リカレント教育とは?注目される理由と企業の取り組み事例を紹介

人生100年時代の到来によって注目され始めた「リカレント教育」。

リカレント教育とは、生涯を通じて学びと就労のサイクルを繰り返す制度のことで、海外諸国ではすでに一般的な価値観として認知されています。

この記事では、リカレント教育の特徴や、注目される理由、企業が使える補助金の種類、リカレント教育の取り組み事例について解説します。

目次

リカレント教育とは

エンパワーメントのメリット

リカレント教育とは、生涯に渡って学習と就労のサイクルを繰り返していく仕組みのことです。

社会人になって一度会社に就職したあとでも、新しいスキルの習得や将来のキャリア形成を目的とするなら、再び教育機関に戻って学び直すことができる制度です。

休職や転職など、人生の一部分を切り取った短期的なライフスタイルの変化ではなく、人生を通して学習期間と就労期間を交互に繰り返すライフスタイルを意味しています。

リカレント(recurrent)という単語には、再発・再帰・循環・繰り返しといった意味があり、「学習」→「就労」→「再学習」…というように、常に教育と就労のサイクルが循環していくことを表しています。

リカレント教育の対象者

リカレント教育の対象者となるのは、高校・専門学校・大学・大学院などを卒業し、実際に働いた経験がある社会人です。

現役の社会人はもちろんのこと、現在離職中の人や、すでに教育機関に編入している人も対象に含まれます。

一度でも就労経験があることが条件なので、対象範囲はかなり広く設定されています。

リカレント教育の対象となる人

  • 結婚・出産・介護などで一度会社を辞めた人
  • 定年退職を迎えたあとに再就職を考えている人
  • 地方移住をキッカケに全く新しい仕事にチャレンジする人
  • キャリアアップを目的に別の業種に転職したい人

リカレント教育と生涯学習の違い

リカレント教育と似た意味合いの言葉で「生涯学習」というものがあります。

どちらも学習を意味する言葉なので思わず混同しがちですが、目指すべき目的が大きく異なります。

リカレント教育が、将来的に仕事に活かせる知識・スキルの習得を目指すのに対して、生涯学習は、人生をよりよくするために必要な知識・スキルの習得を目指すという目的があります。

文部科学省が定義する生涯学習の一説にも、「家庭・社会・文化・スポーツ・イベント・趣味・ボランティアなど、さまざまな領域の知識を継続的に学ぶことで、人生の充実度を高める取り組みである」と明記されています。

引用:文部科学省:生涯学習の実現

日本と外国のリカレント教育の違い

日本と外国では、キャリアにおける考え方が根本から異なります。

日本社会は古くから終身雇用制度が根付いているため、同じ会社で長期間働くことが常識になっています。人材の流動性が低いため、一度学生に戻ってしまうと再就職が難しいという傾向があります。

それに対して外国では、フルタイムの学習期間と就労期間を繰り返すライフスタイルを推奨しています。生涯を通じて多角的なスキルや技術を学ぶことに積極的な人が多く、人材の流動性が非常に高くなっているのが特徴です。

教育機関の受け入れ体制や、企業の補助金・福利厚生が充実しており、社会全体でリカレント教育を推進する取り組みが活発になっています。

外国においてリカレント教育は一般的な概念ですが、日本では「キャリアを捨てて一時的に学習する」「新しいスキルを学んで再就職する」…といった考え方があまり普及していないため、働きながら新しいスキルを身に付けることもリカレント教育に含まれます。

ジョブくん
リカレント教育の制度が根付いている海外諸国とは違い、日本では広い意味で使われています。

日本におけるリカレント教育の普及率

日本国内ではあまり浸透していないリカレント教育ですが、近年になって重要性が認知されつつあります。

しかしながら、企業と大学側の連携不足や、労働の中断による企業の人材不足など様々な問題があり、普及率はそれほど高くないのが現状です。

ジョブくん
採用担当者の視点でも、「新卒からじっくり育てる」or「中途で即戦力を採用する」という二つの選択肢に終始していることが多く、再教育を受けた社会人を受け入れるという選択肢がない企業が多いです。

リカレント教育が抱える問題点

カフェテリアプランとは?

リカレント教育の実現には、様々な課題をクリアする必要があります。リカレント教育が抱える課題は次のとおりです。

長期雇用制度との相性

日本は長期雇用制度が一般的なため、リカレント教育を取り入れにくくなっています。

長期雇用制度では、基本的に社内でスキルアップします。リカレント教育に基づき、社外で学ばせることになれば、社内での教育に割いた予算や手間が無駄になるでしょう。

また、優秀な人材を外部に漏らしてはいけない風潮があるため、労働者としてもリカレント教育を受けづらくなっています。

再雇用の難しさ

日本の採用市場では、空白期間のある人物の雇用に対して慎重な姿勢をとる企業が多いです。

リカレント教育がまだまだ受け入れられていない現在では、仮にリカレント教育でスキルを身に付けても再就職が難しいのです。

教育カリキュラムの不足

リカレント教育を導入している大学でも、まだまだ教育カリキュラムが少ないのが現状。学べることが限られているため制度導入のメリットがあまりなく、なかなか拡充されにくいという課題があります。

企業側が負担するコストの増加

自社への再就職を前提とする場合、補助金を支払う方法もあります。労働者としては、リカレント教育を受けやすくなり、スキルアップが促されます。

しかし、企業としてはコストが増加するため、安易に導入できません。リカレント教育による効果がまだまだわかっていない段階では、前向きにリカレント教育を取り入れる企業は少ないのです。

リカレント教育が注目されている理由

リフレッシュ休暇を取得するときに注意すべきポイント

リカレント教育を導入するのには、どのようなメリットがあるのでしょうか。導入を検討するために、メリットを確認しておきましょう。

働き方の多様化に対応

再び教育機関で学習することで、個人のキャリアアップに繋がります。様々な業界への再就職を視野に入れられるようになるため、働き方の多様化に対応できます。

教育環境の充実

リカレント教育を推進すると、教育機関で学習後に企業に再就職してもらい、大きな成果を挙げさせる方法が可能となります。教育環境が充実することで、新入社員でも早い段階でスキルアップできます。

企業の労働者不足を改善

リカレント教育が推進されれば、多様なスキルを持つ人材が増えるため、様々な企業の労働者不足が改善される可能性があります。

海外企業との競争力が高まる

多様で高いスキルを持つ人材が増えることで、海外企業との競争力が高まります。その結果、リカレント教育の重要さが広く認知され、さらに高いスキルを持つ労働者が増えるとも考えられるでしょう。

補助金給付の対象となる条件

リカレント教育では、教育給付金制度が適用されます。教育給付金制度には、一般教育訓練給付金と専門実践教育訓練給付金があります。

どちらも、雇用保険の被保険者または被保険者であった人が厚生労働大臣指定の講座を受講及び修了した際に、受講料や教材費などの一部が給付される制度です。

教育給付金制度の対象となる条件は次のとおりです。

在職中で雇用保険の被保険者

受講開始日の時点で、雇用保険への加入から通算3年が経過している人が対象。前職を退職してから1年以内に次の雇用先で雇用保険に加入している場合は、前職での被保険者期間も通算する。

退職済みで雇用保険の被保険者だった人

離職前に前項の条件を満たしており、受講開始日が退職から1年以内の人が対象になる。

リカレント教育を取り入れている大学

日本では早くもリカレント教育を取り入れている大学が存在します。リカレント教育に興味がある人は、下記で紹介する大学をチェックしておきましょう。

日本女子大学

2007年度に文部科学省が行った「社会人の学び直しニーズ対応教育事業委託」に採用されました。

2010年には、日本女子大学が独自でリカレント教育に基づくカリキュラムを提供しています。特に、女性のキャリアアップに力を入れており、外国語や専門的な資格の取得など様々なカリキュラムを受けられます。

明治大学

歴史ある明治大学は、生涯学び続けるための学び舎として、明治大学リバティアカデミーを導入しています。

複数のキャンパスで数多くのカリキュラムを提供していることが特徴で、外国語や専門的な資格の他、グローバルな知識が身につく講座などを受講できます。

様々なカリキュラムが提供されているため、自分の可能性を広げることが可能です。

兵庫大学

兵庫大学は、主に子供や高齢者などに関わる人達に対するリカレント教育に基づくセミナーを開講しています。

例年3月には、学校関係者を対象とした心と身体の健康課題に関するセミナーを開講し、スキルアップを促しています。

また、現場を離れた保育士のスムーズな再就職をサポートするために、職場復帰研修を行っていることも特徴です。

リカレント教育向けのサービス

リカレント教育の実現に向けて、学習と再就職に繋がるサービスを提供する民間企業があります。

「ベネッセi-キャリア」では、大学と連携することで、仕事で必要な能力を伸ばし、スムーズに再就職できるようサポートしてくれるサービスを提供しています。

また、リクルートマネジメントソリューションズでは、新社会人から中高年社会人までを対象に、スキルアップや組織の活性化などのマネジメントサポートを行っています。

これらの民間企業を利用することで、リカレント教育を導入しやすくなるでしょう。

リカレント教育で新しい働き方を見つけよう

pm理論のまとめ

リカレント教育は、再就職を前提とし、教育機関で再学習するシステムです。

成功すれば、様々なスキルが身につき、多様な働き方を実現できます。企業にも労働者にもメリットが大きいシステムと言えるでしょう。

ただし、リカレント教育の導入には様々な課題が残されています。文部科学省では、リカレント教育の拡充に向けて施策が進められているため、今後リカレント教育を導入する企業が増加すると考えられるでしょう。

よかったらシェアしてね!
目次