休日には法定休日と法定外休日があります。両者を混同して運用すると会社にも従業員にも損失を与えてしまいます。
また、従業員としても、自分の身を守るために、法定休日をよく理解しておく必要があるでしょう。
名称が似ている振替休日・代休との違いや、法定休日を特定するメリット・デメリットなど、法定休日とはどういうものか分かりやすく解説していきます。
法定休日について
法定休日とは労働基準法で定められている休日です。法定外休日との違い、振替休日・代休との違いなどを説明することで法定休日を解説していきたいと思います。
法定休日とは
労働基準法では、企業は労働者に週に1日の休日を与えること、あるいは4週間を通じて4日の休日を与えるように定めています。それを法定休日と言っています。
法定休日と法定外休日の違い
労働基準法では、労働時間の上限を定めています。1日8時間、週40時間を上限としています。ですので、1日の所定労働時間が8時間の企業は、週に1日の休日だけでは労働基準法に違反することになります。そこで、多くの企業では週休2日制を設けているんですね。
そして、2日間ある休日のうち、1日を法定休日、もう1日を法定外休日と呼んでいるんです(所定休日ともいいます)。つまり法定休日以外に企業が労働者に与える休日のことを法定外休日と言います。
法定休日と振替休日・代休との違い
法定休日に働いた場合、労働日に休日を振り返ることが可能です。振り返られた休日のことを振替休日と言います。振替休日の場合は、事前に労働者が企業との間で振替休日の申請をしなければなりません。尚、振替休日を取得した場合、休日に労働しても休日出勤の割増賃金は発生しません。通常勤務として扱われるからですね。
また、振替休日と似た休日に、代休というものもあります。代休は、振替休日とは違い事後に労働日に休んだ場合の休日のことを指します。事後に休日を取得したということで、休日に働いた分は通常勤務として扱われません。そのため休日出勤扱いとなって割増賃金の支払いが発生します。この点が代休と振替休日の大きな違いです。
法定休日に祝日は含まれるか
法定休日には祝日が含まれません。なぜなら、週に1日与えられた休日を法定休日と言うのですから、基本的には曜日のどれかが法定休日となります。
法定休日と労働基準法
労働基準法では法定休日を特定するようにとは明記されていません。ですので、法定休日を特定するか否かは企業によってメリット・デメリットが異なります。詳しく解説していきましょう。
法定休日を特定しておくほうがいい理由
労働基準法は、週に1日の休日を労働者に与えなければならないと定めています。その休日を法定休日と言いますが、特定するか否かは企業に委ねられています。特定するか否かの基準は、特定すると労務管理上メリットなのか、それともデメリットなのかということになります。
法定休日を特定した方が良い理由として、割増賃金の計算が関係してきます。法定休日に働けば休日出勤となり割増率は3割5分となります。しかし法定外休日に働けば通常の時間外勤務扱いになるので2割5分の割増率です(週40時間超の場合)。そのため、法定休日を特定しておかないと、労務管理が煩雑になります。「労働者Aさんが土曜日に働いた分は法定外休日。しかし、Bさんが土曜日に働いた分は法定休日」などと計算していられません。従って、例えば日曜日を法定休日と特定しておけば、土曜日に休日出勤した分は休日出勤の割増賃金で計算しなくて済む訳です。
また、法定休日を特定しておくと労使間のトラブルを未然に防ぐことに繋がります。法定休日が何曜日であるか特定していないと、労働者が給与明細を見て、企業に「3割5分の割増賃金をもらっていない!」という訴えをしてくることを防げます。
法定休日を特定するデメリットは?
法定休日を特定することにはデメリットがある場合があります。それは、個々の労働者の勤務がバラバラで週の何曜日を休日にするか、労働者に委ねているようなケースです。この場合は日曜日を法定休日にしても、日曜日に休める人と休めない人が当たり前のように混在しますので、労務管理上は甚だ面倒になる訳です。こういった勤務形態の企業では法定休日を特定しない方が良いでしょうね。
法定休日を特定する方法
法定休日を特定する方法を見ていきます。
週休2日制(土曜・日曜が休み)の場合
法定休日を特定するには就業規則に定めておく必要があります。例えば、「法定休日は日曜日とする」などのように、就業規則に定めておけば、労使間での法定休日の認識に齟齬が出なくなります。
変形休日制の場合
労働基準法では、週に1日の休日を労働者に与えることの他、4週間を通じて4日の休日を与えることでも法定休日として認めています。後者を変形休日制と呼びます。変形休日制の場合、就業規則に「4日の休日を与える4週間の起算日は○日である」と具体的に定めておく必要があります。
法定休日労働のために必要なこと
法定休日に労働者に労働させるには、36協定を締結・労働基準監督署に届出する必要があります。もし締結せずに働かせた場合、法令違反であり無効になります。また、通常残業させる場合も36協定を届出しなければなりません。
36協定を締結する
休日は本来労働を免除された日です。法定休日に労働者を労働させるには、36協定を労働者と締結し、労働基準監督署に届出しなければなりません。もし締結しないまま労働者を法定休日に労働させていると違法となります。割増賃金を支払っていたとしても、36協定を締結せず法定休日に働かせることは違法です。また、36協定には有効期間が定められており最長でも1年です。有効期間が過ぎる前に、労働基準監督署への届出を忘れないようにしましょう。
臨時の場合
36協定を労働者と締結し労働基準監督署に届出していなかった場合、法定休日に労働させることは違法。ですので、「36協定を届出していなかったが法定休日に労働させた。後で労基署に届出をしよう」ということが通用しません。臨時だから届出が免除されるものでもありません。36協定の締結・届出は忘れずに行って下さい。
法定休日に出勤した際の給与について
法定休日に出勤した際の給与はどうなるでしょうか?割増賃金や、法定休日に働いて更に残業したケースなどについても解説します。
法定休日出勤した際の割増賃金
法定休日に出勤すれば、休日出勤となります。その場合、労働した時間に割増賃金が加算されます。割増賃金の割合は3割5分となります。
法定休日に出勤して残業した場合
法定休日に出勤し、更に残業した場合の割増賃金はどうなるでしょうか?割増率は3割5分のままです。休日に働いてそのまま残業したのだから、通常残業の割増賃金を加算できると思ってしまうかもしれませんが、休日出勤の場合は休日の割増賃金のみ適用されます。従って、休日出勤の割増賃金3割5分+通常残業の割増賃金2割5分=5割という計算にはなりません。3割5分で計算して下さい。
深夜労働が発生した場合
法定休日に出勤し、深夜労働が発生した場合の割増賃金も3割5分のままでしょうか?深夜については加算して大丈夫です。6割の割増賃金が支払われます。すなわち、休日出勤の割増賃金3割5分+深夜労働の割増賃金2割5分=6割という計算になります。
法定外休日 / 代休 / 振替休日 の割増賃金
続いて、法定外休日・代休・振替休日の割増賃金を確認していきましょう。
法定外休日の割増賃金
法定休日に出勤すると3割5分の割増賃金が支払われることが分かりましたが、法定外休日の場合はどうなるでしょうか?法定外休日には3割5分の割増賃金を払う必要はありません。そもそも、法定外休日の労働が週40時間に収まっていれば割増賃金は要りません。週40時間を超えた場合は、通常残業の2割5分の割増賃金を支払う必要が出てきます。
法定外休日にも一律に3割5分の割増賃金を支払っていませんか?法定外休日についても3割5分の割増賃金を支払っていると、払い過ぎになってしまいます。
代休の割増賃金
代休を取得した場合、休日が法定休日か法定外休日であるかによって割増賃金が変わります。法定休日だった場合、3割5分の割増賃金となりますし、法定外休日だった場合、週40時間の労働時間を超えていれば2割5分の割増賃金となります。
振替休日の割増賃金
振替休日の割増賃金については、法定外休日と同等の考え方が適用されます。すなわち、週40時間に収まっていれば割増賃金は要りません。しかし週40時間を超えた場合は、通常残業の2割5分の割増賃金を支払う必要が出てくるということですね。
まとめ
法定休日について解説してきました。休日には法定休日と法定外休日があることを理解する必要があります。
これは労働者も労務担当者も同じです。休日に労働した時の割増賃金がいくらになるか、労働者も労務担当者も押さえておかないといけないからですね。
ちょっと分かりづらい代休と振替休日についても触れました。この2つの休日も、割増賃金の額を計算する際に重要なポイントとなってきます。