入社するときなどに、企業から身元保証書の提出を求められることがあります。
「身元保証書」という名前からなんとなくどういった書類なのかわかるかもしれませんが、具体的にはどのような役割を持ち、どういった内容となっているのでしょうか。
今回はこの身元保証書の概要から提出する理由、誓約書との違いなどについて解説します。
身元保証書とは
身元保証書とは、その名の通りその人の身元を保証する書類です。主に企業が人材の採用をした際に、採用した人の身元を身元保証人によって保証してもらう際に使用されます。
この身元保証書は身元の保証だけでなく、万が一採用した人が会社に損害を与えてしまった時に、身元保証人に賠償責任を連帯することを約束させるという役割もあります。
会社が身元保証書を用意する理由
企業に入社する際、身元保証書の提出を求められることがあります。これは企業がその人が入社して問題ないのか経歴や素性を確認するという意味合いがあります。
また、先ほども触れているように、身元保証人に賠償責任を連帯してもらうことで、会社としてのリスクを軽減するという目的もあります。ただし。損害賠償が発生した場合、身元保証人だけで全額を支払うのは現実的ではなく、賠償金だけで損害を全てカバーするのはほぼ不可能だと言えます。そのため、身元保証書はどちらかというと身元保証として役割が強くなっています。
身元保証書は入社する際に必ず必要なものか?
身元保証書は、採用や入社の際に必ずしもなければいけないというものではありません。法律では、特に身元保証書の提出は義務付けられていないのです。
そのため、基本的には各企業によって身元保証書の要・不要を判断することになります。また、提出しない企業も珍しくはありません。
誓約書との違いは?
入社の際に提出する書類の中には「誓約書」というものもあります。この誓約書は身元保証書と何が違うのでしょうか。
誓約書とは、就業規則や会社の情報を漏洩しないことなどに対する同意を示すための書類です。その人の素性を保証する身元保証とは全く別の役割を持っています。
会社に入社する以上、基本的に誓約書に同意できないというケースはほぼないかと思います。ただそれでも、提出する際は内容をしっかりと確認しておくようにしましょう。
身元保証書の書き方
基本的には会社から送られてくる身元保証書の内容に合わせて記入すればOKです。記入する際は以下の点を覚えておくといいでしょう。
・日付は提出する日を記入してOK(入社日でも構いません)
・日付の年は和暦か西暦のどちらかに統一する(他の書類も含めて)
・住所は現住所を記入する
・印鑑は認印でOK(保証人が両親の場合は別の印鑑を使うようにする)
・シャチハタは使わない
・保証人の部分は保証人本人に直筆してもらう
記入する際は、以上の点をおさえておきましょう。
身元保証書の書式やテンプレート
身元保証書に関しては、インターネットで検索すればたくさんの書式やテンプレート、記入例などを見つけることができます。「身元保証書 書式」「身元保証書 テンプレート」などで検索してみてください。
以下は身元保証の例です。こちらも参考にしてみてください。
◯◯株式会社
代表取締役社長
××××(名前)
身元保証書
この度、下記の者(本人)が貴社に採用されるにあたり、身元保証人として、本人が貴社の就業規則および諸規則を遵守し誠実に勤務することを保証いたします。
つきましては、万一本人が貴社の就業規則および諸規則を遵守せず、もしくは規律を乱し、故意又は重大な過失により貴社に損害を与えた場合は、本人にその責任をとらせるとともに、身元保証人として本人と連帯して誠実に賠償の責任を負うことを誓約いたします。
令和 年 月 日
<本人>
氏 名: 印
現 住 所:
生年月日:
<身元保証人>
氏 名: 印
現 住 所:
生年月日:
本人との続柄:
身元保証書は全て自分で書くべきか
先ほどの例を見てもわかるように、身元保証書には本人の名前を書く欄と保証人の名前を書くらんがあります。
書類を書くにあたって、保証人の欄も含めて全て自分で記入することはできなくはありません。しかし、保証人の部分に関しては必ず保証人本人が記入するようにしましょう。身元保証書は入社の際に会社に提出する正式な書類の一つなので、面倒だからといって全て自分で書いてしまうと後々大きなトラブルにつながる可能性もゼロではありません。
もし遠方に住んでいる両親を身元保証人にする場合であっても、本人に記入してもらう必要があるため、郵送にかかる日数を考慮して時間に余裕を持って準備を進めるようにしましょう。
身元保証書の保証人について
ここからは身元保証書の保証人についてその損害賠償の責任範囲や誰に頼めばいいのか、頼める人がいないときはどうすればいいのか、といった点いついて解説します。
身元保証人の損害賠償責任の範囲
先ほども触れているように、身元保証書は入社する人の身元を保証するのと同時に、損害賠償が発生した時に保証人に賠償責任を負ってもらうという役割もあります。
ただし、保証人による賠償責任は限度が決められています。損害賠償に関して訴訟になった場合、実際に賠償額を判断するのは裁判所ですが、基本的には全額賠償するのではなく、軽減されるケースが多くなっています。
ちなみに、身元保証書の効力は特に定めがなければ3年、定めがあっても5年までとなっているため、それ以上の期間が経っている場合、身元保証人は損害賠償の責任を負うことはありません。
身元保証書の保証人を親に依頼する
身元保証書の保証人に関しては親に依頼するのが一般的です。企業によっては保証人を2人必要とするケースもありますが、その場合は父親と母親に保証人になってもらえば構いません。
保証人を妻に依頼する
両親以外にも例えば、妻などの配偶者に保証人をお願いすることができます。もし配偶者が専業主婦(主夫)だったとしても、企業から保証人に関する指示などがなければ保証人になってもらうことが可能です。
両親が遠方で保証書を記入してもらうまでに時間がかかる、といった場合は配偶者にお願いするのも1つの選択肢だと言えます。
保証人がいない場合
両親がすでに亡くなっていて連絡の取れる親族もいない独身の人だと、保証人を頼める人がいない可能性もあります。そういったときは、まず会社に相談するようにしましょう。
会社の判断によって、保証人を友人に頼んでもOK、など会社側が対応策を支持してくれるはずです。
身元保証書について知っておくべきポイント
最後に、身元保証書についておさえておきたいポイントを2つ紹介します。
保証期間
先ほども説明しているように、身元保証書の保証期間は基本的に3年、最長でも5年となっています。身元保証書を更新することもできますが、3年ないしは5年経過している時点で、ある程度の信頼関係は築けているため、身元を改めて補償してもらう必要はないと考える企業も少なくないようです。
契約内容に変更があった場合
例えば、職務内容が変わった、勤務先が変わったなど、契約内容に変更があった場合、企業は身元保証人にその旨を通知しなければいけません。これは、契約内容の変更が身元保証人の責任にも大きく影響を与えるためです。なお、身元保証人は通知を受けたうえで身元保証人を解除することも可能です。
まとめ
今回は、身元保証書の概要からなぜ必要なのか、身元保証人の概要などについて解説しました。
身元保証書は企業にとってはリスクを軽減するためにも欠かすことのできない書類です。
提出させる義務はありませんが、入社予定者に身元保証人を用意してもらうことで、素性を保証してもらえます。
テンプレートや書式はインターネットでダウンロード可能なので、身元保証書を導入したい企業は一度調べてみるといいでしょう。