働き方改革の推進でサテライトオフィスが注目されてきています。サテライトオフィスのメリット・デメリット、5つの成功事例を確認していきながら、丁寧に解説していきたいと思います。また、サテライトオフィスを導入する際のポイント、補助金なども紹介していきますよ。サテライトオフィスを導入することで労働生産性を向上させ、企業と従業員がWin‐Winの関係を築けるようにしたいですね。
サテライトオフィスの定義とは?
サテライトオフィスとは、企業の本社から離れた位置に作られた「小さなオフィス」のことです。働き方改革の一環で、日本の労働生産性を高めるための試みがサテライトオフィスです。サテライトオフィスと支社との違い、サテライトオフィスが注目されている理由などを具体的に解説していきます。
サテライトオフィスと支社との違いは?
サテライトオフィスは本社から離れた位置に作られた小さなオフィス。では、サテライトオフィスは「支社とどう違うの?」と思うと思います。支社は営業所や駐在所などを束ねる大きな事業所であるのに対し、サテライトオフィスは人員もオフィスの規模も小規模のものを指します。
サテライトオフィスが注目されている理由
サテライトオフィスが注目されている理由は、企業が労働生産性を高めるために必要だからです。例えば、サテライトオフィスが従業員の住宅の近くに設けられていれば、通勤時間が短くて済みますよね。
以前は1時間の通勤時間が掛っていたのに、サテライトオフィスができたことで、半分の30分に減ったらどうでしょう?往復で1時間の時間削減です。これにより従業員の疲労感は減り、余った時間を、付加価値を高めることに使うことが可能ですから、生産性を高めることに役立ちます。
サテライトオフィスの種類
サテライトオフィスには、立地によって3つの種類に分けることができます。
都市型サテライトオフィス
本社とは別に、都市にサテライトオフィスを設けるケースが「都市型サテライトオフィス」に当たります。都市にサテライトオフィスを設ければ、外出・出張中の従業員がわざわざ帰社する必要がありません。また、従業員がクライアント先に行きやすくなったり帰りやすくなったり、あるいは自社にクライアントを招きやすくなったりします。後者は、例えば新規に事業を展開するため、都市型サテライトオフィスをショウルームにして、営業促進に役立てることができますね。
郊外型サテライトオフィス
「郊外型サテライトオフィス」は、郊外にサテライトオフィスを設けるケースです。郊外に住居を持っている従業員がサテライトオフィスに通勤できれば、通勤時間を大きく削減することができます。また、従業員のワークライフバランスに寄与する効果を生みます。
地方型サテライトオフィス
「地方型サテライトオフィス」は、地方にサテライトオフィスを設けるケース。地方にサテライトオフィスを設けることで、地方創生に貢献したりBCPに対応したりすることができる効果を生みます。
おためしサテライトオフィスという仕組みも
総務省では、おためしサテライトオフィスというプロジェクトを設け、地方自治体を支援しています。これにより、地方で従業員を働かせたいと考える企業に、地方自治体が誘致してサテライトオフィスを利用し、お試しで勤務してもらうことができます。いきなり地方で働くことに抵抗がある企業でも、おためしサテライトオフィスなら地方で働くことの障碍が低くなり、地方で働くことの良さを知ってもらえますね。
企業がサテライトオフィスを構えるメリット・デメリット
企業でサテライトオフィスを構えることで、どんなメリット・デメリットがあるでしょうか。それぞれ紹介していきます。
メリット
メリットには次の3つがあります。
1.労働生産性が高まる
サテライトオフィスを構えれば労働生産性が高まります。ちなみに労働生産性の定義は以下の通りです。
労働生産性=付加価値/労働投入量(従業員数または時間当たりの労働量)
通勤時間が短くなったり、時間外労働が減ったりすれば、人員を削減しなくても労働投入量を小さくすることができます。労働投入量が小さくなれば、労働生産性は高くなりますよね。サテライトオフィスを構えた時に労働生産性が向上するといわれるゆえんです。
また、通勤時間や時間外労働を削減すれば、それだけ、余分な時間を確保することができます。その間にゆっくり思考したりアイディアを練ったりすれば、付加価値を高められるでしょう。
2.多様な人材を確保する
通勤時間の短さや、新規事業の展開への積極性などは、転職活動中の応募者にとっても好影響を与えます。サテライトオフィスを構えれば従業員の通勤時間が短くなったり、立地によっては新規事業を展開しやすくなったります。これらのことから企業イメージが好転し「この会社で働いてみたいな」という応募者のニーズを喚起することができます。結果的に、サテライトオフィスを構える前よりも多様な人材を確保することに繋がりますよ。
3.BCP対策の効果を生む
サテライトオフィスを構えることで、BCP対策の効果を生みます。本社機能しかなければ、万が一の災害の時には、本社が倒れたら一巻の終わり。サテライトオフィスを構えておけばリスクを分散できる訳ですね。
デメリット
続いて企業がサテライトオフィスを構えるデメリットを解説します。
1.コミュニケーションが不足する
インターネットやチャットなどの普及によって、必ずしも同じ場所にいなくても、コミュニケーションは取りやすくなりました。そうはいっても、対面した交流の方がコミュニケーションが良いのは事実です。サテライトオフィスに勤務している従業員が、本社勤務の従業員ともコミュニケーションを取りやすくするような工夫が必要ですね。例えば、本社の方からサテライトオフィスに積極的にコミュニケーションを図り、あるいは定期的に本社の従業員と会えるようにするなどの仕掛けが必要でしょう。
2.セキュリティ面の問題が発生することも
シェアオフィスをサテライトオフィスにする企業もあると思いますが、その場合はセキュリティにも気を配る必要があります。うっかり機密情報が漏えいしてしまった!なんてことがないようにしなければなりません。
サテライトオフィスの事例と導入する際のポイント
具体的にサテライトオフィスの事例を見ていきましょう。これによりサテライトオフィスがどういうものか理解することが容易になると思います。また、導入する際のポイントも併せてお伝えしていきます。
San San の場合
SanSanは東京にオフィスを構えるITベンチャー企業。2010年より徳島県にサテライトオフィスを構えています。地元志向が強い従業員を採用し、生産性の高い働き方を推進しています。SanSanのサテライトオフィスは、毎朝、Webを通じて本社のチームと「朝会」を実施。それ以外の時間も常に本社とやり取りができるようにしているんですね。これにより本社チームともしっかりコミュニケーションを図っています。
株式会社 えんがわ の場合
株式会社えんがわは東京にオフィスを構えるITベンチャー企業。同社も徳島県にサテライトオフィスを構えました。えんがわは、BCPの観点からサテライトオフィスを設立しました。遠隔地にオフィスを構えたことでITツールを積極的に活用するようになり、業務の効率化に繋がったようですね。
株式会社 アラタナ の場合
株式会社アラタナは宮崎県に拠点を構えるITベンチャー企業です。現在、ゾゾタウンを運営するスタートトゥディグループとなっています。アラタナは、東京の表参道にオフィスを構えています。宮崎に拠点を持つことで、アラタナは、地元志向が強いが宮崎で働ける機会がなかった人材を採用することができるようになりました。
株式会社あしたのチーム
株式会社あしたのチームは、人材コンサルテイング会社です。事業所は全国にありますが、三好・鯖江・松江にサテライトオフィスを構えました。地方創生の観点からサテライトオフィスの設立を推進したんですね。
高島屋
百貨店の高島屋は、全国に20個所のサテライトオフィスを構えています。これにより、多様な人材の確保や従業員のライフスタイルの変化に、柔軟に対応できています。
サテライトオフィスを導入する際のポイントは?
サテライトオフィスを導入するポイントとして、導入の目的を決定することが最優先。目的がしっかりしていないと、どこにサテライトオフィスを設立すべきか、場所の選定もできません。サテライトオフィスに行ける従業員の候補も決めておきます。
目的が決まった後は場所を決めましょう。サテライトオフィスには立地によって3つの種類があると書きました。都市型・郊外型・地方型のいずれにするか、目的に応じて決めて下さい。更に、インフラやネットワークの選定をしていくことで、サテライトオフィスの実現が目に見えてきますよ!
サテライトオフィスを誘致するための取り組みを紹介
サテライトオフィスを誘致するための取り組みを紹介します。
広島県
広島県では使われていない施設をリノベーションし、企業誘致に取り組んでいます。お試しオフィス・お試しモニターツアーなどを行っている他、本格的にサテライトオフィスを構えたい企業に向けたフォロー体制も整っています。
福井県鯖江市
眼鏡の生産で有名な鯖江市ではITのまちづくりを目指しています。複数の企業の誘致に成功しています。中でも「事務職」に目線を絞った点が特徴的で、都市では売り手市場の事務職が鯖江市では買い手市場だったため、企業の誘致に成功しているんですね。事務職として働きたい人材と、雇用したい企業とのニーズがマッチしたのが鯖江市のサテライトオフィスの好例です。
南伊豆町サテライトオフィス
南伊豆町では、「滞在型サテライトオフィス」「循環型サテライトオフィス」といった方法を用いて企業の誘致に励んでいます。
サテライトオフィスの開設支援
最後にサテライトオフィスの開発支援の実態を見ていきましょう。
補助金や助成金制度を紹介
東京都ではサテライトオフィスの補助金として、整備・改修費として1,500万円、運営費として600万円を限度に支給します。また、東京しごと財団ではサテライトオフィス利用事業として250万円を限度に、利用率の半分を助成してくれます。
まとめ
サテライトオフィスの種類、メリット・デメリット、そして事例を確認してきました。働き方改革や労働人口減少の中にあって、これからの企業はサテライトオフィスを大いに検討していくべき内容ですね。