ストックオプションとは?制度の仕組み、メリット・デメリットを紹介

ストックオプションの記事
会社で働く時に一番重要なものは賃金です。少子高齢化に伴い年功賃金ではなくなりつつある日本では、年功的な賃金の上昇が見込めません。業績連動型のインセンティブにより社員に便益を与えることで、社員にとって魅力ある会社にすることができます。インセンティブの代表例としてストックオプションがあります。本記事ではストックオプション制度の仕組み、メリット・デメリットについて解説していきます。
目次

ストックオプションとは

ストックオプションとは
ストックオプションとは、会社が社員に対して、予め決められた価格で自社株を買うことができる権利のことを言います。

インセンティブ制度の1つ

ストックオプションはインセンティブ制度の1つです。インセンティブ制度とは、社員にモチベーションを持って働いてもらうための仕組みのことを言います。インセンティブ制度には、営業パーソンが売上実績に応じて基本給に上乗せして給与がもらえる制度や、個人の成果に応じて表彰される表彰制度などがあります。また、個人の実績に限らず業績に応じて利益が付与されるストックオプション、従業員持株会などもあります。

新株予約権との違い

ストックオプションとよく似た言葉に新株予約権というものがあります。ストックオプションとは新株予約権の1種です。新株予約権を有した人は、その会社の株式を予め決められた価格で買うことができます。つまり社員でなくても権利を有します。ストックオプションも同じ意味合いですが、ストックオプションの場合は会社が社員に対する報酬として、インセンティブ制度として位置付けているところが違います。

ストックオプションの歴史

ストックオプションは、アメリカで始まった制度です。2000年に商法が改正されたことに伴い日本で法制化され、ストックオプションが日本でも認められることになりました。

ストックオプション制度の仕組み

ストックオプション制度の仕組み
ストックオプション制度の仕組みについて、具体的に確認していくことにしましょう。

決められた期間内に決められた価格で株式を買える

ストックオプションの仕組みは、予め決められた価格で自社株を買えるということです。ただ、いつでも買えるのかというとそういう訳ではなく、期間が定められています。決められた期間内に決められた価格で自社株を買えるのがストックオプションです。

ストックオプションの権利を行使する

事例を交えて、ストックオプションの権利を行使するとどうなるか説明します。事例では、ストックオプションのルールを以下の通りとします。

・決められた価格:1株1,000円
・決められた期間:5年間

つまり5年間なら、いつでも1株1,000円で買うことができることを意味します。

事例:株価が上がった時

会社の業績が伸びて1株あたり3,000円に株価が上昇したとします。その時にストックオプションの権利を行使すれば1株あたり1,000円で3,000円の株を買うことができます。1,000株なら100万円で300万円の価値を持つ株を購入することができるということ。直ぐに売却すれば、300万円-100万円で、200万円の利益を得ることができるということです。

事例:株価が下がった時

逆に会社の業績が下がって、1株あたり800円に株価が下落したとします。その時にストックオプションの権利を行使すると、1株あたり800円の株を1,000円で買うことになるのでマイナスになり社員は損をします。ただし、ストックオプションの権利を行使することは義務付けられていないので、買いたくなければ買わなくて済みます。得もしませんが、損もしないことになります。

ストックオプションのメリット

ストックオプションのメリット
ストックオプションは、インセンティブ制度の1種だと書きました。インセンティブ制度は社員のモチベーション施策です。従って、ストックオプションがあることで社員はモチベーションを高めて仕事をすることができるようになります。具体的に解説します。

人材の確保や流出防止

ストックオプション制度があると、うまく運用すれば賃金増を見込めます。例えば、成長著しいベンチャー企業でストックオプション制度があれば、社員はストックオプションを使うでしょう。社員は、株価が高くなった時点でストックオプションの権利を行使して株を売却すれば、事例で確認したように「決められた価格」と現在の株価との間の金額を利益にすることができます。

ベンチャー企業に限りませんが、株価の上昇が見込めそうな企業であればストックオプションを行使することで賃金増を期待できるのですからストックオプションが人材の確保に繋がったり流出防止に繋がったりします。

従業員の動機付けやエンゲージメントの向上

ストックオプションを行使して利益を得るには、会社の業績が向上していかなくてはなりません。つまり社員は、会社の業績向上のために働くようになります。業績向上のために働いていけば、ストックオプションで利益を得ることができるからです。つまり会社の業績向上のために働くことが自らの利益を得ることに繋がるのです。ストックオプションがあることで社員の仕事に対する動機付けが高まることに繋がります。

また、ストックオプションによりエンゲージメントの向上にも繋がります。どうしたら会社の業績が向上するか考える中で、会社への帰属意識、絆などを高めることができるからです。

従業員と株主の利害関係が一致する

株主は自らの利益向上のため、自分の会社の業績が上向くことを望んでいます。ということは、ストックオプションがあれば社員と株主の利害関係は一致することになります。近年、株主重視より社員重視と言われてきていますが、それでも株主の発言権は大きく無視できない存在です。従って、社員と株主の利害関係が一致することはストックオプションを考える上で、重要なメリットと言えます。

ストックオプションのデメリット

ストックオプションのデメリット
ストックオプションにもデメリットがあります。2点、紹介していきます。

権利を行使した人材の流出

ストックオプションによって株式の売買に成功すれば利益を被ることができます。うまく売買すれば、その利益額が大きなものになることもあるでしょう。社員が利益を得られる一方で、会社にとっては社員の流出に悩まされることもあります。例えば、社員のエンゲージメントが大して高まらないうちに、その社員がストックオプションの権利を行使して大きな利益を得た場合、社員が退職してしまうこともある訳です。

人材の流出に悩まないように、社員のエンゲージメントが高まるような組織づくりをしておけば良いのですが、組織づくりをおざなりにしておくとストックオプション権利を行使した後で社員の流出が発生することになりかねません。

株価が上がらないと動機付け・エンゲージメント向上に繋がらない

ストックオプションによって社員が自社株を売買して利益が出れば、動機付け・エンゲージメント向上に繋がります。しかし、それはそもそも株価が上がったら…という前提がなければなりません。株価が低迷したまま放置しておくような会社は、株価が上がりようがありませんから、そもそも、ストックオプションによる動機付け・エンゲージメント向上は望めません。

当たり前のことですが、ストックオプションを導入するくらいであれば、経営者は内向きにならず、「どうしたら業績が高まるのか」ということを考えて会社経営をしていく必要があるでしょう。

まとめ

ストックオプションのまとめ
年功的な賃金増が見込まれなくなる中、しっかりと業績を上げて会社の業績に貢献した社員に対して、固定的な賃金だけでなくストックオプションのように社員の頑張りに貢献できる仕組みは、社員を喜ばせ、会社への愛着・帰属意識を高めることに繋がります。人材を確保し、繋ぎとめるためにも、ストックオプションの導入を検討してみてはいかがでしょうか。

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