有給を買い取りしてもらう事は可能?必要な条件や金額について

有給買取の記事

たまる一方で使い切れない年次有給休暇(有給)。その有給を会社に買い取りしてもらう事はできるのでしょうか?買取してもらうための必要な条件や金額についても解説していきます!

目次

そもそも有給とは

そもそも有給とは
有給の買い取りについて考える前に、そもそも年次有給休暇とはどういうものかについて、整理していきましょう。

年次有給休暇とは

有給とは、年次有給休暇の略です。他に、有休、年休、有給休暇と略されることもあります。労働者に認められる休暇のうち、「有給」で休暇を取ることができる休暇日のことを言います。労働基準法で定められている労働者の権利の1つですね。

ちなみに有給は、労働者の心身をリフレッシュさせ、労働者にゆとりある生活を送って欲しいとの趣旨で作られたものです。

年次有給休暇は労働者の権利。したがって、有給取得を申請されたら会社は原則として断れません。たまに「うちに有給はないんだよ」と言う会社もありますが、そう言われたとしても有給は労働者の権利であることを覚えておきましょう。ただし、部署のメンバーが一斉に有給を取られても困ります。会社の事業の正常な運営を妨げる場合は、会社は時季変更権を行使して、労働者に違う日に有給を取ってもらうことも可能です。

勤続日数によって有給休暇の日数は変わる

有給は入社日から付与される訳ではありません。労働基準法では入社後6カ月後に10日間が付与されることになっています。以降、1年ごとに付与されていきます。勤続年数によって付与日数が変わり最大20日間付与されます。有給休暇を取得できる要件もあり、入社後6カ月の間、継続して勤務して全労働日の8割以上出勤した者に付与されます。

それでは、勤続年数に応じた付与日数を具体的に見ていきましょう。

・勤続年数6カ月:10日
・勤続年数1年6カ月:11日
・勤続年数2年6カ月:12日
・勤続年数3年6カ月:14日
・勤続年数4年6カ月:16日
・勤続年数5年6カ月:18日
・勤続年数6年6カ月以上:20日

以上は、週所定労働時間が30時間以上、もしくは週所定労働時間が5日以上の労働者の場合です。正社員に限らず、契約社員、パート、アルバイトなどの名称を問わず付与されることになります。

日本の有給休暇の取得率

日本の年次有給休暇の取得率は世界最下位と言われています。エクスペディアジャパンが世界19カ国で調査した結果によると、日本の有給取得率は50%と、世界最下位でした。しかも有給を取得した日数もわずか10日間とこちらも世界最低水準となっていました。

有給取得率50%は、ワースト2位のオーストラリアよりも20%低い数字となっており、いかに日本の有給取得率が低いかが分かりますよね。

日本経済新聞
有休取得率、日本が最下位 エクスペディア調査 - 日本経済新聞 日本の有給休暇取得率は3年連続で世界最下位――。旅行予約サイトのエクスペディア・ジャパン(東京・港)は10日、世界19カ国・地域の有職者を対象にした有給休暇の国際比較...

尚、有給休暇には2年間の時効があります。日本は有給の取得率が低い上に時効があるので、有給が取れない人は消化しきれずになくなる一方です。

2019年4月から有給休暇の取得義務化へ

2019年4月から、有給休暇の取得義務化が始まっています。

1.概要

有給休暇の付与日数が10日以上の労働者に対して、会社が時季を指定して1年間に5日間の有給休暇の取得を義務付けることとなっています。2019年4月1日より労働基準法が施行され運用されるようになりました。尚、企業の規模を問わず、全ての企業で有給休暇の取得義務化は対象となっています。

2.罰則はあるの?

「有給休暇の取得義務化?ウチの会社では取れないよ」という人があるかもしれません。しかし、有給休暇の取得義務化は厳格で、取得できないと会社に対して罰則があります。もし1年間に5日以上の有給を取得させなかった場合、労働者1人につき30万円以下の罰金があります。

労働者1人につき、というところに注意して下さい。取得できない労働者がたくさん発生したらそれだけ罰金額も増えることになります。ですので、これまで有給があっても取れなかった人はこの機会に取得しましょう。

有給の買取りは可能か?

有給の買取りは可能か?
日本は有給休暇が低くわずか50%の取得率。2019年4月から始まった取得義務化があるものの、これまで取得できなかった人がいきなり有給を取れるとは限りません。また、有給休暇には2年間の時効もあります。どうせ取れないなら、会社に有給を買い取ってもらうことはできるのでしょうか?買取りが可能なのかをみていきましょう。

原則買取は不可能

有給の買取りは違法。原則として不可能です。

有給休暇の趣旨は、労働者の心身の疲労をリフレッシュさせたり、余裕のある生活をしてもらいたいという趣旨で作られています。したがって、有給を買い取るということになると、有給の趣旨から外れてしまうんですね。

ただし例外的に買取が可能な場合もある

有給の買取りは違法ですが、例外的に買取ることができる場合もあります。

有給の買取りが可能なパターン

有給の買取りが可能なパターン
有給休暇の買取りが可能なパターンを3つご紹介します。いずれのパターンも有給の趣旨が労働者の心身のリフレッシュのため、有給を取ることで引き続きゆとりをもって働いてもらうため、といった趣旨に反しないので認められると理解して下さい。

退職日に有給が未消化のまま残っている場合

退職する時は有給を使い切りたいですが、引き継ぎや業務でうまく消化しきれないこともあります。そういう時は、会社に有給を買い取ってもらうこともできます。退職することが分かっている訳ですから、有給の趣旨にも反しません。ただし、会社が「有給を買取る」ことを名目に退職日まで働くよう、労働者に求めることは違法となります。

法律で定められた日数を超えて有給が付与されている場合

法定では、有給休暇日数が10日間を付与される労働者に対して、会社が12日間の有給を付与しているとします。この場合、2日分は法律で定められた日数を超えています。ですので、2日分を買い取っても有給の趣旨に反しないので買取りは可能です。

時効で有給が消滅してしまった場合

有給には2年間の時効があります。時効が来れば有給は消滅してしまいます。したがって、その部分の日数については買取りしても有給の趣旨に反しませんので、会社が買取ることが可能。

有給を買取ってもらう場合

有給を買取ってもらう場合
有給を買い取ってもらえるパターンについて紹介しましたが、そもそも会社の就業規則などに「有給の買取り」の定めがあるかどうかを確認してみましょう。記載がなくても買取りできることもあるので、労務担当者に確認してみて下さいね。ここでは買い取ってもらえることを前提として、有給の買取り額や違法な買い上げについて解説していきます。

有給はいくらで買取りされるのか?

有給の買取り額について、具体的な額は会社の裁量に委ねられていますね。いくらにするかは会社の自由です。例えば基本給を平均労働日数で割った額を1日分の額とするとか、1日10,000円にするとかいったことは、会社の裁量で決めることができます。ですので、もし有給の買取りがある場合はいくらになるのかを労務担当者に確認することをおすすめします。

違法な買い上げは取り消しを請求することも可能

有給の買取りが可能なパターンを紹介しましたが、会社が有給を使ってもらいたくなくて買取りを求めてくることもあります。でも、これは違法ですので応じる必要はありません。もし誤って応じてしまったとしても違法な買取りですから取り消しを請求することが可能です。

有給の買取りでトラブルになった事例

有給の買取りでトラブルになった事例
有給休暇の買取りができる場合のトラブルになった事例を紹介します。有給の買取りができるパターンにあてはまり、かつ、会社が買取りをするという場合に発生したトラブルです。

買取りの値段が安すぎた

有給の買取りができたといっても値段が安いと困りますよね。基本給の平均労働日数で割った金額に近い額を欲しいところです。その半分以下とか、あまりに安い額になってしまうと、いくらお金で買取ってもらえても安過ぎるということになります。

退職時に有給消化が出来ないと言われた

退職時に有給消化が出来ないと言われるトラブルもあります。退職時に有給が未消化のまま残っている時は買取ってもらえます。とはいえ、退職前には1日くらいは有給を取りたいものです。しかし、「買取ったのだから有給が余っていても退職日まで働け」と命じられても困りますね。

お金がいつになっても振り込まれない

有給を買取ってもらえても、買取った額がいつまで経っても振り込まれないトラブルもあります。毎月の給料と違うので、つい振り込み日を確認しないこともあり得ますね。これは、買取られる事実だけを確認して、申請し、そのままにしていたらいつまでも振り込まれないトラブルです。

事前にしっかりと確認しておこう

年次有給休暇のトラブルは意外と多いものです。特に買取りについては、労務担当者も実例が少ないことでよく確認していないケースも考えられます。ですので、労働者の方ではトラブルにならないよう、買取り金額がどのくらいになるか・退職時の有給消化・振り込みの期日などをしっかりと確認しておくことが重要です。

まとめ

有給買取のまとめ
有給は、原則的には買取りできません。有給が労働者のリフレッシュのためであることを考えると、当然です。しかし、買取りが認められるパターンもあります。就業規則に明文化されていない場合もありますので、労務担当者に確認しておくと良いでしょう。

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