政府は「働き方改革」の一環として兼業を推進しており、兼業を始める会社員が増えています。
企業が兼業を認めた場合、長時間労働の問題や秘密保持義務にも注意が必要です。
今回は、兼業と副業の違い、兼業の容認するメリット・デメリット、事例などをまとめてご紹介しましょう。
兼業とは
「兼業」とは、本業以外の事業を持ち、時間や曜日によって異なる事業を自営することです。
「兼業」は「ダブルワーク」とも呼ばれることがあり、「自営」と「会社勤め」のように、同時に二つ以上の仕事を掛け持ちしている状態です。
2つの仕事の比率は、同じくらいの労力の場合もあれば、本業、サブに分かれる場合もあり、人によってそれぞれ異なります。
兼業の意味
「兼業」という言葉は法律で厳密に定義されていませんが、一般的には本業以外の事業があり、「掛け持ち」をしていることです。
兼業と副業に違いはあるか?
副業とは、本業以外の仕事で収入を得ることをいい
「兼業」、「サイドビジネス」と意味は同じです。
ただし、副業は本業よりも収入や費やす時間・労力が少なく、あくまで本業のサブ的な仕事です。
副業にはライター業務、投資、ネット販売、短期アルバイトなどが挙げられます。
兼業禁止の会社の方が多い
2018年「働き方改革」の一環として、政府は経済の活性化のために副業・兼業を推進しています。
副業禁止を規定した「モデル就業規定」は「労働者は勤務時間外において、他の会社等の業務に従事することができる」と改定されました。
リクルートキャリアの調査(2018年10月)によれば
兼業・副業を容認している企業は28.8%です。
兼業・副業を禁止している企業は71.2%に上り、大企業の約80%は禁止しているのが現状です。
兼業は公務員でも可能
多くの公務員の方は、公務員は副業できないだろうと考えていますが、公務員でもできる副業はあります。
基本的に、公務員は「信用を失うこと、業務に支障をきたすこと」に気をつければ、投資信託、不動産賃貸業、株式やFXなどの投資も自由です。
ただし、営利企業への就職と自営は禁止されているため、内閣総理大臣及び、管轄部門の長の許可が必要です。(国家公務員法103条、104条、地方公務員法38条)
会社が兼業(副業)を許可するメリット・デメリット
ここからは、会社が兼業(副業)を許可するメリットとデメリットを見ていきましょう。
メリット
▼企業側のメリット
スキルや知識、経験を得て従業員の質が高まる
情報や人脈が事業機会の拡大に繋がる
従業員の定着率が向上する
やりがいを持ち主体的に働くようになる
多様な働き方を認めることで、人材流出を防ぎ、優秀な人材の確保や離職率の低下に繋がるのがメリットです。
従業員が副業から身につけた知識や経験により新たな創出も期待されています。
デメリット
▼企業側のデメリット
本来の労働時間の把握ができない(本業の勤務時間中に副業の作業をする人)
従業員の職務専念の意識がなくなる
労働時間の管理が難しくなる
機密情報流出のリスク
副業を解禁した際、労働者のために労働時間を制限していても、副業により長時間労働となってしまい、過労するリスクがあります。
その他にも、自社の従業員のみに共有する重要機密情報が競合他社に流出されてしまう情報漏洩のリスクにも注意が必要です。
兼業(副業)を許可している会社の例
兼業・副業を許可する企業が増えていく中で、上手に取り入れている企業例を見ていきましょう。
1. ガイアックス
株式会社ガイアックスは「自分の人生は自分で決める」という考えを持っている自由度の高い取り組みが評価されています。
競合ではない仕事ならば、報告するだけで副業することができ、自己の裁量で働くことができます。
2. ランサーズ
ランサーズ株式会社は社会全体の働き方改革を推進しており、副業・兼業を取り入れたい企業への支援に取り組んでいます。
3. 新生銀行
株式会社新生銀行は「ダイバーシティー推進室」を設置し、多様な働き方推進を推奨しています。
「副業・兼業」の解禁、社員が個人事業や業務の受託をする「個人事業主型」、他社で雇用されて働く「他社雇用型」などを認めています。
社外での経験が本業のイノベーション創造に役立つことを期待しています。
4. ユニチャーム
ユニ・チャーム株式会社は、社員一人ひとりが、仕事を通じて成長し、働きがいを実感できる会社を目指しています。
本業とは異なる環境で新たなスキルや専門性を身につけたり、能力を発揮する機会、人脈を広げる機会を与える職場環境作りに取り組んでいます。
5. ミクシィ
株式会社ミクシィは、2009年から上長の承諾がもらえれば自由に副業しても良い副業制度を設けています。
複数の副業をしている社員、趣味から結果的に副業へ繋がった社員もいるようです。
兼業・副業に関するガイドラインについて
厚生労働省が発表した「副業・兼業の促進に関するガイドライン」には就業規則が公表されてます。
企業が兼業・副業を認める場合の注意点
企業側が最も気を付けるべきことは、秘密保持義務、競業避止義務の遵守です。
労働者に副業を認めた場合、会社の業務に関する秘密が漏洩するリスクがあります。
会社のノウハウや情報を利用して、ライバル他社と仕事をし始める従業員が出てくる可能性も…。
労働者に副業を認める際には、「秘密情報を漏洩しない」、「競業する副業は行わない」と誓約する書面を提出させる対策も必要です。
そして、副業をする労働者は、副業先の労働時間について申告させて、正確な労働時間を把握する必要があります。
労働者が過労にならないように、労働時間を自己申告制により労働時間を把握して、長時間労働を防ぐことが大切です。
労働者が注意するポイント
副業はあくまで本業あってのサブ的な仕事であり、
副業を行った結果、本業に悪影響を及ぼした場合は
全てが中途半端となってしまいます。
副業に充てる時間や労力を見極めて、ワークライフバランスを保つ意識を心がけることが大切です。
兼業する場合の社会保険について
事業主は、従業員が兼業(副業)する・しないに関わらず、一人でも従業員を雇用していれば、社会保険(健康保険・厚生年金保険)に加入する必要があります。
複数の事業所で一定の時間以上勤務する場合、「健康保険・厚生年金保険被保険者所属選択・二以上事業所勤務届」を提出します。
年金事務所はそれぞれの勤務先の給与を合算し、会社毎に支払う社会保険料を按分して決定し、通知書を会社に郵送する形です。
まとめ
「働き方改革」による副業・兼業を認める動きも徐々に広がっている中、未だに多くの企業では認めていないというのが現状となっています。
副業をしながら従業員がキャリアアップを目指すといったポジティブな考え方もある一方で、情報漏洩や労働時間の管理など、課題も多いのが一因と考えられます。
メリットとデメリットも押さえた上で副業・兼業の導入を検討していきましょう。