ワーケーションとは仕事と休暇を融合した働き方のこと。休暇を兼ねて働くことで、従業員のリフレッシュと仕事の効率性向上を期待できます。また、他者と接触しなくて済むワーケーションは、コロナ禍においても注目されています。この記事では、ワーケーションの意味やメリット・デメリット、企業事例を解説します。
ワーケーションとは?
ワーケーションとは仕事と休暇を融合した働き方のこと。ワーク(労働)とバケーション(休暇)を組み合わせた造語です。旅先やリゾートで休暇を取りつつ遠隔で働くのがワーケーションの一般的な働き方です。
ワーケーションが生まれた背景
ワーケーションが生まれた背景には、アメリカの低い有給休暇取得率がありました。例えばエクスペディア・ジャパンの2018年調査によると、19か国中、アメリカの有給休暇取得率はワースト2位でした(最下位は日本)。有給休暇を取得する人が少ない中、ワーケーションによって休暇を兼ねて働くスタイルがアメリカで生まれたのです。
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コロナ禍で注目されるワーケーション
新型コロナウイルスの感染拡大によって、他者との接触は人間の健康をおびやかすリスクとして避けられるようになりました。 ワーケーションとは旅先やリゾートで休暇を取りつつ遠隔で働く新しい働き方。
つまり会社に出勤せずに上司や部下とコミュニケーションを取りながら仕事ができます。リゾートや旅先で他者と接触せずに働けるので、ワーケーションはコロナ禍において注目される働き方なのです。
ワーケーションとテレワークの違い
新型コロナウイルス感染防止のため、他者との接触を避けられるテレワークがビジネスパーソンの間に広まりました。出勤せずに働くという意味でワーケーションとテレワークは同じように見えますが2つの違いがあります。
まずはワーケーションの特徴を見てみましょう。
- 旅先やリゾートから遠隔で働く
- 休暇取得を推進すること
両者の違いの1つは、「ワーケーションは旅先やリゾートから遠隔で働く」という点です。テレワークは自宅やカフェ、コワーキングスペースなどから遠隔で働きますが、ワーケーションが働く場所は旅先やリゾート。非日常的な環境に身を置くことで新しいアイデアを思いついたり、異なる価値観に触れたりする効果が見込めます。
もう1点の違いが「ワーケーションは休暇取得を推進する」ことです。テレワークは労働なので仕事と休暇を切り離して考えなくてはなりません。一方、ワーケーションは休暇を兼ねて働くのでリフレッシュ効果があります。なかなか休めない従業員にも休暇取得を推進することができます。
ワーケーションのメリット
ワーケーションのメリットを2つ確認していきます。「仕事と休暇を融合した働き方」であるワーケーションの特徴を活かしたメリットです。
休暇取得率を高められる
エクスペディア・ジャパンの2018年調査によれば、日本の有給休暇取得率は19か国中最下位で50%の取得率となっています。
有給休暇を容易に取得できない現状、そしてバランスよく有休を取って生産性を向上したいことから、2019年4月より有給休暇取得の義務化が法制化されました。有給休暇取得の義務化により、10日間以上の有休がある従業員は5日以上有休を取る必要があります。
有休の義務化と共に、ワーケーションにより休暇を兼ねて働くスタイルが定着すると、従業員の間に休暇を取っても良いという意識が生まれてきます。義務化される5日間に留まらず、有給休暇取得率が高まる効果が生じます。
ワーケーションは行動経済学でいうナッジ(自発的に人間が望ましい行動を取るための仕掛け)であり、休暇取得率を後押しする仕掛けです。
従業員の健康増進に繋がる
毎月の時間外労働が平均80時間を超えると、健康障害を発症したときに労災として認定されやすくなります。過労死ラインは時間外労働が平均80時間とされ、働き過ぎと健康障害に因果関係が生じやすくなります。
ワーケーションによって休暇を取りやすくなると、従業員は休暇によって心身を休めるので健康増進に繋げられます。時間外労働を削減して効率的な働き方をしようとする意識付けの効果も得られます。
ワーケーションのデメリット
「労働」と「休暇」を両立できるワーケーションですが、当然デメリットもあります。
心身が休まらない
ワーケーションは休暇を兼ねて働くスタイルですが、働いていることには変わりありません。
ワーケーションの過ごし方がテレワークと変わらないと、リゾートにいるのに心身が休まらないことになり得ます。例えば朝から晩までWeb会議の連続であれば、自宅で働いているのと変わりません。
ワーケーションを導入する際には、会社は職場に対して、ワーケーションの休暇取得を推進するという特徴を理解してもらいましょう。
単にオフィスや自宅以外の場所で働くことがワーケーションではないということを、しっかり説明する必要があります。
仕事の効率が悪い
ワーケーションには慣れが必要です。スケジュールの例で考えてみましょう。
例えば午前9時から11時までWeb会議を行い、11時から16時までは休暇を取ります。そして16時から17時30分までデータの集計作業を行いました。すると細切れに仕事をしたり休んだりするので、仕事の効率が悪くなってしまうのです。
「ワーク」だけになってしまう
ワーケーションは仕事と休暇を融合した働き方ですが、上司や職場の理解が得られないと旅先やリゾートで仕事をするだけになってしまいます。
ワーケーションには休暇取得を推進するという特徴があり、旅先で仕事をするだけならテレワークと変わりません。職場に対してワーケーションの特徴を理解してもらう必要があります。
セキュリティ対策が必要
ワーケーションをするにはセキュリティ対策が必要になります。万全のセキュリティ対策を講じるには、セキュリティソフトをインストールするだけでは不十分。
従業員に対する個人情報保護の教育と浸透に手間がかかります。USBメモリの扱いや公共Wi-Fiの使い方などに注意しないと、思わぬ油断で個人情報を漏洩するリスクが出てくるのです。
ワーケーションの企業事例
ワーケーションについて3社の企業事例を見ていきます。
日本航空
2017年、日本航空では休暇取得率向上のためにワーケーションを導入。大企業がワーケーションを導入したのは日本航空が初でした。従業員に周知するため、導入1年目は和歌山県での体験ツアーを実行しました。
2年目の2018年には174名、3年目の2019年には247名の利用があり、ワーケーションの利用者は確実に増えています。
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングス
ユニリーバ・ジャパン・ホールディングスでは、従業員が時間と場所に制約を受けずに働くことを目的にワーケーションを推進。2019年より「地域de WAA」を行い、北海道や山形県、宮崎県などで従業員がワーケーションを活用できるようになりました。
「地域de WAA」を使うと、従業員は宿泊費のサポートやコワーキングスペースの貸与などのサービスを受けることができます。
まとめ
仕事と休暇を融合した新しい働き方であるワーケーション。休暇を兼ねて働くので、従業員の休暇取得率の向上、健康増進を見込むことができます。
一方、ワーケーションについて職場の理解度を高めないと、従業員の心身が休まらない、仕事の効率が悪いなどのデメリットを生むことがあります。
コロナ禍で注目されるワーケーションですが、自社に合っているかどうかをしっかりと検討したいところです。