オープンイノベーションのメリット・デメリットは?日本での成功事例も紹介

オープンイノベーションとは、自社以外の組織からアイデア・技術を集めて新しいビジネスを作ることを意味します。

従来の日本企業は自社内で企画から開発までを一貫して行う方法でしたが、グローバル化の時代に伴って新しい手法であるオープンイノベーションが人気を集めています。

今回はこのオープンイノベーションに関して、概要から必要性、企業における具体例などについて解説します。

目次

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは

オープンイノベーションとは、2000年代のはじめにヘンリー・チェスブロウによって提唱された概念の一つです。

これは、企業が大学や研究機関など自社以外の組織からアイデアや技術を集めて新しい商品やサービス、ビジネスモデルを作ることを意味します。

オープンイノベーションは従来の企業のように社内のリソースだけに頼るのではなく、社内外のあらゆる資源を活用することになるので、今までには出てこなかったような新しい考えが出てくることが期待されます。

オープンイノベーションの定義

オープンイノベーションを提唱したヘンリー・チェスブロウは、その著書オープンイノベーションの定義を以下のように述べています。

「オープンイノベーションとは、企業が技術の価値を高めようとする際、内部のアイデアとともに外部のアイデアを用い、市場化の経路としても内部の経路と外部の経路を活用することができるし、また、そうすべきであると考えるパラダイムである」

またチェスブロウは、オープンイノベーションは組織の内部のイノベーションの加速と外部市場の拡大のために知識の流入と流出を活用することであり、外部の人たちが持つアイデアは自分たちのビジネスに活用し、自分たりが使っていないアイデアは外部の人たちに使ってもらうべきだとも言っています。

現在の社会が商品やサービスに求める質は非常に高いレベルにある一方で、自社だけでそれらの要求をクリアするようなものを作るのは難しいと言えます。

そう言ったときに、オープンイノベーションによって自分たちだけではできないようなことにも取り組めるようになりました。

クローズドイノベーションとの違い

社外のアイデアも活用するオープンイノベーションの反対の言葉に「クローズドイノベーション」と呼ばれるものがあります。

これは、自社で作った商品やサービス、技術を取引先や消費者に提供するという自前主義によるイノベーションモデルのことです。

従来の日本企業が行なっていた経営手法がクローズドイノベーションです。クローズドイノベーションは技術や情報を自社内に留めておくことで、利益が全て自社に還元されるという特徴を持ちますが、自社だけで全てやらなければいけない分、商品開発などに時間もコストもかかってしまいます。

そのため現在では、クローズドイノベーションからオープンイノベーションへと切り替える企業が増えています。

オープンイノベーションの必要性

様々な技術革新によって新しい商品や技術、サービスが提供される間隔は今まで以上に短期化されています。

そのため、先ほども触れているように従来の日本企業のような自社だけで全てを完結させるクローズドイノベーションではそのスピードについていくことができません。

このような背景からオープンイノベーションに対する理解が深まり、必要性がどんどん高くなっているものと考えられます。

オープンイノベーションのメリット・デメリット

オープンイノベーションのメリット・デメリット

続いてはオープンイノベーションのメリット・デメリットについて解説します。

プロダクトサイクルの短期化に対応するためにはオープンイノベーションが欠かせません。

その一方でオープンイノベーションが持つ特徴をしっかりと理解しておかなければ、企業として利益を上げることができなくなります。

オープンイノベーションのメリット

オープンイノベーションのメリットとしては以下のような点が挙げられます。

  • 自社の知識や技術が拡大する
  • 幅広いニーズに対応できるようになる
  • 低コスト・短期間による製品開発
  • 事業を進めるスピードがより早くなる

まず、オープンイノベーションでは、社内だけでなく社外の組織が持つアイデアも自社のビジネスに活用できるため、単純に社内により多くの知識や技術のノウハウを蓄積することができます。

また、それによってこれまでのクローズドイノベーションの環境下では対応できなかったようなことにも対応できるようになる可能性があります。

さらに、これまで新しい技術や知識を得るためには様々な調査や研究などが必要でしたが、社外からそれらを取り入れるようにすればコストも時間も削減することができ、より早いサイクルで製品を作ることもできるようになるでしょう。

そして、これらの結果事業全体を進めるスピードもより早くなることが期待されます。

オープンイノベーションのデメリット

一方でオープンイノベーションのデメリットとしては以下のようなものが挙げられます。

  • 自社の技術やアイデアの流出
  • 自社開発能力の衰退
  • 収益の分配

オープンイノベーションは自社以外の組織のアイデアも活用していくことになりますが、それと同時に自分たちの持つ知識や技術、アイデアも外に提供することになるため、重要な知識や技術が流出してしまう恐れがあります。

そのため、社外に提供してもいい情報はなんなのかをしっかりと線引きしておかなければいけません。また、社外の力ばかりを頼っていると自分たちで技術を開発したり、アイデアを創出したりする能力が減退してしまう恐れもあります。

そして、オープンイノベーションによってあげた利益は自分たちだけでなく、アイデアや知識を提供してくれた企業と分け合う必要があります。

そのため、収益の分配をどのようにするかをしっかりと考慮しなければ後々トラブルになる可能性もゼロではありません。

ジョブくん

オープンイノベーションは企業にとっても大きなメリットが存在する一方で、会社を衰退させかねないデメリットもあるので注意が必要です。

オープンイノベーションの事例を紹介

ここからは、実際にオープンイノベーションを活用した事例について紹介します。

コニカミノルタ

コニカミノルタでは、「ビジネスイノベーションセンター」という社外人材を中心とした組織を作り、常に複数の案件を扱っています。

また、自社に足りない部分があるときはベンチャー企業などと提携することで足りない部分の穴埋めを行ない、早期に対応できる体制を整えています。

デンソー

デンソーでは、技術ありきではなく、目指すべき姿から逆算してビジネスモデルを創出しています。

そういった姿勢もあって、様々なベンチャー起業への出資を行うなど、オープンイノベーションを推進しています。

東京ガス

東京ガスでは、2017年4月により質の高いサービスの提供を目指してオープンイノベーションに取り組む「リビングサービス改革プロジェクト部」という組織を設立しています。

実際に、住宅やセキュリティなどの領域でスタートアップ企業との検討を行ったり、sy街の有識者と協力してプロジェクトを行ったりとオープンイノベーションに対する取り組みが見られます。

三井不動産

三井不動産では、ベンチャー支援を目的とした「ベンチャー共創事業部」という部署を設立して、オープンイノベーションに取り組んでいます。

また、コワーキングスペースやスモールオフィスを設置して、イノベーションに必要な場所の提供にも取り組んでいるのが特徴です。

三菱UFJフィナンシャルグループ

三菱東京UFJフィナンシャルグループでは、三菱UFJ銀行のIT事業部がデジタルイノベーション推進部と改組され、グループ全体のイノベーションに関する取り組みを担うようになりました。

これによって、邦銀では初めてとなるスタートアップのアクセルレーターとなり、多くのスタートアップへの支援を行うなど様々な実績を残しています。

オープンイノベーション白書とは

オープンイノベーション白書とは、オープンイノベーションに関するデータや事例などをまとめた白書です。

オープンイノベーション・ベンチャー創造協議会(JOIC)と国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)によって作成されています。

JOICは、2015年2月に設立されたオープンイノベーションの取り組み推進を行い、競争力強化に貢献することを目的に掲げている組織です。

オープンイノベーションを成功させるために必要なこと

オープンイノベーションを成功させるために必要なこと

実際にオープンイノベーションに取り組もうとしても、簡単にできるものではありません。続いては、オープンイノベーションを成功させるために押さえておきたいポイントを紹介します。

オープンイノベーションの専門組織を設置してミッションを明確にする

先ほどの事例でもいくつか見られましたが、オープンイノベーションに取り組む専門の部署や組織を社内に設置することは非常に重要です。

専門部署を作ることで取り組むべきことやミッション、社外にはどのような情報を提供するか、といったことがより明確になります。

外部ネットワークとの連携

オープンイノベーションに取り組もうと思っても社外の組織との連携が取れていなければ何もするとこができません。そのため、社内外での関係構築を行う必要があります。

そのためにも自社ホームページで呼びかけたり、公的機関が主催するイベントに顔を出して交流をはかったり、仲介業者を利用したりといった取り組みをするようにしましょう。

イノベーションをうみ出す文化や風土の生成

組織によっては他の企業や組織と協同してイノベーションを行うことに抵抗を感じる人もいるかもしれません。

そのため、オープンイノベーションに取り組むにあたっては、社内でオープンイノベーションに対する理解を深め、文化や風土を育てていく必要があります。

また、オープンイノベーションに取り組めるような人材育成および確保も欠かすことができません。

オープンイノベーションを成功させるための課題

オープンイノベーションを成功させるための課題

オープンイノベーションに取り組むにあたってはいくつかの課題をクリアしなければいけません。どういったものがあるのか解説します。

経営トップの理解

現在の経営トップが現場で働いていた時代というのはどちらかというとクローズドイノベーションが中心の時代出会ったことが予想されます。

そのため、経営トップ層の中には、自社以外の組織との連携によって商品や技術、サービスを開発していくことに反対する人もいるでしょう。

いくらオープンイノベーションにメリットがあったとしても経営者からの理解が得られなければ取り組むことはできません。

オープンイノベーションを始めるにあたってはまず、経営者からアプローチするようにしましょう。

「オープンイノベーションごっこ」にならないように注意

オープンイノベーションは始めてすぐに成果が出るかというと必ずしもそうとは言えません。最初のうちは下記の要素に注力していくのが良いでしょう。

  • 各種イベントに参加して関係構築に取り組む
  • メディアに露出
  • オープンイノベーションを実施している企業の見学
  • 会社に直接的な効果をもたらすわけではない組織への投資

これらは一見すると華やかな取り組みのように見えますが、実際には収益を上げることができないものも少なくないため、周囲から見ると「ごっこ遊び」をしているだけと思われてしまいます。

こういった事態に陥らないようにするためにも、収益を上げることはもちろん、周囲からの理解を得られるように、オープンイノベーションに関する説明を行う機会も設けるようにしましょう。

オープンイノベーションで効率の良い開発を

オープンイノベーションのまとめ

今回は、オープンイノベーションに関して、その意味からクローズドイノベーションとの違い、具体的な事例、成功するために押さえておきたいポイントなどについて解説しました。

オープンイノベーションを利用すれば、自社だけでは今までできなかったようなことができたり、コストや時間の削減ができたりと様々なメリットが享受できます。

実施にあたっては専門の部署を設けるほか、社内で人材育成に取り組んだり、経営層の理解を得たりといった取り組みが必要となります。

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