キャリアアンカーとは、キャリア設計する際の軸となる価値観のことを言います。ブレないキャリアアンカーを設定することで、生涯に渡って芯の通った人生となるのです。今回は、キャリアアンカーの活用例や診断方法について解説していきます。
キャリア・アンカーについて
「キャリアアンカー」とは、生涯、キャリアを選択する際に、絶対に妥協できない価値観、譲れない考え、欲求、動機、能力のことをいいます。
マサチューセッツ工科大学ビジネススクールの組織の心理学者、エドガー・H・シャイン博士によって提唱されたキャリア理論の概念です。
キャリアアンカーは、周囲の環境や年齢に関わらず生涯に渡り変わらないので、人生の重要な意思決定に大きな影響を与えます。
キャリア・アンカーとは
キャリアアンカーの言葉は、人生の錨(アンカー)から例えられています。
個人が人生でキャリアを選択していく上で、絶対に譲れない軸となる価値観、欲求は、一度形成されると、周囲の環境が変化しても変わりません。
キャリアアンカーは生涯に渡ってブレない価値観、自己欲求ですから、キャリアを決定づける重要な要素です。
キャリアアンカーは生涯にわたるキャリアの核となるため、「得意なスキル」といった表面的な自己分析とは異なります。
現在の仕事、将来やりたい仕事は、本当に生涯続けていきたいのか考えてみてください。
将来、景気や産業構造の影響によって、その職種がなくなる可能性もあります。
今は生涯続けたいと思っていても、年齢と共に価値観が変わって、やりたい仕事が変わるかもしれません。
キャリアアンカーは時代や周囲の環境がどう変化しても一貫しており、重要な指針となるのです。
会社の人事担当者は、個々のキャリアアンカーを把握することで、効率的な人材育成・人員配置することができます。
キャリア・アンカーが注目されている理由
近年は、ビジネスの多様化により、職場の人材流動性が高くなっています。
働き方革命も本格的に導入する企業も多く、仕事に対する考え方も世代間で異なります。
異なる価値観を持つ従業員がそれぞれの能力を発揮して高い成果を出すには、人事担当者が適材適所の役割分担やルール作りをすることが重要です。
プロジェクト達成には、従業員一人ひとりのキャリアアンカーを把握することは大きなヒントになります。
企業内での人材の配置をする際は、人材育成する立場にある人事担当者がそれぞれのキャリアアンカーを把握することが大切です。
キャリアアンカーを考慮しない人材配置は、優秀な従業員が働きにくさを感じ、離職率にも繋がってしまいます。
キャリアアンカーの概念は、社員一人ひとりが能力をフルに発揮できるように多くの企業が注目しています。
キャリア・アンカーの活用例
仕事や生き方に大きく影響するキャリアアンカーの概念は、社内の人事にどのように活用されているか見ていきましょう。
例えば、育成研修にてキャリアアンカーの重要性や理解を深めることで、チームが円滑に進むようになります。
従業員それぞれのキャリアアンカーを理解しあう事により、役割分担や組織運営もスムーズになるのです。
新入社員の研修ガイダンスにおいては、自分のキャリアアンカーを確立する重要性を伝えることで、モチベーションも高まります。
従業員にはどのように働きたいか考えさせることで、職種や環境が変わっても活躍できる、と自信を持てるようになります。
キャリア・アンカーの8つの分類
キャリア・アンカーは以下の8つの分類に分けられます。
1. 管理者 ジェネラル・マネジメント・コンピタンス
出世志向が高いタイプ
組織を動かしたい
経営側に立つことに価値があると考えている
ゼネラル・マネージャーや経営者を目指している
企業の経営に求められる人材になりたい
多くの職種を経験するため異動も受け入れる
昇進するための資格取得にも熱心
2. 専門能力・職人 テクニカル / ファンクショナル・コンピタンス
専門家としての能力を発揮したい
特定分野のエキスパートとして活躍したい
専門技術や知識にはジシンガアル
管理職になるよりも現場の仕事をしたい
特定の仕事の才能と意欲を持つことに価値を見出す
3. 安全・安定 セキュリティー/ スタビリティ
安全性を重視する堅実派
安定志向、終身雇用が期待できる大企業や公務員を目指す
ゆったりとした気持ちで仕事をしたい
変化を嫌う
働き方の異なる部署へ異動はストレス
リスク回避が最優先
4. 起業家的創造性 アントレプレヌール的クリエイティビティ
新しいものが好き
起業家を目指したい
最終的な目標は事業を起こすこと
創造性を大切にしたい
発明家や芸術家になりたい
既存事業の買収・再建に関心あり
5. 自律と独立 オートノミー / インディペンデンス
自分のペースやスタイルを守りたい
集団行動が苦手でマイペース
規律や他者の作ったルールで縛られたくない
行動の自由度が高い環境で仕事をしたい
研究職などに適している
人の力を借りずに仕事をしたい
6. 奉仕・社会貢献 サービス / 大義への献身
世の中のためになることが最も重要な価値感
医療・看護・社会福祉・教育などを目指す
自分の仕事を通して世の中をよくしたい
社会貢献したい
人の役に立つ仕事がしたい
商品・サービス開発、監査、福利厚生部門向き
内部不正も見逃せない
7. チャレンジ ピュアなチャレンジ
あえて困難に飛び込むチャレンジャー
挑戦が人生のテーマ
不可能を可能にしたい
退屈な生活は好まない
得意・不得意、専門性を問わず難しい仕事に挑戦したい
厳しい状況下で問題を解決することに喜びを感じる
淡々と日々をこなす仕事は苦手
8. 生活様式 ライフスタイル
仕事とプライベートはどちらも大切と考える
仕事と家庭のベストバランスを常に考えている
熱心に仕事に打ち込むが、育児にもしっかりと関わりたい
在宅勤務や育休制度は取り入れる
キャリア・アンカーの診断方法
キャリアアンカーのタイプを診断するには、以下の
シャイン氏の作った診断テストchikakuナビを活用しましょう。
chikakuナビで診断可能
シャイン氏が提唱するキャリアアンカー診断はchikakuナビを使えば、全40問を無料で診断する事ができます。
キャリアサバイバルについて
キャリアアンカーの概念を提唱したシャイン氏は、
キャリアサバイバルという考え方も言及しています。
キャリアサバイバルとは
キャリアサバイバルは、自分を取り巻く環境の変化に適応をする「アウトサイド・イン」の思考です。
時代や環境の変化に対応して、自分はどう生き残るかを考えるというわけです。
キャリアアンカーとの違い
キャリアアンカーは、個人ニーズを明確化するキャリアアンカーは自分がどうありたいかを考える「インサイド・アウト」の思考です。
キャリアアンカーとキャリアサバイバルは、車の両輪のようなもの。
両者をマッチさせるには、市場の動きや職場環境が長期的な個人の計画にマッチしているかを考える必要があります。
まとめ
人材担当者が従業員がそれぞれの能力を引き出すには、キャリアアンカーを把握して、適材適所の人事配置をすることが重要です。
異なる価値観を持つキャリアアンカーを社内研修で取り入れてみてはいかがでしょうか。