退職金とは?制度の種類や導入・廃止する際のポイント

大卒の人が定年退職まで会社に勤めてあげたとして平均で約2,300万円の退職金がもらえます。退職金はマイホームなどのローン返済や老後のための定期預金、株式投資により運用などの使い道があり、老後の生活にとっては必要なものとなっています。

退職金は就職活動や転職活動の時に会社を選ぶ1つの指標となることもあります。

退職金が多くもらえる会社や全くもらえないが給料として還元している会社などがあり、実際に退職金がもらえるのかもらえないのかが、重要になってきます。

もちろん企業側としても昨今の時代に退職金制度を考えなければなりません。そこで今回は退職金について制度や相場などを詳しく解説していきます。

目次

退職金制度とは

退職金制度とは
退職金制度は退職金や退職手当と呼ばれる、企業を退職した従業員に対して支払われる報酬となります。定年退職をした場合だけではなく、退職金の支給条件を満たしていれば定年まで勤めてなくてももらうことができます。ちなみに対象金制度には大きく分けると、退職一時金制度と呼ばれる退職時にまとめて退職金が支払われる制度と、退職年金制度とよばれる一定期間にわたって退職金が支給される、2つの種類があります。

退職金と退職共済金の違い

退職金は通常会社から直接支払われますが、退職共済金は会社が加入している共済から支払われます。退職金は会社が倒産すると当然もらうことが出来ませんが、退職共済金であれば会社が倒産したとしても、共済から退職金が支払われるのでもらうことが出来るのです。

中小企業の場合は従業員数が少ないため、退職金を集めることが難しい場合があります。そこで中小企業退職金共済制度に加入することで、独立行政法人と契約を結び、従業員が少ない中小企業でも退職金を支払うことができることが退職共済金のメリットでもあるのです。

退職金制度ありかどうかは会社によっても異なる

実はこの退職金制度、すべての会社でもらえるわけではないのです。退職金制度は法律で定められている制度ではないので、退職金制度を儲けなくても違反とはなりません。そのため、退職金制度があるのか無いのかは、会社によって異なるのです。

退職金制度なしの会社は多い?少ない?

それでは退職金制度がない会社は日本全体でどのくらいなのでしょうか。
厚生労働省が毎年就労条件総合調査(※)をしており、最新の平成30年度の調査報告では退職金制度がある企業の割合は約80%となっています。日本では8割の会社で退職金が支給されているのかと思うかもしれませんが、退職金制度は法律で定められているわけではないので、退職金制度の内容に差があったり、実際に支払われているかは80%を下回る可能性があります。
(※)厚生労働省による平成30年就労条件総合調査

退職金制度の導入と廃止

退職金制度の導入と廃止
退職金制度は法律で定められているわけではないので、支払いの義務がありません。退職金を支払うかは、会社の考えで決めることが出来るのです。
最近では働き方改革が進む中、退職金の導入や廃止について様々な方法をとる会社が増えてきています。社員の会社への貢献度や功績などを退職金に反映させたり、ポイント制の退職金制度などを取り入れることで、社員のやる気や頑張りを上げるために活用している会社もあるようです。

退職金制度を導入する際のポイント

退職金制度を導入する際は、退職金を集めると会社の資金となる点です。
退職金制度で集めた資金は、会社としては社員に退職金が支払えるのであれば、自由にその資金を使っても問題がありません。集めた退職金を運用したり、会社の急な出費に充てることもできます。しかし、会社の資金となるので、法人税上の対象となり税金を徴収されてしまうので気を付けなければなりません。
会社員数が少ない中小企業の場合は、退職金を集めたとしても最終的に支払うことが難しいかもしれません。そのため、中小企業退職金共済制度などの外部での運用支払いを検討することも必要となります。

退職金制度を導入する際に助成金は利用できるか

職場定着支援助成金という従業員の離職率を下げる仕組みを作った企業に対して支払われる助成金があります。助成金は仕組みを作ったことに対してと、実際に離職率を退職金制度で下げることが出来た場合ももらうことが出来るのです。
他に市町村によって中小企業退職金共済掛金補助金を設けているので、そこでも助成金を利用することが可能です。金額は各市町村によって違いがあるので注意が必要です。

退職金制度を廃止する際のポイント

会社の経営状態などにより退職金制度を廃止しなければならないこともあるかと思います。
退職金制度を廃止するということは、従業員にとって不利益となる場合があります。そういった不利益となる場合は、廃止する必要性や代替案を提示するなど詳しく説明しなければなりません。

退職金制度の種類

退職金制度の種類
退職金制度には大きく分けて、退職一時金制度と退職年金制度があると紹介しました。さらに詳細に分けると以下のような、退職金の種類があります。

退職一時金制度

退職一時金制度は、退職時にまとめて退職金が支払わられる制度です。
基本的には定年時となりますが、途中退職の場合も支払い条件を満たしていればもらうことが出来ます。

厚生年金基金制度

厚生年金基金制度は、会社の退職金を厚生年金基金に運用管理給付をお願いする制度です。公的年金ではなく私的年金なのですが、厚生年金基金では厚生年金の一部を代行し、会社が独自に上乗せして給付するのです。しかし、法改正により平成26年4月1日以降、厚生年金基金の設立は認められていません。

確定拠出型年金制度

確定拠出型年金は個人型と企業型があり、企業型の場合は退職金制度として加入をすることとなります。会社が掛金を積み立てして、従業員が運用する形となります。そして原則60歳以降の年金として受け取ることが出来るのです。自分で運用することとなるので、運用商品を選ぶこととなり、結果次第では受取額が変わってきます。

確定給付企業年金

確定給付企業年金は、もらえる給付金額があらかじめ決められている制度となります。会社が運用の責任を負うので、不足分が出た場合は会社が穴埋めをしてくれます。集めた資金の運用は、契約先の会社によって異なります。

中小企業退職金共済制度

会社が独立行政法人勤労者退職金共済機構と共済契約を結び、掛け金を支払います。そして従業員が退職となると直接従業員のもとへ、全部か年金の形で受け取ることが出来ます。
特に退職金を会社側で準備することが難しい場合に利用されます。
新規加入者が出た場合に助成金がもらえたり、掛金を非課税とすることが出来るのです。

前払い退職金制度

前払い退職金制度は退職時に支払う退職金を、在職中に支払う制度です。
退職金は通常勤続年数や役職によって決まりますが、その支払う額を月々の給料に上乗せする形で支払う制度となります。
働き方改革の影響を受け、転職をすることが当たり前となりつつある社会に即した制度となっています。

退職金の相場について

退職金の相場について
退職金がいくらもらえるかによって、老後の人生設計が変わってくると思います。
特に一番影響があるのが住宅ローンや年金です。
住宅ローンは金額が大きくなるため退職金で繰り上げ返済を考えたり、将来的に年金がいくらもらえるかわからない時代のため、退職金を運用したり定期預金をしておこうと考える人は多いと思います。
そこで大体の目安となりますが、退職金の相場を紹介したいと思います。

退職金は勤続年数や企業規模などによっても変わる

退職金は会社によって受け取れる金額や条件が違います。
勤続年数が条件に満たない場合は退職金をもらうことが出来ませんし、会社によってその年数も違います。さらに、会社によって感謝金や餞別金のような形で出している会社もあります。なので、自分が勤めている会社の規則を調べることで、自分の退職金の仕組みがわかるのです。
つまり、退職金の給付額も会社によって違うので年数ごとで計算することが難しいのです。
そこで、年数ごとの退職金の相場をご紹介します。あくまで相場なのでお勤めの会社とは違いが出る可能性があります。

退職金( 3年の場合 )

勤続年数が3年の場合は高卒で約19万円、大卒で約24万円となっています。

退職金( 10年の場合 )

勤続年数が10年の場合は高卒で124万円、大卒で152万円となっています。

退職金( 20年の場合 )

勤続年数が20年の場合は高卒で約554万円、大卒で約637万円となっています。

定年まで勤めた場合の退職金の相場

定年まで勤めた場合の退職金は、大卒で約2300万円、高卒で約1900万円となっています。
もちろん相場なので、会社によって退職金は大きく変わる場合があります。特に自己都合退職の場合と会社都合退職の場合では大きく違ってきます。会社都合退職の方が自己都合退職よりも退職金が高くなる傾向にあるのです。

退職金の計算式

退職金の計算式
退職金の計算方式は会社によって違うのですが、いくつかの方式があります。
基本給と連動する基本給連動型方式。
基本給と連動しない定額方式・別テーブル制方式・ポイント制方式があります。

基本給連動型方式

基本給連動方式は、退職時の基本給×支給率×退職事由係数の計算方式で計算されます。
支給率や退職事由係数は会社ごとに異なります。基本的には勤続年数が長いほうが退職金の金額が多くなる計算式となっています。

定額方式

定額方式は、給料に関係なくあらかじめ定められた金額で支給されます。
例えば勤続年数ごとに支給額が決められており、3年で19万円、10年で120万円、20年で500万円という方式となっている会社が多いです。

別テーブル制方式

別テーブル制方式では、基礎基金(役職など)×支給率×退職事由係数のような計算方式となっています。基本給連動型方式と似ていますが、基本給ではなく基礎基金(役職など)となっているので、どこまで昇進したかなどが退職金に関係するようになってきます。

ポイント制方式

ポイント制方式は、会社側が従業員にポイントを与え金額を決定する方式となっています。
例えば評価のポイントは、勤続年数、貢献度、昇進などがあり場合によって会社独自のものもあったりします。

まとめ

退職金制度のまとめ
退職金が有るのと無いのとでは大きな差が出ることがあります。特に将来の設計をする上では、とても重要なものとなります。しかし、退職金制度は法律で定められている制度ではないので、会社が制度を設ける義務がありません。そのため、転職や就職を考える場合は会社に退職金制度や相応の制度があるのかを確認しましょう。

企業側としても、退職金制度の廃止や見直しする場合は社員への事前説明や納得が得られるか、慎重に準備をすることが必要となります。会社の規則を変えることとなるので、法的な問題がおこらないようにすることが必要です。

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