「仕事=正社員として働くこと」というイメージが大きいですが、現代では多種多様な働き方があります。
その中の一つが「業務請負」という働き方。言葉では聞いたことがあっても、実際にどんな働きなのかイメージしずらい人もいるでしょう。
この記事では業務請負の概要や、メリット・デメリット、他の働き方との違いなどについて解説します。
請負・請負契約とは
業務請負とは、仕事の発注者と受注者の間に契約を結び、受注者が仕事を完成させることで発注者から報酬を得るという形の働き方です。
契約の段階で仕事を完成させることを約束しているため、未完成の状態では報酬を得ることはできませんし、時間で給料が発生するわけでもありません。あくまでも成果に対して報酬が発生します。
請負は目に見えるものを作るだけでなく、システム開発や講演会、警備や清掃といったものも対象になります。請負契約はある1つの仕事に対して結ばれるものとなるため、発注者と受注者の間には雇用契約は発生しません。
請負契約と印紙
請負契約を結ぶと以下の通り印紙税の対象になります。契約金額に応じて税額が変わってくるので注意してください。下記に一覧を記載していますので、参考にしてみてください。
- 1万円未満:非課税
- 1万円以上100万円以下:200円
- 100万円を超え200万円以下:400円
- 200万円を超え300万円以下:1,000円
- 300万円を超え500万円以下:2,000円
- 500万円を超え1,000万円以下:1万円
- 1,000万円を超え5,000万円以下:2万円
- 5,000万円を超え1億円以下:6万円
- 1億円を超え5億円以下:10万円
- 5億円を超え10億円以下:20万円
- 10億円を超え50億円以下:40万円
- 50億円を超える:60万円
- 契約金額の記載なし:200円
請負先の意味
請負先とはその名の通り、仕事を発注する会社のことです。
請負先が労働者に対して直接仕事を依頼するケースのほか、請負先から仕事を受けた請負会社が、労働者を長期間にわたって常駐させるという形の請負もあります。
請負と派遣の違い
ここまで読んで請負と派遣を同じようなものだと考えた人もいるのではないでしょうか。しかし、両者にははっきりとした違いがあります。
それは、仕事を発注する側と受注する側の間に上下の関係があるかどうかです。まず派遣の場合、労働者は派遣先の企業から指揮命令を受ける関係にあるため、会社が上、労働者がその下で働くという位置付けになります。
一方で、請負は発注者と請負会社の間で行われる取引であり、実際に働く労働者は発注者から指揮命令を受けるわけではありません。あくまでも依頼された仕事をするのみです。
また、派遣の場合は派遣先の企業に労働基準法などの一部が適用されますが、請負の場合はそもそも労働契約を交わしているわけではないので、適用されません。
請負と委託の違い
請負と似たような形の働き方に委託があります。これらはどちらも依頼を受けた上で仕事をするという点は共通しています。しかし、仕事に対する完成義務があるかどうかという点では異なります。
請負の場合、先ほども説明したように、仕事の完成に対して報酬が発生するため、仕事を受けた以上はその仕事を完成させなければいけません。また、間違いや不足があった場合は修正が発生することもありますが、その対応も含めての報酬となります。
一方の委託は仕事の完成義務は発生しません。もちろん手を抜いていいというわけではありませんが、仕事を受けた人が最大限の力を発揮した上でその仕事が終わらなくても報酬をもらうことができます。
作成請負と作業請負の違い
同じ請負でも作成請負と作業請負というものがあります。
作成請負は、発注者からの依頼に対して成果物を作成することを請負っている契約のこと。作成にあたっては、納期と品質を守ることができれば何人で仕事に取り組んでも構いません。
ただし人数をかけたからといって報酬が増えるわけではないので、より少ない人数で成果物を作成する方が利益を上げることができます。
一方の作業請負は、あくまでも作業に対して人員を提供するという形の契約です。
依頼者から「◯日まで△人の人員が必要」となればその期間に必要な人数を提供するというイメージです。
報酬は「人員の数×日数」となるため、その分は確実に利益を上げることができます。一方で作成請負のように作業効率をいくらあげたとしても利益がアップするわけではありません。
業務請負のメリット・デメリット
ここまで業務請負の概要から、他の働き方との違いについて解説しました。
ここからは企業や労働者が業務請負をすることのメリットやデメリットについて解説します。
業務請負のメリット
企業にとって業務請負をすることのメリットは、管理業務から解放されるということです。
事前に業務内容や納期、作業方法、作業の目的などをすり合わせておく必要がありますが、一度すり合わせを行えばあとは受注者がスケジュールまでに仕事を進めるだけなので特に管理をする必要がありません。
また、例えば社員が取り組むまでもないような簡単な業務を業務請負で他の人に担当してもらえば、より重要な仕事に社員を充てることができ、効率的な経営を目指すことも可能です。
一方で仕事を受注する人が請負で働くメリットとしては、成果を上げれば上げる分だけ報酬がアップするという点が挙げられます。
また、基本的には納期までに成果物を納品すればいいため、勤務時間などに縛られないという特徴も持ちます。
業務請負のデメリット
逆に、業務請負を利用するデメリットとしては、作業に関するノウハウが蓄積できない可能性があるということです。
業務請負は簡単にいうと外に仕事を投げることになるため、どのような形でその業務を行なっているのかが、社内に知見として蓄積しにくい状況となります。
また、利用する請負会社によっては、人材不足で仕事の質が低い人しか提供できないケースもあるので、請負会社選びが非常に重要になります。
そして、働く側のデメリットとしては、成果をあげなければ報酬を得ることができない点にあります。自由度が高いのがメリットですが、成果を上げるために仕事ばかりになってしまう恐れもあるので注意が必要です。
業務請負と正社員の違い
業務請負は、企業との間に雇用契約を結んでいない一方で、正社員は雇用契約を結んでいるという点で大きく異なります。
正社員は会社のオフィスにデスクがあるケースが一般的で、毎日出社して仕事をすることになりますが、請負に関してはオフィスにデスクなどはなく、基本的には自宅などで仕事をすることになります。
さらに正社員は無期雇用ですが、請負は業務単位での契約となるため、1つの仕事が終わると契約が終わる形になります。
収入に関しても、正社員は極端な話成果を上げなくても毎月一定の給料をもらうことができます。請負の場合は、当然成果を上げなければ収入はゼロです。
正社員として働くメリット
正社員として働くメリットは、何といっても安定感があるということです。先ほども触れているように正社員は無期雇用となり、給料も毎月もらえるため安定していると言えます。
また、有給休暇や福利厚生なども利用できるのも特徴です。前述した通り、特に成果を上げていなくても安定した給料を貰うこともできます。
正社員として働くデメリット
一方のデメリットとしては、勤務時間が決められているという点です。時間の拘束はどうしても発生してしまうため、請負に比べるとプライベートな時間の確保が難しくなってしまいます。
また、企業や時期によっては残業が発生することもあります。さらに、請負のように業務単位で働いているわけではないため、時には社内の人間関係で悩むこともあるでしょう。
請負会社について
企業が請負を利用する、労働者が請負として仕事を受注する際に間に入るのが請負会社です。続いては請負会社がどういったものなのか簡単に紹介します。
請負会社とは
請負会社とは、仕事を発注したい企業から仕事を請負い、自社に所属する社員にその仕事を遂行させる会社のことです。業務内容によっては、発注元の企業に請負会社の社員を派遣することもあります。
請負会社と派遣会社の違い
請負会社の場合も、社員を発注元の企業に常駐させることがあるため、形としては派遣に似ているように見えます。
しかし、請負会社から送られてくる人員はあくまでも請負会社の社員であるため、発注元の企業は業務に関する指示を出すことができません。
一方で派遣会社の場合、派遣社員は派遣会社に登録されている人たちですが、派遣先の企業が業務の指示を出すこともあります。
また、派遣会社は会社の設立に一定の基準や条件がありますが、請負会社では特に届け出などを提出する必要はありません。
請負会社の正社員とは
請負会社の正社員とは、所属は請負会社で、仕事をするのは請負先の会社という働き方をする人たちのことです。
あくまでも請負会社の社員という立場なので、給与は請負会社から支払われます。
また、請負会社の正社員の場合、常駐先の企業で請負会社単位のチームで働くのが基本です。派遣社員のように派遣先の正社員と一緒に働くというケースはあまりありません。
業務請負は自由と責任が発生する働き方
今回は業務請負について詳しく解説しました。
業務請負は自由度が高く努力次第で報酬アップも期待できる働き方である反面、成果を上げなければいけないため正社員のように安定しているわけではありません。
派遣や委託など似たような働き方もありますが、それぞれ若干の違いがあるため、自分にはどの働き方が合っているのかしっかりと考えるようにしましょう。