賃金台帳とは?記載が必要な項目や保存期間について

賃金台帳の記事

企業は給料を支払いますが、給料の支払い状況を記載する書類のことを賃金台帳と言います。
この賃金台帳は作成が義務付けられているものです。今回は、賃金台帳の概要から役割、作成時の注意点や書式について解説します。

目次

賃金台帳とは

賃金台帳とは
賃金台帳とは、簡単に言うと社員の給与の状況を記録している書類のことです。賃金台帳は企業単位ではなく、事業所ごとに作成・保管することになります。

賃金台帳の役割。作成は義務か?

賃金台帳の大きな役割は、労働者が働いたのかという記録と、それに対して企業がどのくらいの給料を支払ったのかという記録の関係性を明確にし、保管することです。

賃金台帳の作成に関しては、労働基準法によって定められているため、作成は義務となっています。もし作成および保管を怠ってしまうと30万円以下の罰金が科されます。
また、作成は正社員のものだけでなく、派遣社員や契約社員、アルバイトなど全従業員の記録を作成しなければいけません。企業に対して労働基準監督署から調査が入った場合は、必ず賃金台帳がチェックされます。

役員の賃金台帳について

役員は会社のメンバーの一員ではありますが、いわゆる労働者ではありません。そのため、賃金台帳の作成は不要だと思うかもしれませんが、役員に関しても作成が必要となります。

これは、役員であっても役員報酬がゼロでなければ、健康保険や厚生年金の被保険者となるためです。被保険者となると保険料の控除額が発生するため、その記録を残しておく意味でも役員の賃金台帳の作成は必要となります。

賃金台帳と給与明細の違い

従業員の給料の支払い状況を記録している賃金台帳は、一見すると給与明細と同じものと思えてしまうかもしれません。
しかし、賃金台帳と給与明細は別のものだと考えてください。

賃金台帳はその作成が「労働基準法」によって義務付けられているもので、作成と同時に保管もしなければいけません。一方の給与明細は、労働保険徴収法や健康保険法、厚生年金保険法、所得税法などによって保険料や所得税の額を従業員に通知するために作成が義務付けられているものです。また、会社が保管しておく必要はありません。

このように、根拠となる法律が異なることから、賃金台帳と給与明細は別のものだと判断することができます。

賃金台帳は法定三帳簿のひとつ

賃金台帳は法定三帳簿のひとつ
賃金台帳は「労働者名簿」と「出勤簿」と合わせて法定三帳簿と呼ばれています。労働者名簿、出勤簿ともに労働基準法によって定められているものです。

それぞれについてどういったものなのか確認していきましょう。

労働者名簿

労働者名簿とは労働者を雇った日や名前など従業員の情報を記録した書類のことです。こちらも事業所ごとに作成が義務付けられています。

労働者名簿に記載する項目には、以下のようなものが挙げられます。

・氏名
・生年月日
・履歴
・性別
・住所
・従事する業務の種類
・雇用した年月日
・退職した年月日と事由
・死亡した年月日と原因

これらの項目以外にも電話番号や被扶養者の名前、緊急連絡先などを記載している企業もあります。

ちなみに、この労働者名簿は、賃金台帳と一つにまとめて作成することもできます。ただし、この場合必要な項目を全て網羅している必要があるので注意してください。

出勤簿

出勤簿はその名の通り、従業員が出勤した日や出勤した時刻、退社した時刻を記録した書類のことです。企業によって手書きのものから、タイムカードによるもの、オンライン上で行うものなど様々な形態があります。

出勤簿は賃金台帳の記載項目である労働日数や労働時間などの記録が正しいかどうかを証明する書類となります。

賃金台帳を記載する際の注意点

賃金台帳を記載する際の注意点
ここからは、実際に賃金台帳を作成する際におさえておきたい注意点について解説します。

賃金台帳に記載が必要な項目

賃金台帳に記載する項目に関しては労働基準法で以下のように定められています。少なくとも下記の項目に関しては記載しなければいけません。

・氏名
・性別
・賃金計算期間
・労働日数
・労働時間数
・時間外労働時間数
・休日労働時間数
・深夜労働時間数
・基本給の額
・各種手当の額
・賃金控除額

ちなみに、定期券や現物支給などお金以外で支払うものがある場合、それに関しても記載しなければいけません。

賃金計算期間を記載する場合

賃金台帳に記載しなければいけない項目の1つに賃金計算期間があります。これは、給与の計算をする締め日までの1ヶ月間のことです。

例えば、毎月10日が給与計算の締め日であれば、給与計算期間の部分には「◯月11日〜◯月10日」と記載します。同様に月末締めであれば「◯月分」や「◯月1日〜◯月30日」と記載することも可能です。

なお、日雇い労働者に関しては賃金計算期間の記入は不要です(1ヶ月以上継続的に使用している場合を除く)。

労働日数と労働時間数を記載する場合

賃金台帳の記載項目の1つである労働日数と労働時間数はそれぞれ働いた日数と時間を記載します。
この時、労働日数には休日出勤した日を含めるのを忘れないでください。また、同様に労働時間数には休日出勤日の労働時間数のほか時間外労働時間数や深夜労働時間数も含める必要があります。

時間外・深夜・休日労働時間数を記載する場合

時間外労働時間数、深夜労働時間数、休日労働時間数を記載する場合は以下の点を覚えておいてください。

・深夜労働時間数は午後10時〜午前5時まで間の労働時間のこと
・経営者などの管理監督者は時間外労働時間数、休日労働時間数は記載不要(時間外労働や休日労働が適用されないため)
・ただし、管理監督者でも深夜労働時間数は記載する

基本給、手当て、控除の金額を記載する場合

基本給や手当てに関してはその金額を記載します。また、控除に関しては、健康保険料や厚生年金保険料、所得税、住民税のほか労使協定で定められた項目の金額を項目ごとに整理して記載してください。

賃金台帳のテンプレート・様式

賃金台帳の様式は、労働基準法によって定められていますが、必要な項目を網羅していれば、項目の追加は可能です。
様式に関しては、厚生労働省のホームページからダウンロードすることができます。以下のURLは、それぞれ日雇い労働者を除いた一般労働者向けのものと、日雇い労働者用のものです。

常用労働者用(様式第20号)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/pdf/d.pdf

日雇い労働者用(様式第21号)
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/roudoujouken01/pdf/e.pdf

賃金台帳の記入例。手書きで作成しても問題ないか?

賃金台帳の記入例に関しては、インターネットで検索すると数多くのものが出てきますが、ここでは厚生労働省のホームページに記載されているものを紹介します。以下のURLのページにアクセスし、2ページ目を確認してみてください。

あわせて読みたい

ちなみに、賃金台帳は手書きで作成することも可能です。ただ、パソコンを使用して仕事をする機会が多い今では面倒に感じる人も多いでしょう。また、データの方が管理が容易に行えるというメリットもあります。

賃金台帳の保存期間

賃金台帳の保存期間
賃金台帳には保存期間が定められています。この期間は事業所で保管しておかなければいけません。

賃金台帳の保存期間について

賃金台帳の保存期間は労働基準法によって3年間と定められています。ちなみに、賃金台帳には年末調整関係の項目を追加することもできます。こうすることで源泉徴収簿として使うことができるのですが、源泉徴収簿として使用すると国税通則法にもとづき保存期間が7年間になるので注意してください。

保存方法や保管する際の注意点について

賃金台帳を保管する際は以下の点について覚えておいてください。

・保存期間の起算日は賃金台帳に「最後の記載をした日」
・源泉徴収簿として使用する場合の起算日は「法廷申告期限」

賃金台帳に関しては、従業員の退職から3年後に破棄できると認識しておきましょう。

まとめ

賃金台帳のまとめ
今回は、賃金台帳の概要から役割、作成時の注意点などについて解説しました。賃金台帳は作成が義務付けられているものであり、労働者の労働時間と給与の関係性を明確にするためにも欠かすことのできないものです。記載する項目は法律によって定められているので、抜け漏れのないように注意しましょう。

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