ホームページで役員一覧を見ていると監査役という役職を見ることがあります。監査役はどういう仕事をする人なのでしょうか。取締役との関係も知りたいところです。記事では、監査役はどういう役割を担うのか、設置基準や任期、社内監査役と社外監査役などについて解説します。
監査役とは?
監査役とは、取締役の職務の執行を監査することで、会社が不正や法律違反をしないように見張る人をいいます。
粉飾決算や不正会計、品質偽装、横領、労働基準法違反といった不正・法律違反を会社が行わないように、監査役は取締役の職務を監査します。
監査役は取締役などの役員から独立した存在です。 会社が不正や法律違反をしてしまうと、会社の業績は落ち、株主の不利益となります。そのため、監査役を置いて取締役を監査し会社のコンプライアンスを維持する役割があるのです。
次に、監査役の設置基準や任期について確認しましょう。
監査役の設置基準
監査役は、会社の不正や法律違反を見張る役割を担うので重要な存在です。
ただし法律では、株式会社が監査役を設置することは必ずしも義務ではないとされています。監査役を設置しなくてはならないのは、取締役会を設置している会社および会計監査人設置会社の2つ。
株式を公開している会社は取締役会を置く義務があるので、監査役も設置しなくてはなりません。
監査役を設置しなくて良い条件
取締役会を設置している会社および会計監査人設置会社以外の株式会社は、監査役を設置する義務がありません。その他に監査役を設置しなくて良い条件としては以下があります。
- 取締役会を設置しているが、会計参与を設置している会社株式
- 譲渡制限会社
取締役会を設置しているのに、監査役を設置しなくても良い場合から見ていきましょう。会計参与を置いている会社では、取締役会を設置しても監査役を設置する義務がありません。
会計参与とは、公認会計士や税理士など会計に関する専門家が担い、取締役と共に計算関係書類を作成することが主な役割です。
会計参与が関与すれば計算関係書類の正確性を担保することができますから、中小企業が会計参与を置くことが多いです。なお会計参与になれるのは公認会計士や税理士などの専門家、もしくは監査法人、税理士法人に限られます。
次に株式譲渡制限会社についてです。株式譲渡制限会社は自由に株式を譲渡できない会社です。
株式を譲渡するには会社の承認が必要なので、会社にとってデメリットのある人物に株式は渡りません。株式譲渡制限会社においては監査役を設置する必要がないことになっています。
監査役の任期
監査役にも任期があります。監査役は株主総会において過半数の賛成で選任されて任期は4年間です。
株式を公開していない会社では、定款に定めれば任期を10年まで延ばすことも可能です。
なお株主総会で選任が決まる監査役ですが、監査役会を設置している会社では、株主総会の前に監査役会から監査役の選任議案の同意を得なくてはなりません。
監査役の役割
監査役は取締役の職務執行を監査する役割を担います。監査には業務監査と会計監査の2つがあります。
それぞれの詳細を確認していきましょう。ちなみに、非公開会社の場合は、定款に定めることで監査を会計監査のみに限定することができます。
取締役が不正をしていないか監査する
監査役の役割の1つである業務監査とは取締役が不正をしていないか監査することです。取締役が不正を行ったことが露見し会社の業績が下がると、株主の不利益になります。
社員にとっても、会社の方針が不鮮明で業績が下がれば、年収減に陥ったりエンゲージメントの低下に繋がります。
計算関係書類が正しく処理されているかを監査する
監査役の役割の2つ目は会計監査です。会計監査は計算関係書類が正しく処理されているかを監査することです。取締役が作成した計算関係書類は取締役の成果を表したものなので、そのままの状態では株主の信頼を得られません。
そこで監査役がチェックし、適正に処理されているかを監査するのです。監査役の「お墨付き」を得ることで計算関係書類の信頼性が担保されます。
社内監査役と社外監査役の違い
監査役には社内監査役と社外監査役という2つの種類があります。違いを確認していきます。
社内監査役について
社内監査役は、会社で取締役や社員として働いていた人が就く監査役のことです。社内監査役は同じ会社で働いていた人が監査役になるので、会社の事情をよく知っています。
そのため取締役の行動や意思決定についても問題点を発見しやすいです。また、社内の事情を知っているだけに、社内監査役は問題の真因まで到達しやすいといえます。 一方で、社内監査役は社内の人間なので、取締役に厳しい意見をいえないというリスクもあります。
監査役は役員から独立し、取締役が不正を行っていないかを監査する役割を担うはずですよね。
しかし、取締役と監査役には長年の人間関係があり、当たり障りのない意見しかいえない可能性があります。ですから、社内監査役を選ぶ際には慎重に人選を行う必要があるのです。
社外監査役について
社外監査役は、取締役や社員として働いた経験がなく、社外の人が就く監査役のことです。社内監査役のリスクが社外監査役にはメリットになります。
つまり、社内での人間関係に影響されないため、社外監査役は取締役に厳しい意見をいうことができるのです。社内の事情には疎いものの、偏見に左右されず取締役や計算関係書類の問題を捉えることができます。
一方、社外監査役には、社内の事情に疎いために問題の真因に気づきにくいというリスクがあります。社内監査役と違って勤務時間が短い傾向にあり、監査の時間に多くを費やせません。
監査役になれない人
監査役は誰でもなれるというわけではありません。監査役になれない人を確認していきます。
監査役の欠格事由
監査役の欠格事由は、法人、成年被後見人・被保佐人、会社法に違反した人などです。もし監査役になれない人を株主総会で選任し、既に登記を済ませた場合はどうなるでしょうか。そのときは監査役の抹消登記を行う必要があります。
監査役の兼任禁止
監査役は、取締役の不正を監査することが役割です。そのため取締役と監査役は兼任できないことになっています。例えば子会社の取締役や従業員が親会社の監査役に就くことはできません。
子会社の取締役が監査役に就いたら、親会社の取締役のいいなりになるリスクがあります。公正な監査をするため、法律は監査役の兼任を禁止しています。
監査役を設置するメリット・デメリット
監査役の設置が法律で義務づけられている会社でなくても、監査役を置くことができます。例えば株式を公開していない会社は監査役を置く必要がありません。
法的に監査役を置く必要がない会社において、監査役を設置するメリット・デメリットを確認します。
監査役を設置するメリット
監査役を設置するのは、取締役の不正を監査すること以外にいくつかのメリットがあります。会社経営の経験が浅い経営者が監査役からアドバイスをもらいたい場合です。
監査役になるのは、会計の知識と共に豊富なビジネス経験がある人材をあてることが多いです。 事業が市場から強い需要がある会社でも、経験の浅い経営者では意思決定に迷うことがあります。
非公開会社であっても監査役を置くことで、経営者は監査役から助言をもらい最適な経営判断に活かしていけます。
もう1つのメリットは金融機関から信頼を得られるということ。会社が金融機関から融資してもらうには、きちんと返済できる会社であることが条件です。
そのためには事業が魅力的であり、成長する可能性であることが第一条件。一方で法律もしっかり守れる会社であることをアピールすることも大切です。
監査役が就いていることで、金融機関から信頼できる会社だと思ってもらえるメリットがあります。
監査役を設置するデメリット
監査役を置くことのデメリットは、経営者が監査役の助言に左右されてしまう点です。経験豊富な監査役であっても、監査役は経営者ではありません。経営の意思決定をするのは経営者なので、最終的には自分の思い切りが必要です。
あまり監査役に頼り過ぎてしまうと、助言がないと判断ができない経営者になってしまいます。あくまでも監査役の助言であって、決めるのは経営者だという認識を持っておくことが大切です。
まとめ
監査役の役割や取締役との関わり、社内監査役・社外監査役の意味について確認してきました。監査役を置くことで、コンプライアンスを遵守して会社の業績を維持し、株主を不利益から守れます。監査役は取締役から独立しているため、取締役の不正を監査し、計算関係書類の適正な処理を担保します。