会社が企業活動を行う上で、社員に評価を下すことは欠かすことができません。しかし、評価と一言で言っても、その評価方法には様々な方法があります。そこで、この記事では、評価方法の1つである絶対評価についてその概要からメリット・デメリット、他の評価方法との違い、具体的な事例などについて解説します。
絶対評価について
まずは、絶対評価がどのようなものなのか、その概要から確認していきましょう。
絶対評価とは
絶対評価とは、事前に定められた評価基準に沿ってその人を評価する方法です。評価基準をクリアしていれば、他の人や他の組織に関係なく、一定の評価が与えられます。明確な基準で評価を下すため、評価者の影響は受けません。
絶対評価の例
例えば、営業部門において、1ヶ月の契約件数が10件以上であれば、最高評価が得られる場合、営業部門内の全員が10件以上の契約を取ってくれば全員が最高評価を受けることになります。逆に誰も10件に届いていなければ最高評価を受ける人は0人です。
相対評価とは?絶対評価との違いは?
相対評価とは、他者との比較の中で評価される評価方法です。
あらかじめ「最高評価は全体の●%、時点が▲%、最低評価が★%」と言った具合に分布が決まっているのが特徴です。
そのため、例えば契約件数が同じ10件でも、相対評価だと評価のランクが異なる可能性があります。絶対評価は、評価基準をクリアすれば一定の評価が得られましたが、相対評価では他者の能力や成績なども自身の評価に関わってくるのです。
絶対評価のメリットとは?
人事評価制度の中で、相対評価と双璧を成すのが絶対評価。絶対評価のメリットを見ていき、絶対評価とはこういうものだという、イメージを掴みましょう。
個人一人一人の状況や結果で評価できる
人事評価制度における絶対評価というのは、社員個人の行動や、目標達成度によって評価していく制度です。したがって、社員個人の状況や結果で評価されます。
例えば、営業部は全体的に成績が悪かったから、相対的に比較すると自分の成績が良かった。だから自分の評価は高くなった。これが相対評価。でも絶対評価なら、個人が掲げた目標の難易度やそれに対してどのようにがんばったのか、個人個人をしっかりと見ていきます。その上で評価するので、単に成績が良かったとか悪かったとかいった程度のことだけで評価をしません。社員個人の状況や結果で評価するんですね。
相対評価よりも評価される側が理解しやすい
絶対評価は相対評価と違って、社員個人の行動や目標によって評価するので、評価した理由を相手に説明しやすいです。フィードバック面接で、上司が、「こういう理由でA評価なんだよ」といった説明が部下に納得しやすくなります。
課題の発見や改善につなげやすい
評価の理由付けがはっきりしているということは、社員個人の課題の発見や、課題の改善にもつなげやすくなります。例えば開発部の上司が部下に対する人事考課のフィードバック面接をしている時の場面です。
「今期は開発が遅延したことが課題となって評価が高まらず、C評価だった。開発が遅延したのは営業からのヒアリングが遅くなったことが原因だ。それなら来期は営業へのヒアリングを増やして納期通りに開発するように!」ということが言えます。人事考課によって、課題の発見や、課題の改善につなげやるくなるということです。
絶対評価のデメリットや問題点
次に絶対評価のデメリットや問題点を見ていきましょう。
全体のバランスを考慮するべき評価には向いていない
絶対評価は社員個人をしっかりと評価します。反面、全体のバランスを考慮するべき評価向きではありません。上司が人事考課の訓練を受けていなかったり、いい加減な評価をしてしまったりすると、部下全員が軒並みA評価になることも理論上はあり得ます。
社員個人をそれぞれ見ていくには、人事考課の時だけ見れば良いのではなく、日常的に、重要な行動や目標を達成するためのプロセスを確認するところまで突き詰められれば理想的。でも、たいていはそこまでできないので、人事考課の際だけ評価する。その結果、全体のバランスが崩れたいびつな評価になりやすいのです。
評価する人の価値観などが反映されやすい
絶対評価は、評価する人の価値観が反映されやすい評価制度です。「私は経験豊富なベテラン社員を評価する」という価値観の上司なら、キャリアが長い社員は高評価になりやすくなります。
評価基準によって結果が大きく変わる
絶対評価は、評価基準によって評価結果や全体のバランスなどに影響が出ます。ですので、絶対評価を採用するのであれば、定期的な評価基準の見直しが必要です。そんなに頻繁に見直さなくても良いですが、ずっと能力評価をしてきた企業なら、ジョブ型の評価制度に変えるなどといった評価基準の見直しを考慮する必要があるでしょう。
360度評価とは
絶対評価、相対評価以外の評価方法として360度評価があります。これは、上司をはじめとして同僚や部下さらにはクライアントなどあらゆる立場の関係者が評価を下すという方法です。
絶対評価との違い
絶対評価の場合、1つの明確な評価基準がありますが、360度評価では複数人が評価を下すことになるため、基準は1つではありません。そのため、たとえ好成績を残したとしても、関係者からの評価が低くなる可能性があります。また逆も然りです。
360度評価のメリット
上司の立場からでは見えない部分を同僚や部下など他の立場の人が評価するため、特に人物面での多面的な評価が可能となります。
また、多面性が確保されることで客観性も高まります。そのため、評価される人も納得しやすくなるでしょう。さらに、上司の評価だけでは見えてこなかった課題が出てくる可能性もあります。
360度評価のデメリット
一方のデメリットとしては、誰が評価をするのか評価者を選定・依頼しなければならない点が挙げられます。また、評価の数が多くなる分最終的な評価が出るまでに時間がかかります。また評価をする人同士が結託して評価内容を決める恐れもあります。
ユニークな評価制度を導入している企業の事例
ここまでは、絶対評価、相対評価、360度評価について解説してきました。ここからは、これらの評価方法以外のユニークな評価方法を取り入れている企業の事例を紹介します。
1:フロムスクラッチ
1つめは、マーケティングプラットフォームの開発・提供を手掛けるフロムスクラッチの事例です。こちらの会社では、「CREW」という評価制度を導入しています。CREWは、Commitment of Recruiting Elites to be World-classの略で、社員の採用活動への貢献度を評価する制度です。
会社に新しい人材を連れてきた人を評価し、一定の報酬を与えるなどしています。この制度には、自社のいいところを他の人に語る機会が設けられ会社に対するオーナーシップを発揮できるようになるというメリットがあります。また、なかなか転職市場に出てこない人材にアプローチできるのも大きな特徴です。
2:Plan Do See
Plan Do Seeは、ホテルやレストランの運営、ウエディングのプロデュースなどを行う会社です。同社では各地に店舗を持ち、社員数は500名規模となっています。
評価は、各店舗の責任者が「評価会議」と呼ばれる会議に出席して2日間かけて行われます。各店舗の責任者は自店舗の社員の評価を他の店舗責任者にPRします。それに対して他の責任者や人事担当者が議論をして最終的な評価が決まるという仕組みです。
3:カヤック
地方創生やゲーム、住宅など様々な事業を展開するカヤックでは、「サイコロ給」という給与制度を設けています。これは、社員がサイコロを振って自身の給与を決めるというものです。
ただし、給与全額がサイコロによって決まるのではなく、「基本給×(サイコロの出目)%」が、基本給に上乗せされる形で支給されるため、給与が減ることはありません。
この評価制度の背景には、人の下す評価はそもそもいい加減、という考えがあります。評価自体がいい加減だから、給与も天に任せていい加減に決めてもいいのでは、ということで始まった制度がサイコロ給です。
4:スタートトゥデイ
ZOZOTOWNの運営を行うスタートトゥデイ(現株式会社ZOZO)は、点数による評価がありません。これは上司によって下されるその点数の根拠が不明瞭であるためです。
点数評価はありませんが、上司の判断によって毎月の昇給・昇格ができる仕組みになっています。そのため、上司は部下と密なコミュニケーションをとり、成長具合を把握することが求められます。
5:未来工業株式会社
電気設備資材や給排水設備などの製造・販売を手掛ける未来工業株式会社では、社員が何かしらの提案をすると1件ごとに500円がもらえる仕組みになっています。どのような提案でも500円がもらえ、毎月1件ずつ提案し、それを1年間継続すればコンスタント賞として賞品をもらうことも可能です。
実際に提案が採用された場合は、最大で3万円の報奨金が支給されます。
この制度の背景には、いい提案をするためにはまず質よりも量をこなすことが大切、という考えがあります。
提案すれば必ず500円がもらえるため、社員のモチベーションもアップしやすく、それでいて企画立案のスキルも向上していくという制度です。
まとめ
今回は、絶対評価を中心に各種評価の概要からメリット・デメリット、具体的な事例などについて解説しました。絶対評価、相対評価、360度評価にはそれぞれメリット・デメリットがあるため、導入する際は自社の状況に適したものを選ぶ必要があります。また、事例で紹介したように、ユニークな評価制度を導入することで社員のモチベーションを向上させることも可能です。