会社側から従業員へ「解雇」するには明確な理由と正しいプロセスが必要なのをご存知ですか?
正しい解雇をしなければ、労働基準法違反、労使トラブルの発生に繋がるので注意が必要です。
今回は、会社側が知っておくべき解雇の種類や解雇が認められる条件、解雇通知の手順について解説していきます。
解雇とは?
「解雇」とは会社側が労働者に対して、一方的に労働契約の解約を言い渡すことです。
解雇の意味
「解雇」は「退職」とは異なり、会社側の事情で一方的に労働契約を解除することが特徴です。
労働者は解雇されると経歴にキズがつき、退職金が減額または不支給となるリスクがあります。
会社側にとっては労使トラブルの元、雇用関係助成金の支給に影響が生じる可能性があります。
解雇理由や条件
ここからは、会社側が従業員を解雇できる理由・条件を見ていきましょう。
▼労働契約法16条の規定
「客観的かつ合理的理由があり、なおかつ社会通念上相当と認められなければ、権利濫用として無効とする」
つまり、会社側は自由に労働者を解雇できるわけではないので注意が必要です。
必ず労働基準法や社内規程の枠組みの中で適切に行われなければなりません。
労働者側に重大な規律違反や非行があったり、経営悪化等によりやむを得ず人員整理を行う場合でも同様です。
解雇理由について、客観的・合理的理由が不十分と判断された場合は、労働者は退社後に解雇撤回を求める可能性があります。
交渉による解決が難しい場合には、労働審判や訴訟に発展するため注意が必要です。
退職勧奨とは?
解雇は労使関係に問題を残して、労働者が退社後にトラブルになるリスクがあります。
そこで対策としては、会社側が労働者に自らの意思で退職することを促す「退職勧奨」が挙げられます。
解雇に先立ち「退職勧奨」を行うことで、会社としては極力穏便な方向で手続きを進めることが可能です。
退職勧奨には強制力はないため、労働者が退職すべき理由を十分に説明して、理解してもらう必要があります。
解雇の種類
「解雇」には大きく分けて3つの種類があります。
では、それぞれの定義を見ていきましょう。
普通解雇
▼普通解雇とは?
労働者側に起因する何らかの理由
労働契約の継続が困難となった
会社側が解雇を回避して努力しても状況が好転しなかった
具体的な理由は、就業規則内に定められる「解雇事由」に該当します。
労働基準法上の「解雇の事由」は、就業規則及び労働契約書上の必要記載事項です。
解雇に相当する事例については具体的に記載しておかなければなりません。
懲戒解雇
▼懲戒解雇とは?
社内のルールに著しく違反した
身勝手かつ悪質な行動によって職場秩序を乱した
犯罪行為に手を染めた
会社が労働者に対して科す懲戒処分のうち最も重い罰則です。
懲戒解雇に該当する項目は、就業規則や懲戒規程に具体的な事由が明記されています。
客観的かつ社会的にみて相当の理由があるかが判断の基準です。
整理解雇
▼整理解雇とは?
経営不振によりやむを得ず人員削減をする時
会社都合による労働契約の解除
整理解雇の判断基準については、就業規則や懲戒規程に記載されています。
解雇を行う場合
解雇を行う場合は、労働基準法の定めに従って「解雇予告(解雇通知)」を行う必要があります。
適正な手順を経て解雇しなければ無効となってしまうので注意しましょう。
解雇予告とは
労働者を解雇する場合には、原則「30日間」の解雇予告期間を確保できるようにする「解雇予告」が必要です。
特別な事情がない限り即時解雇は認められません。
▼労働基準法20条で定める解雇予告
「使用者は、労働者を解雇しようとする場合においては、少なくとも三十日前にその予告をしなければならない。三十日前に予告をしない使用者は、三十日分以上の平均賃金を支払わなければならない。」
解雇予告手当とは?計算方法は?
何らかの事情により、解雇予告期間の確保が困難である場合は、「解雇予告手当」を支払わなければなりません。
「解雇予告手当」とは、解雇予告期間を確保する代わりに支払われる手当のことです。
▼労働基準法20条が定める解雇予告手当
「一日について平均賃金を支払った場合においては、その日数を短縮することができる」
会社側は以下の平均賃金を解雇予告手当として支払わなければなりません。
労働者を即時に解雇する場合は30日分
解雇予定日の20日前に解雇を予告した場合は10日分
▼解雇予告手当の計算式(支払額は高い方となる)
過去3か月間の賃金の合計÷過去3か月間の暦日数
(過去3か月間の賃金の合計÷過去3か月間の労働日数)×0.6
解雇予告手当を支払えば解雇が成立するわけではなく客観的・合理的理由が必要となるので注意しましょう。
解雇予告除外認定とは?
解雇予告除外認定とは、問題を起こした社員を即日解雇ができる制度です。
労働基準法第二十条に定められている解雇予告の手続きを免除する認定制度です。
労基署に申請し、認定されると即日解雇が可能となります。
認定基準について
▼解雇予告除外認定の基準
会社内にて窃盗・横領・傷害などの行為が確認された
賭博など社内風紀・規律を著しく乱し、ほかの従業員へ悪影響を及ぼした
採用条件にもなった経歴を詐称していた
他の事業へ転職した
正当な理由なく無断欠勤を2週間以上繰り返し、出勤の要請にも応じない
欠勤や遅刻が多く、注意されても改めない
解雇通知書とは?
解雇通知書とは、会社が従業員との雇用契約を解除する旨を通知するための文書です。
口頭では後々のトラブルに発展する可能性があるため、会社側は解雇通知書を作成して従業員に知らせます。
解雇予告通知書とは?
解雇予告通知書とは、労働者に対し解雇を予告する際に、解雇の予告をする書面のことです。
労使トラブルを回避するために、解雇日や解雇理由を文書にまとめておくことが大切です。
解雇理由証明書とは?
解雇理由証明書とは、会社がどんな理由で従業員を解雇したのかを証明する書類です。
労働者が請求した場合、使用者は解雇理由証明書を
交付することが法律上義務づけられています。
※解雇理由証明書は、解雇通知書(解雇予告通知書)とは別の書類です。
解雇予告通知書や解雇理由証明書をもらえない場合
会社から解雇予告通知書・解雇理由証明書をもらえない場合は、会社に請求しましょう。
従業員の解雇理由の開示請求に対して、会社側は解雇理由証明書を交付する義務があります。
自分の解雇に納得がいかない場合
自分の解雇に納得がいかない場合は、労働組合または労働基準監督署に相談することをおすすめします。
労働基準監督署は、企業が労働基準法を守っているか監督する役割があり、交渉にも応じてくれます。
解雇された場合の失業保険について
失業保険は解雇された場合でも、一定の要件を満たしていれば受給することができます。
▼失業保険受給要項
積極的に就職活動を行っており、いつでも働ける状態にあるのにも関わらず失業状態にある
離職日以前の2年間に被保険者期間が12ヶ月以上ある
特定受給資格者の場合は、離職日以前の1年間に被保険者期間が6ヶ月以上
懲戒解雇の場合は、3ヶ月の給付制限期間がつき、すぐに失業保険を受給することはできません。
自己都合退職の場合
自己都合退職の場合も失業保険は受給されます。
失業手当の総額は雇用保険の加入期間と今までの賃金によって変わります。
会社都合での退職の場合
会社都合の退職は「特定受給資格者」にあたり、
ハローワークに離職票を提出した7日後、初月分の失業保険が受給されます。
まとめ
解雇は労使双方に様々なリスクがあるため、最終手段として選択するケースがほとんどです。
どんな解雇の形であっても、客観的合理的理由があり、適正な手続きをしなければ無効となるので注意しましょう。