そんなときに役立つ能力が「ポータブルスキル」です。
この記事では、ポータブルスキル意味や種類、スキルを活用するメリットについて解説します。
ポータブルスキルとは?
ポータブルスキルとは、持ち出し可能な能力・スキルという意味です。
新しい業界に入らないと学べない技術やスキルではなく、その人が元々習得している専門技術・知識・コミュニケーション能力などの総称を指します。
厚生労働省が提唱するスキル
ポータブルスキルは厚生労働省が提唱した能力であり、「専門技術・専門知識」「仕事のやり方」「人との関わり方」という3つの項目で構成されています。
- 専門技術・知識・・・・汎用性高く使える特別な技術や、業界に対する深い知識
- 仕事のやり方・・・・・与えられた仕事を効率的かつスピーディーに進める能力
- 人との関わり方・・・・上司・部下とのコミュニケーションを円滑にこなす能力
持ち出し可能な能力
ポータブルスキルで最も特徴的なのは、持ち出し可能な能力であることです。
現在の職場で活用できるのはもちろん、人事異動異なる仕事に携わる場合にも使えます。
キャリアアップ・部署異動・転職・起業など、どんな状況でも使えるスキルです。
汎用性の高い能力
ポータブルスキルは汎用性の高い能力とも言えます。人事異動や転職だけでなく、新入社員から管理職に至るまでの幅広い役職でポータブルスキルを活用できるからです。
ポータブルスキルが必要とされる背景
近年ポータブルスキルが注目を集める背景について解説します。
働き方改革の推進
ポータブルスキルが注目される理由の一つが、働き方改革の推進です。
長時間労働・低賃金・職場ストレス・過労死など、労働環境の悪化が社会問題となった結果、働き方の抜本的な改革が必要になりました。
ポータブルスキルの構成要素は、いずれも生産性の向上に必須の能力が指定されているのが大きな特徴。
労働生産性を向上させれば、少ない労働時間でより大きな付加価値を生み出す必要があります。
タレントマネジメントによる人材育成
タレントマネジメントとは、その人が持つ専門的・特徴的なスキルを伸ばすためのマネジメント戦略の一つです。
一人ひとりの個性を磨いてスキルを大きく伸ばす人材育成方法であり、ポータブルスキルと組み合わせると非常に効果的です。
ポータブルスキルは職種・業種を問わない汎用的な能力なので、優秀な人材をさらに成長させるためにもなくてはならないスキルなのです。
企業を取り巻く不透明な経済環境
企業を取り巻く不透明な経済環境も、ポータブルスキルが必要になった要因の一つ。
終身雇用制度が崩壊し、必ずしも新卒から定年まで同じ会社に勤務するとは限らなくなりました。
ポータブルスキルを磨くことで、どこの会社に行っても通用する能力を高められることになります。
ポータブルスキルを構成する3つの要素
ポータブルスキルの構成要素を紹介します。
専門技術・専門知識
専門技術・専門知識は、業務を遂行するのに必要な専門技術・専門知識を言います。
そもそも、専門技術・専門知識がなければ仕事ができないため、持ち出し可能なポータブルスキルとしては基本となる能力と言えます。
仕事のやり方
仕事への取り組み方において重要な行動が3つあります。
- 課題を明らかにする
- 計画を立てる
- 実行する
「課題を明らかにする」とは、課題を設定するために必要な情報を収集し、課題を具体的に設定することです。
「計画を立てる」とは、計画を立てるために必要な事項を洗い出し、優先順位を付けて納期を設定することです。
「実行する」とは、計画に基づき仕事を実行し、進捗を管理して変更が生じたら柔軟に対応して成果を確保することを指します。
人との関わり方
人との関わり方において重要なことは、経営陣や上司・先輩・同僚といった社内の人への対応、顧客や株主といった社外の人への対応、部下に対するマネジメントがあります。
また、社内のコミュニケーションを円滑にすることは、働きやすい環境を作るうえでも必要な能力です。
ポータブルスキルを活用するメリット
ポータブルスキルを活用するメリットについて解説します。
転職で企業とマッチングしやすくなる
ポータブルスキルは持ち出し可能な能力ですので、転職先でも活用することができます。
従って、ポータブルスキルを使うことで転職先に評価され、転職で企業とのマッチングが合いやすくなります。
自分の能力開発に役立つ
ポータブルスキルを活用することで自分の能力開発に役立ちます。
ポータブルスキルを使うと業務遂行に必要な専門技術・専門知識、仕事のやり方、人との関わり方を得ることができます。
現状の仕事はより効率的にこなせますし、難易度の高い課題に挑戦しやすくなります。
マネジメント力が高まる
ポータブルスキルには、マネジメント力を向上させる効果もあります。
ポータブルスキルを磨くことで会得できるのは主に対人マネジメントですが、マネジメントは対人関係だけで発揮されるものではありません。
仕事のやり方における課題設定、計画、実行も重要で、それらが対人マネジメントと絡み合ってマネジメントに活きるのです。
ポータブルスキルの磨き方
ポータブルスキルをどう磨いていけば良いかを解説します。
仕事の優先順位を立てる
ポータブルスキルの重要な行動にも計画がある通り、仕事に取り掛かる前には仕事の優先順位を立てることが大切です。
重要性、緊急性の高い仕事を最優先にして業務の割り振り、納期を確保することでポータブルスキルの計画を養うことができます。
計画通りに仕事が進まなかった時に柔軟に対応する
仕事が計画通りに進まなかった時、進捗状況次第で計画を見直し、軌道修正して納期通りに成果をあげる必要があります。
そもそも計画通りに事が進むことは多くなく、予測不可能な事態に遭遇することもありますね。社内環境の変化だけでなく、顧客の要求事項が変わったり、経済情勢の変化が生じたりすることもあるでしょう。
そういった時にも柔軟に対応できるようにすることが、ポータブルスキルを磨くことに繋がるのです。
日常業務の中で課題を見つける
ポータブルスキルの重要な行動には「課題を見つける」があります。
会社や上司から命じられる課題だけでなく、日常業務の中で課題を見つけることがポータブルスキルを磨くポイント。課題発見のアンテナを張っておくことで、普段何気なく取り組んでいる仕事の中に課題が潜んでいることが分かります。
発見したばかりの課題は、いわば荒削りの状態。どういう課題なのかと言葉で表すことが課題設定であり、課題設定がうまくできていれば解決策も講じやすくなります。
顧客説得に努める
ポータブルスキルには人との関わり方という構成要素があります。
自分にとって最も説得し難い相手は上司でも役員でもなく、顧客です。顧客説得に努めることで、ポータブルスキルの対人力を高めることができます。
人事評価を通じて部下育成する
マネジメントもポータブルスキルの重要な要素の1つ。おざなりに人事評価をするのではなく、人事評価を通じて部下育成に繋げることでポータブルスキルを磨けます。
ポータブルスキルを高めるための研修
ポータブルスキルを高めるために、職場の中だけではなく外部研修を受講する方法もありますので紹介します。
厚生労働省によるポータブルスキル活用研修
厚生労働省によるポータブルスキル活用研修は、人材紹介会社の営業パーソンやキャリアコンサルタントをターゲットとして、ポータブルスキルの有効性を学ぶための研修です。転職を目指す求職者に的確なアドバイスをするために作られています。
インソース
インソースは研修専門の会社で、マネジメントやリーダーシップ、ビジネススキル等、数多くのメニューの中から研修を選択して受講することが可能。ポータブルスキルも研修メニューの中にあります。
まとめ
持ち出し可能な能力であるポータブルスキルは、人事異動や転職によって新しい仕事に移っても活かせる能力です。記事ではポータブルスキルのメリット、磨き方を紹介しました。
ポータブルスキルの構成要素は、初めて耳にした能力ではないと思います。
一方で、意図して磨こうと思わないと磨けない能力でもあります。ポータブルスキルはますます必要になる能力ですので、業務や研修を通じて活用したいところです。