近年「ブラック企業」や「働き方改革」という言葉を耳にする機会が多くなりました。従業員が心身ともに健康な状態で仕事に取り組むためには、残業を少なくすることが大切です。
そこで導入を検討したいのが「ノー残業デー」です。今回はノー残業デーの意味や導入するメリット、問題点などについて解説します。
ノー残業デーってどういう制度?
「ノー残業デー」とは、社員に残業をさせずに定時退社することを推奨する取り組みのことです。
企業によって、そのルールは異なりますが、週に1日程度ノー残業デーとして、定時で仕事を切り上げるように社員に促します。
ちなみに、一般的に週の真ん中となる水曜日をノー残業デーにしている企業が多いようです。
取り組みが生まれた背景と目的
ノー残業デーは、1970年代の高度経済成長期を背景に生まれたという説があります。
当時の各企業は、日本の経済発展を目指して日々仕事に取り組み続けている状態で、残業も少なくありませんでした。そういった残業のおかげもあって日本経済は発展したのですが、
その残業が徐々に社会問題へと発展。残業を少なくして労働者を守るために施策の一環として、ノー残業デーを行うようになったのです。
その後、バブル経済を過ぎた頃に長時間労働や過労死といった問題に注目が集まるようになり、働き方を見直すための方法として注目されたのがノー残業デーでした。
そんなノー残業デーの目的は大きく分けて以下の2つです。
- 社員のオフの時間の充実を目指す
- 仕事に対する取り組み方を見直す
一つ目に関しては、いつもなら残業している時間を家族や恋人と過ごす時間にする、趣味に取り組んでみるといった仕事以外の部分の充実を目指すというもの。オフの時間が充実することで、リフレッシュでき翌日の仕事の活力を養うことができます。
二つ目に関しては、ノー残業デーは終業時間が先に決められているため、いかにその時間までに仕事を終えるかということを社員は考えなければいけません。そうすることによって、仕事の無駄を削除し、業務をより効率的に進めようとすることが期待できます。
その結果、残業をしたのと同じくらい、もしくはそれ以上の業務量を定時内でこなせるようになる可能性があります。
施行日に水曜日が選ばれる理由
ノー残業デーの施行日は、法律によって定められているものではありません。企業各自が行うものなので、実施している曜日もバラバラです。
一番多いとされているのが水曜日の実施です。これは、水曜日が週の真ん中でキリがいいというのと、官公庁などではノー残業デーを水曜日に設定していることが関係あるとされています。
社員に人気の曜日は?
ノー残業デーを行う曜日は何曜日がいいか、ということを質問したアンケートでは、最も人気だったのは金曜日でした。ついで、水曜日、月曜日と続きます。
金曜日を希望する理由としては…
- 金曜日が一週間の最後で疲れが溜まっているから
- 予定が入りやすいから
- 土日休みで、早く帰ると自分の時間が増える
といった意見が見られました。
次に人気の水曜日に関しては、
- 週の真ん中にリフレッシュできるから
- 疲れやすい日に休めるから
といった意見が多く見られました。
ノー残業デーが職場にもたらす効果とは?
実際にノー残業デーを導入するとどんな効果が得られるのでしょうか。ノー残業デーの効果について紹介します。
ワークライフバランスが充実する
これは先ほども触れているように、仕事のないオフの時間を確保できるため、オンとオフのメリハリ、つまりワークライフバランスが充実するようになります。
仕事を毎日こなすだけの人生はあまり楽しいものではありませんが、だからと言って、仕事がなくなってしまうと意外とつまらなくも感じてしまいます。
この2つのバランスを取るためにはしっかりと働くのと同時に、しっかりとオフの時間を満喫することが大切です。
業務時間の効率化
ノー残業デーは、当然ですが残業ができません。
例えばその日のうちに終わらせなければいけない仕事があったとすると、社員はその仕事が「どのようにすれば時間内に終えることができるか」ということを考えるようになります。
業務が効率化されるかどうかは本人の努力次第ですが、結果的に、従来よりも短時間で効率よく業務を行うことができるようになる可能性はあります。
モチベーションを高める
残業を好き好んで行なっているという人はあまり多くないと考えられます。ほとんどの人は、早く仕事を終えて帰宅したいもの。
ノー残業デーは、定時が来たらすぐに仕事を切り上げて帰宅することができるため、「今日は早く帰れるんだ!」と、社員のモチベーションアップにつながります。
人件費コストの軽減
残業が発生すると、会社は残業手当を支払うことになります。仕事は進むかもしれませんが、人件費もかかってしまいます。
ノー残業デーで残業時間が少なるなると、残業手当も発生せず人件費の削減につなげることができます。また、残業手当をもらうために残業することが常態化している社員にも、ノー残業デーは効果的です。
ノー残業デーの問題点
多くの効果を持つノー残業デーですが、その一方で問題点もあります。どういったものなのか確認していきましょう。
時間内に仕事が終わらない
残業をしないことはいいことですが、強制的に定時で上がらせてしまうと、中には定時までに仕事が終わらないという人も出てきます。
社員の抱える業務量を考慮しなければかえって負担をかけることになる恐れがあります。
ほかの曜日の残業が増える
仕事が残っているにも関わらず定時で上がってしまうと、他の曜日にそのしわ寄せが出てきます。
ノー残業デーはあるものの、残業時間自体は制度の導入前後で変わりない、となる可能性もゼロではありません。
定時で上がらせることもいいことですが、企業として社員の業務量を調整しなければ、座いつまでたっても残業が減ることはないでしょう。
取引先との連絡やアポイントを入れづらい
例えば、海外の企業との連絡を取る場合、時差の都合で定時以降に仕事を行うケースもあります。
また、国内の会社であっても、定時以降に連絡が入ることもあるため、ノー残業デーが導入されると、取引先との連絡が取りにくくなってしまいます。
あまり意味がないという声が多数
ノー残業デーは、社員のプライベートの充実や業務効率化を図ることができるため、一見すると大きな効果が得られそうに思えるかもしれません。
しかし、実際には残業時間が他の曜日に分散されているだけで、取引先との連絡が滞る可能性があるなど、あまり意味がない、と考えている人も少なくありません。
ノー残業デーの背景には残業時間を減らすという狙いがあるため、どうすれば残業を減らせるのかといった点について考えなければ、ノー残業デーの効果を実感するのは難しいと言えます。
ノー残業デーを定着させる方法
最後にノー残業デーを導入し、社内に定着させるためのポイントについて紹介します。
上長が定期的にアナウンスする
会社がノー残業デーの制度を取り入れたとしても、社員がその存在を知らなければ意味がありません。
そのため、上長などがノー残業デー当日の朝礼などで「今日はノー残業デーなので早く帰るようにしましょう」といったアナウンスを行うことで社員も覚えておくことができます。
ポスターを目立つ場所に貼り付ける
制度の周知徹底を目的としたポスターなどがあれば、社員の目に入りやすい場所に貼るようにしましょう。
例えば執務室の出入り口に貼る、エレベーターの中に貼る、トイレに貼る、など社員がよく利用する場所に貼ることで、何度も目にすることになるため、制度を定着させやすくなります。
強制的に業務が終わる仕組みづくり
定時が来たとしても、仕事を続けることができる環境にあれば、そのまま残業をする人が出てしまいます。
ノー残業デーに設定した日は、「定時が来ると自動でオフィスの電気が消える」などの強制的に仕事が終わるような仕組みを作ることで、物理的に残業ができなくなります。
ノー残業デーで業務効率化を図る
今回は、ノー残業デーについて、その概要から主に実施されている曜日、制度が生まれた背景、効果・問題点などについて紹介しました。
残業をしないことは会社としても社員としても望ましいことですが、ノー残業デーを導入した結果、それ以外の日に残業が増えてしまっては意味がありません。
制度の導入と同時に社員の業務量を見直すなど残業自体が発生しない仕組みづくりにも取り組むようにしましょう。