職場でよく聞くことが多いオールラウンダーという言葉。ビジネスでは色々な業務ができる人という意味で使われます。オールラウンダーと呼ばれる人にはどんな特徴があるか、オールラウンダーに向いている仕事、オールラウンダーの活用方法を解説します。
オールラウンダーとは?
ビジネスにおけるオールラウンダーの意味や使い方、語源について確認します。
オールラウンダーの意味・語源
ビジネスのオールラウンダーとは、色々な業務ができる人を意味する言葉です。オールラウンダーは英語のAll-Rounderに由来し、同じように何でもできる人という意味があります。
なおオールラウンダーはビジネスだけでなくスポーツでも使われます。「Aさんはマラソンも自転車競技もできるオールラウンダーだ」といえば、マラソンにも自転車競技にも長けているということができます。
ビジネスでのオールラウンダーの使い方を確認しましょう。例えば経理・人事・総務など管理業務をいくつも経験している人、法務を経験した営業パーソンなど、幅広い業務経験を有している人がオールラウンダーと呼ばれます。「あの人に聞けばたいていのことを教えてくれる」と呼ばれる人がオールラウンダーです。
日本企業の雇用形態は「人に仕事を割り当てる」メンバーシップ型雇用が多いです。それだけにオールラウンダーであることは、企業において期待される人材像ということもできます。 一方で、日本ではプロフェッショナルが期待されつつあります。
2019年に、トヨタ自動車が人事制度を改定してプロ人材が活躍できる環境を整えた(労政時報本誌3989号)ように、何でもできるオールラウンダーではなく、専門領域に長けた人材が求められているのです。
オールラウンダーの類語
オールラウンダーの類語にはどのようなものがあるでしょうか?類語との関わりや違いを見ていきましょう。
オールマイティ
オールマイティは万能で何でもできることを意味します。
人に対しても使える言葉ですから、ビジネスにおけるオールラウンダーとも言い換えが可能です。「私は、人事の仕事なら、採用や人事制度、給与計算から社会保険に至るまでオールマイティにできる」と使うことができます。
ゼネラリスト
ゼネラリストは仕事において幅広い知識や知見、業務経験を持つ人という意味です。ゼネラリストもオールラウンダーと言い換えができます。 日本の雇用形態がメンバーシップ型であるという説明をしました。
例えば新卒で入社して、営業、経理を経験した後、法務部で勤務するというキャリアがあります。
営業も管理部門も経験し、幅広い知識や経験を得ることができます。日本企業が目指す人材像がゼネラリストであり、オールラウンダーということです。
器用貧乏
器用貧乏もオールラウンダーの類語ですが、否定的な文脈でのみ使います。いくら幅広い知識や経験を持ち、仕事をそつなくこなせる人材でも、必ずしも成功するとは限りません。
「Bさんは器用貧乏だね」というと、色々なことを知っているが、能力が中途半端だという否定的な意味で使われるわけです。
オールラウンダーと呼ばれる人の特徴
オールラウンダーと呼ばれる人にはどんな特徴があるでしょうか?4つのポイントで説明します。
仕事のポイントを押さえるのが早い
オールラウンダーは初めての仕事でもポイントを押さえて理解できます。人事異動で新しい部署に配属され、マニュアルを見て仕事をすることになったとしましょう。オールラウンダーならマニュアルのどこに仕事の勘所があるか、すぐに把握できます。上司から仕事を教えてもらうときも同じです。
どうすれば仕事ができるようになるか、ポイントを押さえて理解できるのですね。 オールラウンダーは、覚えたことを説明する力もあるため、インプットとアウトプットのどちらでも能力を発揮します。
幅広い仕事をそつなくこなせる
オールラウンダーは仕事のポイントを理解するだけでなく、即座に行動に移せるのも特徴。つまり仕事ができるということです。
しかも1つの仕事に限らず、幅広い仕事をそつなくこなせるのですね。営業でいえば、法人も個人向けも、両方の営業を幅広く務められます。
営業とマネジメントを両立する人材である「プレイングマネージャー」も近い意味として知られています。
専門以外の領域にも興味を持っている
オールラウンダーは視野が広いです。また、仕事のポイントを押さえるのが早いので、学習する時間に余裕があります。そのため専門以外の領域にも興味を持って情報を収集しています。 例えば経理の仕事で見てみましょう。
オールラウンダーは、自分の専門以外の仕事にも興味を持っています。会計や資産管理が専門だとすれば、法人税申告や消費税、所得税などに関する業務についても関心を持ち、学習しています。
高いコミュニケーション力を持っている
仕事に関する知識を得るには、上司や先輩から教えてもらいます。オールラウンダーは高いコミュニケーション力を持ち、仕事で分からないことを臆することなく質問できたり、問題解決のヒントを聞き出したりできます。
「こんなことを質問したら怒られるかな」と思うのではなく、人の懐にうまく入って面倒を見てもらえるのです。
オールラウンダーと呼ばれる人の長所と短所
オールラウンダーと呼ばれる人の特徴を見てきました。続いて、オールラウンダーにはどんな長所や短所があるかを確認していきます。
複数の得意分野を持てることが長所
オールラウンダーの長所は複数の得意分野を持てることです。例えば人事系なら「採用しか分からない」「労務関係の仕事しか経験していない」のではなく、オールラウンダーの人は人事領域全般の知識・経験を持っています。
複数の得意分野を持っていれば、会社はリーダーシップやマネジメントを任せることもできます。つまりメンバーシップ型雇用をしている日本企業では、オールラウンダーが昇進・昇格していける理由でもあります。
専門性がないことが短所
オールラウンダーは複数の得意分野があります。ただし専門家ほど精通していないことが短所です。平均点以上の知識や経験はありますが、専門性を掘り下げていくとスペシャリストにはかないません。
「色々知っているみたいだが、あなたの専門性は何か?」と質問されたときに、具体的な言葉や数値をもって言い切れないことがオールラウンダーの弱みです。
オールラウンダーが向いている仕事
オールラウンダーはどんな仕事に向いているでしょうか?適性のある仕事を紹介します。
セールスエンジニア
セールスエンジニアはIT業界における職種で、技術的な知識を持つエンジニアと顧客へ販売できる営業の役割を持っています。
セールスエンジニアは知識を顧客に提供してコンサルティングを行い、自社製品を販売し、導入後のサポートを行う仕事です。複数の領域にわたって行う仕事なので、オールラウンダーの特徴を活かせる仕事です。
中小企業の管理系の仕事
中小企業では1人でいくつもの仕事を担当します。その中でも管理系の仕事は複数の領域にわたります。
中小企業の管理部に所属する人が労務・人事・総務・経理の複数の仕事に携わるのはよくあることです。オールラウンダーの特徴を活かせる仕事といえます。
起業家
1人で何役も務めなくてはならない起業家も、オールラウンダーの特徴を活かせます。
株主に雇われて経営者につく場合と違い、自ら事業を起こして営業し、資金繰りも行う起業家は、「1つのことしかできない」人には向いていません。器用に何でもこなす能力があるオールラウンダーでなくては、こなしきれない職業です。
まとめ
ビジネスでは色々な業務ができる人という意味で使われるオールラウンダー。メンバーシップ型雇用を採用してきた日本企業では、オールラウンダーの役割が求められています。
オールラウンダーの特徴には、仕事のポイントを押さえるのが早く、幅広い仕事をそつなくこなせるなどが見られます。