
利益を生み出すための重要なコア業務と、サポート的のノンコア業務を分けることで、社員の過重労働
を予防することができます。
働き方の自由度を高める
決められた労働時間の中で、出勤時間や退勤時間を自由に設定できる「フレックスタイム制」や「朝型勤務制」など、働き方の選択肢を増やすのも効果的です。
ワークライフバランスの推進
時間外労働を削減することで、社員のワークライフバランスが実現することができ、過重労働対策にもなります。
私生活との両立を図り、社員の満足度を上げることは従業員のモチベーションのアップ、社員の定着率にも繋がります。
生産性を高める仕組みやツールの導入
生産性を向上させるためには、業務効率化できるツールを導入することで、コアな業務に集中する
ことができます。
まとめ
過重労働や長時間労働による労働者の健康障害を防ぐために、労働時間の削減の取り組みが求められます。
自社が採用しやすい対策を取り入れながら、ぜひ長時間労働削減の取り組みを始めてください。