社会保険への加入義務
日本は「国民皆保険制度」があり、すべての人は社会保険に加入する制度があります。
加入すべき保険はその人の仕事によって異なりますが、基本的に会社に雇用されている正社員の場合は強制加入です。
正社員は会社経由で社会保険に加入する義務があり、週30時間以上働いているパートやアルバイトの方も社会保険に加入義務があります。
個人事業主は、一部の業種を除いて、健康保険と厚生年金の加入手続きを自分ですることになります。
そもそも社会保険とは?
社会保険制度とは、国民の生活を保障するために設けられた公的な保険制度の総称です。
健康保険・厚生年金保険・雇用保険・労災保険などから構成されています。
社会保険に加入するメリット
社会保険に加入するメリットは、病気や老齢になって給料がもらえない時に給付金・年金を受け取れること。
社会保険料が所得から控除されるため、納付するべき所得税や住民税が減るのがメリットです。
加入義務がある場合とない場合
日本ではすべての人が社会保険に加入しなければならないため、加入したくない人でも断ることはできません。
会社経由で加入する方は健康保険と厚生年金に加入し、公務員の方は共済組合という社会保険に加入します。
どこにも加入できない方は、市役所で国民健康保険と国民年金に加入する義務があります。
夫や妻の扶養に入っている方は夫や妻の加入している社会保険に加入することになります。
社会保険の加入義務に違反するとどうなるのか
社会保険に未加入だった場合、6ヶ月以下の懲役もしくは50万円以下の罰金が課せられる可能性があります。(健康保険法第208条)
社会保険の加入条件
社会保険の加入条件は、勤務時間、勤務日数、雇用期間、企業規模(従業員数)などにより決められています。
従業員は雇用形態を問わず入社初日から社会保険に加入し、事業主は期日までに手続きを済ませる必要があります。
▼社会保険の加入条件▼
- 2ヶ月を超える雇用で、週30時間以上働く場合→社会保険はすべて加入対象
- 週20時間~30時間未満の場合、かつ従業員数が500名以下の場合→健康保険・介護保険・厚生年金保険の加入は労使の合意があれば対象、労災保険・雇用保険は加入対象
- 週20時間~30時間未満の場合、かつ従業員数が501名以上の場合→社会保険はすべて加入対象
- 週20時間未満の場合→労災保険のみ加入対象
- 2ヶ月以下の雇用の場合→労災保険のみ加入対象
- 1ヶ月~2ヶ月の雇用の場合→週の勤務時間が20時間以上なら雇用保険の加入対象
平成28年に社会保険の加入条件が変更に
平成28年10月から、厚生年金保険・健康保険の加入対象が広がりました。週30時間以上働く方に加え、従業員501人以上の会社で週20時間以上働く方も厚生年金保険・健康保険(社会保険)の加入対象となります。
社会保険の加入条件(派遣の場合)
たとえ派遣社員であっても、労働者の社会保険の加入条件に満たしていれば社会保険に加入できます。
【1】健康保険・厚生年金保険・介護保険
・契約期間が2カ月を超える場合、下記の条件を満たす人は社会保険に加入することができます。
・1週間の所定労働時間が正社員の4分の3以上である
・1週間の所定労働時間が20時間以上で、下記の条件をすべて満たしている
【2】雇用保険
・1週間の所定労働時間が20時間以上、かつ、31日以上の雇用が見込まれる場合
【3】労働者災害補償保険
・労働者を1人でも雇用する場合は、加入が義務付けられています。(労災保険の保険料は事業所が全額負担するので、被保険者の負担はなし)
社会保険の加入条件(パートの場合)
社会保険完備の会社で働く場合、パート従業員でも社会保険の加入対象になります。
- 勤務時間及び日数が、正社員の4分の3以上であること
- 週20時間以上の勤務、年収106万円以上など5つの条件を満たしていること
社会保険に加入したくないパートはどうすればいいか
パート従業員が社会保険に加入すると、健康保険料や厚生年金保険料を払うことになり、手取りが減ってしまいます。
パートだけれども手取りが減るのが嫌で社会保険に入りたくない場合は、働く時間を抑えることで対策できます。
働く時間を抑える
基本的には、週5日以上、1日7時間以上の労働をしなければ、パートで社会保険の加入が義務になることはありません。
例えば、時給900円の場合、17日間の1日6時間労働をすると週20時間以上働くことになります。
月97時間勤務で収入は87,300円、88,000円を超えないので、社会保険加入の条件を満たすことにはなりません。
社会保険に加入しない場合どうなるのか
社会保険に社員を正しく加入させなかった場合は、健康保険法や厚生年金保険法で、事業主には6か月以下の懲役または50万円以下の罰則が定められています。
実際に罰則が適用されたケースは稀ですが、社員を社会保険に正しく加入させないと、懲役刑もあり得ることを知っておくべきです。
現実的には、年金事務所の調査により、最大2年間さかのぼって社会保険に加入させられるリスクも大きいので要注意です。
社会保険の加入手続きについて
ここからは、社会保険の加入手続き方法を見ていきましょう。
事業所が新規に社会保険に加入する場合は、強制適用事業所なら会社設立から5日以内に手続きしてください。
任意適用事業所なら従業員の半数以上の同意を得た後に、以下の書類を日本年金機構へ提出する必要があります。
- 健康保険・厚生年金保険新規適用届
- 被保険者資格取得届
- 被扶養者(異動)届(国民年金第3号被保険者関係届)
▼被保険者に扶養家族がいる場合▼
・保険料口座振替納付(変更)申出書
加入手続きに必要な書類は、管轄の年金事務所で受取るか日本年金機構のホームページからダウンロードすることが可能です。
社会保険の加入手続きの流れ
社員を新しく採用したとき、パートさんが正社員になる場合は社会保険の加入手続きをします。
▼社会保険の加入手続きの流れ▼
【1】「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」を作成する
健康保険と厚生年金はそれぞれ別々の保険ですが、一度に手続きできるように用紙も提出先も同じです。
【2】社員の年金手帳を確認しながら書類に記入する
「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」の欄を記入します。
提出者記入欄には会社の住所や名前、被保険者の欄には新しく加入する社員の名前や生年月日などを記入します。
個人番号の欄は社員の基礎年金番号を記入し、社員から年金手帳を見せてもらい書き写します。
取得年月日は入社した日、報酬月額はその人が1ヶ月で受け取る予定の見込み給与額です。
【3】扶養に加えるときは「健康保険被扶養者(異動)届」(「国民年金第3号被保険者関係届」)を提出する
新しく採用した社員に扶養家族がいる場合、すでに社会保険に加入している社員に扶養家族が増えた場合に必要です。
社会保険の加入手続きの期限は?
「健康保険・厚生年金被保険者資格取得届」、扶養家族を加える場合の「健康保険被扶養者(異動)届」は、該当した日から5日以内に提出しなければなりません。
新しく入社した人は入社から5日以内ですし、配偶者が扶養に加わる場合は結婚した日から5日以内です。
社会保険に加入する際に必要な書類について
社会保険に加入するには、以下の書類を持って手続きに行く必要があります。
▼社会保険に加入する際に必要な書類▼
- 年金手帳
- 雇用保険被保険者証
- 源泉徴収票
- 扶養控除等申告書
- 健康保険被扶養者異動届
- 給与振込先の届書
必要な書類の種類
健康保険・厚生年金は5日以内に管轄の年金事務所へ「健康保険・厚生年金保険被保険者資格取得届」を提出してください。
必要な添付書類について
本人のみ加入する場合は年金手帳、家族(妻や子ども)が扶養に入る場合は、妻の年金手帳、妻の収入を証明する書類、子どものマイナンバー通知カードまたは個人番号カードを添付します。
社会保険は会社員にとっては必須の知識
社会保険にはいくつか種類がありますが、国民はいずれかに加入する義務があります。
会社員の方は入社すると会社が手続きを代行してくれるので特に準備することはありません。
その他の方は、自分が加入すべき保険を把握して自分で加入手続きを済ませておきましょう。