キャリアアップ助成金を活用することで、非正規雇用労働者のキャリアアップを推進しやすくなります。非正規雇用労働者としてもキャリアアップのチャンスが増えて、雇用者と労働者の双方にとって良い結果となるでしょう。ここでは、キャリアアップ助成金の特徴やコース、申請時の注意点などについて詳しく解説します。
キャリアアップ助成金について
キャリアアップ助成金とは、契約社員や派遣社員、パート・アルバイトなどのキャリアアップを促す取り組みを実施した事業者に支払われる助成金です。キャリアアップ助成金が作られた背景について詳しくみていきましょう。
キャリアアップ助成金ができた背景
非正規雇用労働者は、正規雇用労働者と比べて地位や給与などが低いことが問題となっています。キャリアアップ助成金で企業を支援することで、非正規雇用労働者のキャリアアップの施策の実施を促すことが狙いです。
キャリアアップ助成金のコース
キャリアアップ助成金には、いくつかのコースが定められています。それぞれのコースの特徴を詳しくみていきましょう。
正社員化コース
正社員化コースは、契約社員やパート・アルバイトなどを正社員にした場合や、一般正社員を短時間勤務・勤務地限定などの正社員に転換した場合に助成金を受け取れます。正社員化コースの対象は、次の労働者です。
雇用期間が通算で6ヶ月を超える有期契約労働者
雇用期間が6ヶ月以上の無期契約労働者
6ヶ月以上継続して同じ業務を行う派遣労働者
事業主が実施する有期実習型訓練を修了した有期契約労働者
これらの対象者に加え、次の2つの条件を満たす必要があります。
正社員への転換前6ヶ月と転換後6ヶ月で、賃金総額が5%以上上がっている
有期契約労働者から正社員への転換した場合、転換前の雇用期間が3年以下
賃金規定等改定コース
賃金規定等改定コースは、有期契約労働者の基本給を2%以上増額した場合に助成金を受け取れます。対象の労働者数に応じて助成金の額が変動します。すべての有期契約労働者の基本給を2%以上増額した場合は、対象の労働者数が1~3人で通常9万5,000円、生産性の向上を認められた場合は12万円が支給されます。
一部の有期契約労働者の基本給だけを2%以上増額した場合は、対象の労働者数が1~3人で通常4万7,500円、生産性の向上を認められた場合は6万円が支給されます。
健康診断制度コース
健康診断制度コースは、有期契約労働者に対して、法定外の健康診断を導入した際に助成金が支給されます。助成金額は、中小企業が38万円、大企業が28万5,000円です。また、生産性要件を満たす場合は、中小企業に48万円、大企業に36万円が支給されます。
助成金の支給を受けるには、次の要件を満たす必要があります。
有期契約労働者である
雇用保険被保険者である
事業主および取締役の3親等以内の親族ではないこと
助成金の申請日の時点で離職していない
また、雇入時健康診断、定期健康診断、人間ドックのいずれかを導入しなければなりません。人間ドックを導入する場合は、基本健康診断に加え、次のいずれかを導入する必要があります。
胃がん検診
肺がん検診
乳がん検診
子宮がん検診
大腸がん検診
骨粗しょう症検診
歯周疾患検診
賃金規定等共通化コース
賃金規定等共通化コースは、契約社員や派遣社員などが正規雇用者と同じ業務を行った際に、正規雇用者と同じ賃金規定を適用することで助成金を受け取れます。中小企業の場合、通常57万円、生産性の向上が認められる場合は72万円が支給されます。
また、2人目以降は上限20人まで通常2万円、生産性の向上を認められた場合は2万4,000円が加算されます。
諸手当制度共通化コース
諸手当制度共通化コースは、正規雇用者にのみ支給される各種手当を非正規労働者にも適用した際に助成金を受け取れるコースです。中小企業は1回のみ38万円、生産性の向上を認められた場合は48万円、2人目以降は上限20人まで1人あたり1万5,000円、生産性の向上を認められた場合は1万8,000円が支給されます。
対象となる手当は次のとおりです。
賞与
役職手当
精皆勤手当
特殊作業手当および特殊勤務手当
食事手当
地域手当
単身赴任手当
家族手当
住宅手当
時間外労働手当
深夜・休日労働手当
選択的適用拡大導入時処遇改善コース
選択的適用拡大導入時処遇改善コースは、有期契約労働者などを社会保険に加入させ、基本給を上げた際に助成金を受け取れるコースです。適用した前日より3ヶ月以上前から継続的に雇用しているなど、複数の要件を満たす必要があります。申請の上限は45人で、基本給の増減割合に応じて助成金額が異なります。
増減割合が3%以上5%未満で1人あたり2万9,000円、生産性の向上を認められた場合は3万6,000円です。
短時間労働者労働時間延長コース
短時間労働者労働時間延長コースは、短時間労働者の勤務時間を延長し、社会保険の適用範囲内になった場合に助成金が支給されるコースです。1人あたり19万円、生産性の向上が認められる場合は24万円が支給されます。
また、社会保険の適用によって手取り収入が減るのを防ぐべく、給与を上げることにより、選択的適用拡大導入時処遇改善コースによる助成金も受け取れます。
キャリアアップ助成金を申請するにあたり知っておきたい要件など
キャリアアップ助成金を申請する際には、次の要件や助成金について確認しておきましょう。
事業主の要件
キャリアアップ助成金の適用を受けるには、事業主は次の要件を満たす必要があります。
雇用保険適用事業所の事業主である
事業所単位でキャリアアップ管理者を配置している
事業所単位で対象の労働者に対してキャリアアップ計画を作成し、管轄の労働局長から受給資格を認定されている
対象労働者への賃金の支払い状況がわかる資料を整備できている
キャリアアップ計画期間内に、実際にキャリアアップに取り組んでいる
生産性要件とは
生産性要件は、生産性が実際に伸びている場合に満たされるもので、通常よりも支給額が高くなります。キャリアアップ計画の実施により、3年度前と比べて6%以上の生産性の向上がみられていることが要件です。
中小企業は大企業よりも多く支給される
中小企業は、大企業よりも多くの助成金を受け取れます。これは、資本金額や労働者数が大きく異なるためです。小売業、サービス業、卸売業、その他の業種で大企業と中小企業の基準が異なります。
その他、キャリアアップ助成金に関する注意点
キャリアアップ助成金を受け取りたい場合は、次のようなことに注意しましょう。
キャリアアップ助成金の必要書類のチェックリストについて
キャリアアップ助成金を受け取るには、様々な書類の提出が必要です。こちらから該当のコースのチェックリストをダウンロードして、漏れなく準備しましょう。
東京都ならではのキャリアアップ助成金について
東京都は、期間限定で地域限定のキャリアアップ助成金を実施しています。開催期間は非公開のため、東京都にある事業所としては、定期的に東京都のホームページをチェックしておきたいところです。
キャリアアップ助成金の申請書のダウンロード方法について
キャリアアップ助成金の申請書は、厚生労働省の下記ホームページからダウンロードしましょう。必要事項を記入し、所轄の労働基準監督署長に提出してください。
助成金を申請する際の注意点
複数のコースを申請しても、1つしか適用されない場合があります。また、要件が変更になる場合があるため、キャリアアップ助成金を受け取りたい場合は管轄の労働基準監督署やハローワークに問い合わせましょう。
そのほか、キャリアアップ助成金の申請代行業者には注意が必要です。厚生労働省やハローワークは勧誘に一切関与していません。100%助成金を受け取れるなどといい、勧誘する業者もいますが、要件を満たさなければ助成金を受け取れないので注意してください。
まとめ
キャリアアップ助成金は、コースによって要件が異なります。それぞれの要件を確認して、自社に合ったコースを選びましょう。また、様々な書類の提出が必要なため、チェックリストを必ず活用してください。キャリアアップ助成金を利用して、事業主と労働者の双方にとって良い会社を築き上げましょう。