労働時間とは?計算する際の注意点や変形労働時間制の特徴

労働時間の記事

労働時間は「仕事をしている時間」となんとなく分かっていても、正確な定義は知らない方は多いかもしれません。

今回は、労働基準法上の「労働時間」はどんな意味があり、正確に労働時間を計算方法について解説していきます。

2019年の改正労働基準法が施行されたことにも触れていくので、ぜひ参考にしてみてください。

目次

労働時間とは

労働時間とは
就業規則や雇用契約書などには「労働時間」という言葉があります。

「労働時間」とは、社長や上司などに指揮命令下で労働者が会社のために働く時間のことです。

「労働時間」は勤務時間の中から休憩時間を差し引いた時間が該当します。

例えば、「勤務時間」が9:00~18:00、休憩時間は1時間の場合は「労働時間」は8時間になります。

ちなみに「勤務時間」は、企業の就業規則に定められた始業時刻から終業時刻までの時間です。

法定労働時間とは

使用者側は原則として、労働者に上限時間を超えた労働をさせてはならなりません。

その上限時間のことを「法定労働時間」といい、労働基準法で定められている労働時間の限度です。

原則として、「一日あたり8時間、一週間あたり40時間」と定められています。

例えば、雇用契約書で1日10時間労働と記載されている場合は、残業2時間分としてカウントされます。

法定労働時間を越える場合は、使用者は36協定の提出と割増賃金の支払いが必要です。

所定労働時間とは

労働基準法では、法定労働時間は「1週間の労働時間は週40時間、1日8時間以内」と決めています。

この決まりに基づいて、会社で定めた就業規則や個別の労働契約書に記載したものが「所定労働時間」です。

所定労働時間は、会社が法定労働時間の範囲内であれば自由に定めることができます。

法定労働時間は「1日8時間、1週40時間」なので、その範囲で定めることになります。

例えば、勤務時間は9時から18時まで、休憩時間は13時から14時までの場合、所定労働時間は8時間になります。

2019年の改正内容:労働時間に関する法律

2019年4月1日、改正労働基準法が施行され、時間外労働等の上限規制の導入、5日間の年次有給休暇の付与の義務化が改正されました。

時間外労働等の上限規制の導入は、中小企業においては1年の猶予があり、2020年4月1日からの施行です。

時間外労働の上限については、月45時間、年360時間を原則となります。

臨時的な特別な事情がある場合でも、年720時間、単月100時間未満(休日労働含む)を限度に設定する必要があります。

労働時間の平均

労働時間の平均
労働基準法の第32条「1週間に40時間・1日に8時間」を基本労働時間と定めていますが、実際の労働時間はどうでしょうか?

基本労働時間に残業時間を含めた1日の総労働時間
(休憩時間を除く)を調査したところ、1日の平均労働時間は8.9時間という結果でした。

割合で見ると、8時間以上~9時間未満は39%、8時間未満は24%となり、「ほぼ残業なし」の会社員は 全体の4分の1となっています。

日本の労働時間の平均は?

日本の一般労働者の労働時間の平均は平均年間2,018時間となっており、日本の平均年間労働時間は約20年間大きく変わっていません。

世界と比較した場合どうか

OECD(経済協力開発機構)の調査によれば、日本は主界主要国の中では22位という結果です。(全就業者を対象)

日本の「労働者1人あたりの平均年間労働時間」は
10年間で100時間以上短くなっています。

平均労働時間が世界一番長い国はメキシコの2257時間、アジアでは韓国の2,024時間です。

日本は労働時間が長いイメージがありますが、世界的に見るとそこまで長くはありません。

ただし、日本の場合はサービス残業が多く、実際に働いている時間を測るともっと長いと考えれます。

働き方改革に関する企業の成功例

日本は少子高齢化に伴う労働力人口の減少において
国を上げて働き方改革を実施しています。

生活スタイルや労働への考え方を見直し、一人ひとりが希望する働き方を実現する方針です。

▼イケア・ジャパン株式会社の成功事例

世界最大級の小売業を展開するイケアグループは、製品の約半数以上をヨーロッパで生産、組み立て式の製品を販売しています。

2014年9月に人事制度を大幅に改革、全社員を正社員へ転換、同一労働・同一賃金制度を導入しました。

パートタイム労働者を短時間勤務のフルタイム正社員へ転換したことにより、勤続意欲が向上、パートタイム労働者の離職率が30%から半減しました。

▼東レ株式会社の成功事例

大手の化学企業である東レ株式会社は、合成繊維や合成樹脂を用いた化学製品の素材を扱っています。

労働生産性を向上させるために、労働時間の短縮、
トータルコスト削減、社内公募制度を導入しました。

業務を進めるためのプロセスを根本から見直し、コスト競争力の維持・強化のために業務の効率化。

結果的に労働時間が削減され、有給休暇の取得率がアップし成功しています。

成功例にみる大事なポイント

働き方改革の「目的」と「ニーズ」を明確にする
業務に対する意識改革
業務効率化のための機器を導入する
上司が有言実行する
単なる「残業禁止」による長時間労働の削減は実現しにくい

労働生産性を向上して、残業を削減するという目的を示し、生じた利益を社員に還元すると、社員のモチベーションアップにも繋がります。

労働時間を計算する際の注意点

労働時間を計算する際の注意点
残業時間は労働時間の一部であるため、所定労働時間にプラスして考えます。

所定労働時間が8時間以下の場合でも、残業を合わせて8時間を超える場合は、休憩が合計1時間必要となるので注意しましょう。

残業と合わせて6~8時間労働になれば、少なくとも45分の休憩が義務となります。

時間外労働のカウント方法

時間外労働のカウント方法は、1日については8時間を超えた部分、1週間については40時間を超えた部分が時間外労働となります。

▼時間外労働の時間数

①休憩時間を除き、1日8時間を超えて労働した時間数

②休憩時間を除き、1週40時間を超えて労働した時間数の合計

※1週間は、就業規則等に特に定めがなければ、基準は日曜日から土曜日まで。

残業代の計算方法について

▼残業代の基本的な計算式

残業代=1時間当たりの賃金×残業時間×割増率

▼割増率

時間外労働(法内残業)はなし

時間外労働(法外残業)…1.25倍

法定休日労働は1.35倍

深夜労働は1.25倍

▼1ヶ月の所定労働時間
・会社が独自に就業規則等で定めている労働時間

(月全体の日数-会社が定めている休日)×1日の労働時間

変形労働時間制とは

変形労働時間制とは
変形労働時間制とは、労働者の長時間労働を削減し、柔軟性をもたせるために労働時間を設定することです。

変形労働時間制の種類と特徴

▼変形労働時間制は4種類

1ヶ月単位の変形労働時間制
フレックスタイム制
1年単位の変形労働時間制
1週間単位の非定型的変形労働時間制

変形労働時間制は、労働者が無駄に働く時間を減らす目的があり、週休二日制を推奨したり、年間の休日日数を増やすやり方があります。

変形労働時間制のメリット

変形労働時間制を導入するメリットは、時間に縛られす効率的な働き方が実現することです。

例えば、閑散期の労働時間を繁忙期に充てると使用者側は無駄な賃金を支払う必要がなく、労働者は効率の良い働き方をすることができるのがポイント。

変形労働時間制のデメリット

変形労働時間制を取り入れるデメリットは、成果が現れるまでに時間がかかることが挙げられます。

会社の現状を洗い出し、効率の良い労働時間の設定した後は、一定期間内で法定労働時間を超えていないか確認作業が必要です。

労使協定や就業規則の改定も必要になり、人事担当者は給与計算も正確にできるように準備が必要です。

まとめ

労働時間のまとめ
多くの中小企業は労働時間を8時間にしている会社が多く見られます。

従業員の定着率アップや求人の募集人数を増やすためには、所定労働時間を短くすることも一つの戦略です。

ぜひ、働き方改革を意識した変形労働時間制の導入も検討した上で取り組んでいきましょう。

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