女性活躍推進法とは?
女性活躍推進法とは、全ての女性が働きやすい環境づくりを企業に義務づける法律のこと。2016年4月に施行されました。正式名称は「女性の職業生活における活躍の推進に関する法律」といいます。女性活躍推進法により、企業には、女性社員が働きやすく仕事に自信を持って働けるよう、様々な取り組みを求めています。
女性活躍推進法が注目された背景
女性活躍推進法が施行され、注目された背景としては、将来の労働力人口の減少や日本企業の現状があります。
1.労働力人口の減少
2.女性管理職の割合が少ない
みずほ総合研究所の調査によると、少子高齢化により2065年の労働力人口は4割減少すると推測されます。2016年の労働力人口は6,648万人。2065年の労働力人口は3,946万人となるので、4割減少すると見込まれているのです。
また、日本企業の女性管理職の割合が少ないことも問題です。内閣府の男女共同参画局によると、2016年の課長級の女性社員の割合は10.3%、そして部長級は6.6%と低い水準に留まっています。
政府は2020年までに「 2020年までに指導的地位に占める女性の割合を少なくとも30%程度とする」という目標を掲げているのですが、現状を見ると目標到達は難しそうですね。
以上、見てきたように女性労働者を巡る労働環境は整っているとはいいがたいものがあります。このような背景から、2016年に女性活躍推進法が施行され、企業への取り組みが強化されたのです。
女性活躍推進法の概要
女性活躍推進法の概要について説明します。
女性活躍推進法の目標
女性活躍推進法では以下の3つの目標を掲げています。
1. 採用や昇進が平等に行われ、職場環境においても平等が配慮されるべきこと
2.仕事と家庭が両立できる環境をつくること
3.女性本人が、仕事と家庭の両立に関する意思決定をできること
女性が男性と平等に採用され、昇進・昇格し、ワークライフバランスを保てることが求められていることが分かりますね。
女性活躍の状況把握と行動計画の策定
女性活躍推進法では、企業に対して、自社の女性活躍の状況把握と行動計画の策定を求めています。行動計画の名称は一般事業主行動計画といいます。詳しくは実施義務のところで後述します。
2019年に改正された女性活躍推進法
女性活躍推進法は2019年に改正されています。改正ポイントは次の3点です。
1. 一般事業主行動計画の対象企業の拡大
2.情報公表の追加
3.プラチナえるぼし制度の創設
これまで、一般事業主行動計画を策定・届出する企業の規模は従業員301以上が対象でした。しかし、2019年の改正により従業員101人以上の企業が対象となりました。つまり従業員101人以上300人以下の企業は、新たに、行動計画を届け出る必要が出たことになります。2022年4月1日より施行されます。
また、従業員301人以上の企業に対して、職業生活に関する機会の提供に関する実績、または職業生活と家庭生活との両立に資する雇用環境の整備に関する実績の項目のうち、それぞれ1項目ずつ公表する必要が出てきました。2020年6月1日より施行されています。
最後に、えるぼし認定よりも水準の高い認定制度としてプラチナえるぼし制度が創設されました。2020年6月1日より施行されています。
女性活躍推進法を進めるための実施義務と3つのステップ
企業が女性活躍推進法を進めるためにはどうしたら良いか、実施義務と3つのステップを解説します。女性活躍推進法では301人以上の企業(2022年4月1日より101人以上の企業)に対し、3つの実施義務を課しています。以下で実施義務について解説します。
実施義務
従業員301人以上の企業に対しては以下3点が実施義務とされています。それぞれ説明していきましょう。
1.女性活躍の現状分析
2.一般事業主行動計画の策定
3.労働局への届出
女性活躍の現状分析
一般事業主行動計画を策定する前に、女性活躍の現状を分析していきます。現状を把握することなくして、企業が女性活躍をどのように進めていったら良いのか、目標が立たないからですね。現状分析のポイントは以下の通り。
・女性採用比率
・勤続年数男女差
・労働時間の状況
・女性管理職比率
一般事業主行動計画の策定
女性活躍の現状分析を終えた後は、一般事業主行動計画を策定し公表します。必ず記載しなくてはならないのは、目標、取り組み内容、実施時期、および計画期間です。取り組み内容は具体的な内容で記述するようにします。
公表のやり方は企業のウェブサイトで行うほか、女性の活躍推進企業データベースを通じて公表します。
労働局への届出
一般事業主行動計画は管轄の都道府県労働局に届け出る必要があります。持参の他、郵送や電子申請も認められています。
人的資源の配分を再考する
実施義務を確認したところで、ここからは女性活躍推進法を進めるための3つのステップを解説します。
まず、1つ目は「人的資源の配分を再考する」ことです。人的資源管理には採用・育成・配置転換・人事制度という種類があります。実施義務を行い、男女比率で女性が過少であれば女性を多く採用・配置転換していきます。管理職が少ない場合は人材育成を通じて管理職を育成していきます。
このように人的資源の配分を再考・実践することで、一般事業主行動計画が具体的に実行に移せるようになります。
女性社員のキャリアプラン作りを支援する
2つ目は「女性社員のキャリアプラン作りを支援する」ということ。女性管理職が少ないことが分かっても、企業に女性管理職のモデルがいなければ目指しにくいものです。男性管理職がいるために、管理職のイメージがつきやすい男性とは対照的ですね。
そこで、女性社員が管理職を目指したり、昇格して難易度の高い職務に就いたりすることを後押しするために、企業は女性社員のキャリアプラン作りを支援する必要があるのです。具体的な施策としては、女性のリーダーシップやマネジメントを鍛える研修を行ったり、目標管理制度を通じて難しい課題にチャレンジしたりすることが挙げられます。
女性社員の育児をサポートする
女性は妊娠や出産、育児といったライフプランの変化があります。育児は夫婦が協力して行うべきものという正論はありながら、女性社員が育児を担いがちであるのが現状です。時短勤務や有給休暇、子の看護休暇の取得のしやすさなど、「女性社員の育児をサポートする」取り組みが必要といえます。管理職は育児と仕事の両立ができないような職場では、管理職登用に手を挙げる女性社員は少ないでしょう。
女性活躍推進の成功事例
最後に女性活躍推進に成功した企業事例を確認していきましょう。
サイボウズ
サイボウズの女性活躍推進への取り組みには、ウルトラワークという人事制度があります。元々、離職率が高かったサイボウズは、ウルトラワークを導入し働く場所・時間・働き方のいずれも社員に選択できるようにしました。ウルトラワークのおかげで、女性社員が育児のために柔軟な働き方をすることも可能になりました。
メルカリ
メルカリでは、女性活躍推進への取り組みとして「育休中の給与補償」があります。育休中は育児休業給付金が支給されるため無給の企業が多い中、メルカリでは100%の給与補償を行っているのです。育児休業給付金は、育休開始から6か月まで給与の67%の支給、6か月以降は給与の50%が支給される制度なので、メルカリの取り組みは女性社員の定着にも繋がるでしょう。
アサヒビール
アサヒビールでは、ウェルカムバック制度により、育児のために退職した女性社員を再雇用する制度を採り入れています。育児に専念するために退職し、一定期間を経て働きたいと考える女性社員のニーズに応える制度といえるでしょう。
大阪ガス
大阪ガスでは、仕事と育児の両立を学習する研修を導入しています。名称はワーク&ライフ・インターンといい、院生や大学生などの学生が対象です。入社前から仕事と育児の両立の大変さ、大切さを知ってもらうことで、企業が女性活躍推進に取り組んでいることを学生にアピールできる材料ともなっています。
まとめ
女性活躍推進法は、2016年に施行され、2019年に改正。随時、制度の施行が始まっています。制度改正により女性活躍推進法の対象となる企業の枠が広がり、企業の女性活躍推進への取り組みが強く求められます。記事では、女性活躍推進法の実施義務や法律を推進するための3つのステップを紹介しました。企業として女性活躍推進法に取り組む時の参考にして頂ければ幸いです。