サボタージュとは?発生する原因や他の争議行為との関わりを解説

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サボタージュとは業務を怠けることで、労働者の要求を会社に伝える労働者の争議行為です。「サボる」の語源になった言葉ですが、単に業務を怠けるだけではサボタージュとはいいません。サボタージュの意味や特徴をしっかりと把握しておけば、万が一サボタージュが発生したときにも対応しやすくなります。この記事では、サボタージュの意味や原因・他の争議行為との関わりなどについて解説します。
目次

サボタージュとは?

サボタージュとは、業務を怠けることで、労働者の要求を会社に伝える労働者の争議行為の一つです。

サボタージュには会社の製品や機械を破壊したり、業務命令に反して怠けたりするなど、いくつかの種類があります。

まずはサボタージュの語源や「サボる」との違いを確認しましょう。

サボタージュの語源

サボタージュの語源は、フランス語で木靴を意味する(sabot)からきています。

木靴を履いた労働者が機械を壊し、仕事の能率を下げるといった行為をしたことで、サボタージュが争議行為として名付けられるようになりました。

「サボる」との違い

日本語で「サボる」というと、仕事や学校を怠けるという意味で使われます。

例えば、営業担当者が外回りに行くといっておきながら、カフェでコーヒーを飲んでサボるといいますよね。

サボタージュは争議行為であり、労働者の要求を会社に伝えることを目的とします。

カフェで時間を潰している営業担当者は、自分の欲求にしたがって行動しているだけであり、会社に労働者の意思を要求しているわけではありません。

サボタージュの種類

サボタージュには以下の3つの種類があります。違いを一つずつ見ていきましょう。


・積極的サボタージュ
・消極的サボタージュ
・開口サボタージュ

積極的サボタージュ

積極的サボタージュは、会社の製品や機械を破壊したり、意図的に不良品を出したりするなどして、積極的に妨害する行為をいいます。

製品を製造し会社の売上を生み出すべき社員が製品や機械を破壊するのですから、積極的サボタージュは業績的にも組織風土的にも甚大な損害を会社に与えます。

積極的サボタージュは会社の財産権を侵害するので、法的な正当性は認められていません。

消極的サボタージュ

消極的サボタージュは、会社の指示に反して仕事を怠けて業務効率を下げる行為をいいます。

消極的サボタージュは労働者個人の行為ではなく、労働者が団結して業務効率を下げるもので、日本でも争議行為として認められています。

開口サボタージュ

開口サボタージュは、会社、製品・サービスなどに対する悪口・批判を外部に吹聴することで妨害する行為をいいます。

積極的サボタージュほど直接的な破壊行為はしませんが、悪口を聞いた顧客や取引先は「社員がいっている」ことを信じて製品・サービスを消費しなくなり、業績に悪影響を及ぼします。

積極的サボタージュと同様に法的な正当性は認められていません。

サボタージュはなぜ起きるのか

労働者は、働く上での不満が高まると団結してサボタージュを起こすようになります。

どうしてサボタージュが起きるのか、主な原因を探っていきましょう。

賃金

賃上げのためにサボタージュが行われるときは、成果に見合わない賃金や極端に低い賃金であることが原因です。

「最低賃金ギリギリの賃金で生活もままならない」「長時間労働に見合った賃金がもらえない」などの不満が高まると、賃上げを要求してサボタージュが行われるのです。

労働条件

労働条件のためにサボタージュが行われるときは、残業や休日出勤が多いこと、有給休暇の取得率の低下といった劣悪な労働環境であることが原因です。

残業や休日出勤が多いと心身の疲労が回復せず、心疾患や脳疾患にかかるリスクも増大します。

精神的なストレスは仕事のパフォーマンスにも影響します。労働者自身の心身の健康を取り戻し、快適な労働環境で働くためにサボタージュが行われます。

グローバル企業における理解不足

グローバル企業においては、現地の労働者への思想・文化・制度への理解不足であることが原因でサボタージュが行われることがあります。

日本人との賃金のギャップや年功序列、職能資格制度などが受け入れられず、給与のベースアップや成果主義の人事制度の導入を目指して、サボタージュが行われます。

経営方針

経営方針の変更が原因でサボタージュが行われることがあります。

経営者の交代や会社を取り巻く環境変化をきっかけとして、労働者の痛みを伴う改革が行われると不満が高まりサボタージュが行われます。

あるいは労働者から信頼されていた前任の経営者の経営方針を破壊するような改革に対しても、サボタージュが起こる原因となり得ます。

政治的要因

政治的要因によってサボタージュが行われるときは、業界の不利になる法改正であることがが原因です。

政治的要因の場合、会社に対してというよりは政治に対する労働者の不満の訴えとなりますので、会社をまたいでサボタージュが行われる可能性があります。

サボタージュの免責

争議行為には刑事免責と民事免責があります。正当な争議行為に対しては刑事罰の対象とならず(刑事免責)、損害賠償の対象とならない(民事免責)ということです。

もし争議行為に免責がなければ、労働者は会社に対して争議行為をもって要求を訴えることができなくなります。

ただしサボタージュが免責となるのは消極的サボタージュの場合のみです。

他の争議行為とサボタージュとの関わり

争議行為はサボタージュだけではありません。他の争議行為とサボタージュの関わりはどのようなものかを確認します。

ストライキ

ストライキは労働者が会社に対して要求をするために集団で仕事を放棄することです。同盟罷業とも呼ばれます。

労働者が仕事を放棄すると会社は製品を生産できず事業が成り立たなくなるので、ストライキを通じて労働者の要求を通させようとするのです。

サボタージュは仕事に携わりつつも業務を怠けることなので、ストライキと違い完全に仕事を放棄するわけではないところが違います。

ボイコット

ボイコットは、自社製品・サービスを利用しないことで会社に要求する不買運動をいいます。

不買運動をされることで会社の業績が悪化する可能性があるので、ボイコットを通じて労働者の要求を通させようとするわけです。

サボタージュには不買運動を行う意味はありませんから、ボイコットとは全く違う争議行為です。

ピケッティング

ピケッティングはストライキと関係のある争議行為です。ストライキの効果を低減させるために、労働を継続するスト破りを職場に入れないよう妨害する行為をピケッティングといいます。

ストライキ自体は刑事免責および民事免責の対象となるので、ピケッティングも免責となります。

ピケッティングはストライキの効果を高めるための補助的役割です。ストライキとサボタージュの意味が違うことから、ピケッティングもサボタージュを補助する役割を持たないことになります。

ロックアウト

ロックアウトは会社が労働者を職場から集団的に締め出す行為をいいます。争議行為に対抗する手段としてロックアウトが行われます。

ですから、サボタージュを行う労働者を締め出すためにロックアウトが行われることもあり得ます。

ただしロックアウトが認められるには厳しい法的要件を満たさなくてはなりません。

まとめ

争議行為の1つとしてサボタージュを解説してきました。

サボタージュが起こる原因を確認しましたが、労働者の不満を解消するために会社に要求を通そうとすることから争議行為は発生します。

できれば争議行為になる前に会社と労働者の間で不満を解消していきたいところですね。

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