準委任契約とは?意味や請負契約との違い・メリット・注意点を解説

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準委任契約とは、業務において一定の事務処理を遂行し報酬を支払う契約です。仕事が完成することを約束する契約ではなく、業務を遂行することによって報酬をもらえる契約です。準委任契約の意味・準委任契約と請負契約との違い・メリット・注意点について解説します。
目次

準委任契約とは?

準委任契約の意味とは、事務処理遂行に対して報酬を支払う契約ということです。準委任契約については民法656条に規定されています。

準委任契約は事務処理遂行に報酬を支払う契約

準委任契約について具体例を用いて解説します。準委任契約は事務処理遂行に報酬を支払う契約のこと。つまり業務を遂行することで報酬をもらえる契約を意味します。準委任契約とは別に委任契約という契約もありますが、委任契約は業務が法律行為である時の契約です。準委任契約における業務は法律行為以外の業務をいうのです。

準委任契約の業務のイメージを説明しましょう。準委任契約における業務の受注者が行うのは、発注者の業務を手伝ってあげることです。ですから、仕事を完成させる義務を負わないのですね。

例えば、ITシステムを開発している企業がフリーランスのエンジニアと準委任契約を締結したとしましょう。ITシステム開発を主に担当するのは企業であって、開発業務を手伝うのが準委任契約を結んだエンジニアということになります。ITシステム開発は法律行為ではありませんから、準委任契約といえます。準委任契約の「事務処理遂行に報酬を支払う契約」の業務はこのようなイメージです。

請負契約は成果に報酬を支払う契約

業務の成果に対して報酬を支払う契約を請負契約といいます。請負契約には業務の成果まで求められる点が準委任契約と異なる点です。準委任契約と請負契約との違いについて、事項で詳しく解説していきます。

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準委任契約と請負契約との違い

準委任契約と請負契約との違いについて、以下の5つのポイントに分けて解説します。

・報酬請求権による違い
・善管注意義務による違い
・瑕疵担保責任による違い
・解除による違い
・再委託による違い
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報酬請求権による違い

準委任契約と請負契約における報酬請求権による違いは次の通りになっています。

・準委任契約は事務処理行為が適切になされていれば報酬がもらえる
・請負契約は事務処理行為の内容を問わず、業務が完成すれば報酬がもらえる

例えば準委任契約によって電話営業を行うことを契約した場合、業務の受注者には決められた期間の中で電話営業を行うことで報酬請求権が発生します。一方、請負契約においては、電話営業を遂行するだけでなく1日に電話営業を100本行うとか、1か月間、電話営業を行うことによって3件の受注を得るといった成果(業務の完成)を果たすことによって報酬請求権が発生するのです。業務の完成がなくても報酬がもらえるのが準委任契約なのです。

善管注意義務による違い

準委任契約と請負契約における善管注意義務による違いは次の通りになっています。

・準委任契約は善管注意義務を負う
・請負契約は善管注意義務を負わない

準委任契約は善管注意義務を負います。準委任契約の受注者は、事務処理行為中に、欠陥やミスがないように注意することが求められているということです。

瑕疵担保責任による違い

準委任契約と請負契約における瑕疵担保責任による違いは次の通りになっています。

・準委任契約は瑕疵担保責任を負わない
・請負契約は瑕疵担保責任を負う

例えば、ITシステム開発を請け負っていた受注者がシステムを納品しました。納品後にシステムに欠陥が見つかった場合、請負契約を締結した受注者は欠陥を正常な状態に戻さなくてはならなかったり損害賠償したりする責任があります。これを瑕疵担保責任といいます。瑕疵担保責任がある受注者は、瑕疵の程度によって契約を解除されてしまうこともあります。

一方で、準委任契約の受注者には、ITシステム開発を手伝っている時に、欠陥やミスがないように注意する義務(善管注意義務)はありますが、納品したシステムに欠陥が見つかったからといって欠陥を正常な状態に戻さなくてはならない義務は負わないのですね。

解除による違い

準委任契約と請負契約における解除による違いは次の通りになっています。

・準委任契約はいつでも契約を解除できる
・請負契約は、発注者は受注者に損害賠償することで契約を解除できる

準委任契約は、事務処理行為に対して報酬が発生する契約なので、業務が不要になれば解約することができるのです。あるいは、受注者についてもいつでも契約を解除することが可能。反対に請負契約においては、発注者が契約を途中解約する時には損害賠償を受注者に支払わないと契約を解除できないという違いがあります。請負契約の中身を見れば、自由に契約できない仕組みになっている理由が分かりますね。

注意点として、準委任契約であっても、契約解除にあたって損害賠償を契約に盛り込むことはできます。

再委託による違い

準委任契約と請負契約における再委託による違いは次の通りになっています。

・準委任契約では第三者に業務を委託できない
・請負契約では第三者に業務を委託できる

準委任契約は、発注者が受注者に業務を遂行して欲しいと思っています。電話営業でいえば、営業パーソンとしての資質がある人に発注したのに、その人が第三者に業務を委託したら発注者は損害を被る可能性がありますね。第三者の資質を発注者は知らないのですから。そのため、準委任契約では第三者に業務を委託することは認められていません。

請負契約では第三者に業務を委託することができます(再委託が可能)。請負契約では成果物を納品してもらえれば良いという考えに基づいているため、再委託は可能なのです。ただ、準委任契約においても、契約書に再委託可能という文言が盛り込まれていれば第三者に業務を委託することはできます。

企業が準委任契約を行うメリット

準委任契約についてイメージはつかめたのではないかと思います。次に、企業が準委任契約を行うメリットを2点、紹介していきます。

・信頼した相手に仕事を遂行してもらえる
・適時に契約を解除することができる

信頼した相手に仕事を遂行してもらえる

準委任契約は再委託ができませんから、企業が「この人にお願いしたい」という人材に業務を遂行してもらえます。つまり信頼した相手に仕事を遂行してもらえるというメリットがあります。

例えば、Webメディアを運営している企業がメディアのディレクターと準委任契約を結んだとしましょう。ディレクターは「記事のライターの人選」「記事の納品」「記事のキーワードの選定」等、多様な業務を担います。

企業はXさんの資質を見て、採用を決め、準委任契約を結びました。企業はXさんとの間で準委任契約を結んでいますから、Xさんが友人のYさんに「ディレクターの仕事を代わりにやって」と依頼することができません。準委任契約には、Xさんという、信頼した相手に仕事を遂行してもらえるというメリットがある訳ですね。

適時に契約を解除することができる

準委任契約は適時に契約を解除することができます。契約を解除するのにも損害賠償は発生しません(契約書に損害賠償は発生しないと記載されていることが条件)から、業務がなければ企業は契約を解除できるというメリットがあります。

企業が準委任契約を行う時の注意点

最後に、企業が準委任契約を行う時の注意点について解説しましょう。

期待した成果が出なくても費用が発生する

準委任契約は、事務処理行為に対して報酬が発生する契約です。従って、成果の有無にかかわらず受注者に報酬を支払わなくてはなりません。期待した成果が出なくても費用が発生するという注意点があります。

企業は、準委任契約を結んで業務を支援して欲しいと思った時は、業務内容が準委任契約にふさわしいかどうかを確認する必要があります。成果が出なければ受注者に業務を依頼するべきではなかった、ということがないように事前に業務内容と成果について確認しておきましょう。

まとめ

準委任契約は、法律行為以外の業務について、事務処理行為を委託して報酬を支払う契約形態をいいます。準委任契約と似た契約に請負契約がありますが、記事では準委任契約と請負契約との相違点について解説しています。また、準委任契約を締結するにあたってのメリットと注意点についても説明しましたので、参考にして下さい。

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