みなし残業代とは?計算方法や時間の上限などを整理します

みなし残業代の記事
仕事をしていると残業をすることがあります。企業によっては、この残業することがあらかじめ想定されているケースがあります。その想定されている残業に対する残業代のことをみなし残業代と言います。この記事ではみなし残業代について詳しく解説します。
目次

みなし残業代について

みなし残業代について
まずは、みなし残業代がどのようなものなのか、概要を確認していきましょう。

みなし残業代とは

みなし残業代とは、あらかじめ、一定時間の残業を企業が想定して、その残業に対して支払われる残業代のことです。みなし残業代は毎月固定の額が支払われます。企業によっては「定額残業代」や「固定残業代」といった呼び方をすることもあります。

みなし残業代は、固定なので残業時間がたとえ想定される時間より少なくても金額が少なくなることはありません。また、想定時間より長引いた場合はその分残業代が上乗せされます。

みなし残業とみなし労働時間制の違い

みなし残業と似た言葉にみなし労働時間制というものがあります。みなし労働時間制とは、労働時間の産出が難しい仕事に従事しているときに、特定の時間を労働したものとみなす制度です。例えばみなし労働時間制で8時間労働したものとみなされた場合は、たとえ残業をして10時間働いたとしても残業代は発生しません。「みなし○○」という言葉を耳にした時は、みなし残業なのかみなし労働時間制なのかちゃんと聞くようにしましょう。

みなし残業は違法?

ここまで読んで、「事前に残業を想定しているみなし残業は違法なのではないか?」と思った人もいるかもしれません。しかし、企業は労働基準法の内容に違反していなければ独自で就業規則を決めることができるため、労働基準法に遵守した就業規則に定められたみなし残業であれば違法にはなりません。

違法かどうかを見分ける際のポイント

みなし残業は違法にならないケースもありますが、中には違法になるケースもあります。では、それを見分けるにはどうすればいいのでしょうか。

見分ける際のポイントの1つがみなし残業代の金額や残業時間が明確に記載されているかどうかという点があげられます。みなし残業をする場合は就業規則等にその胸が記載されていなければいけませんが、「給与にはみなし残業代を含む」「手当はみなし残業代の性質を持つ」など曖昧な表現となっている場合は注意が必要です。

また、みなし残業代を含めた給与をもらった結果、その地域の最低賃金を下回っているケースがあります。この場合も違法となります。

みなし残業代の計算について

みなし残業代の計算について
みなし残業代がいくらなのか、については計算することができます。続いてはその計算方法などについて解説します。

みなし残業代の基本給とは?

計算方法を確認する前に、みなし残業代と基本給の関係について確認しておきましょう。
みなし残業代の中には、基本給の中にみなし残業代が含まれているものもあります。基本給の一部がみなし残業代になるというものです。例えば基本給が24万円に設定されている場合で、基本給を19万円にして5万円をみなし残業代にすれば企業が支払う金額に変わりはありません。
このように、みなし残業代を込みにした基本給を設定している会社も存在します。
もちろん、基本給とは別に設定している会社もあります。

みなし残業代の計算方法

では、みなし残業代の計算方法について解説します。ここでは、基本給をみなし残業代込みで25万円、みなし残業時間を45時間、月の労働時間が176時間(1日8時間で22日間勤務)という設定で計算したいと思います。

まずは、残業時間分を含めた時給を以下の式で計算します。


250,000÷(176+45×1.25)≒1076円
※1.25は法定時間外労働の割増率

次に45時間の残業代を計算します。

1076円×1.25≒1,345円
1,345円×45時間=60,525円


以上の計算から、みなし残業代は約6万円ということがわかりました。つまり純粋な基本給は19万円で、みなし残業代の6万円が加わり25万円になっているのです。もしこの19万円という金額がその地域の最低賃金を下回っていると違法になります。

みなし残業に上限はある?45時間はOKか?

みなし残業の上限は通常の残業時間と同じです。残業に関しては36協定によって1ヶ月間で45時間、1年間で360時間と決められています。そのため、基本的にはみなし残業でもこの時間を守る必要があります。

ちなみに、後述するように特定の条件下では1ヶ月45時間の上限を超えることができます。残業時間の延長は何時間でも構わない仕組みになっています。ただし、45時間以上にできるのは1年のうち6回までです。

上限を増やす場合に必要なこと

みなし残業の上限増は、特別な事情があるときに限って可能となります。その特別な事情とは以下のような場合です。


・予算や決算の処理
・ボーナス商戦などの繁忙期
・納期が迫っている
・リコールなどのクレーム対応

みなし残業代のメリット・デメリット

みなし残業代のメリット・デメリット
みなし残業代には、メリットもありますがデメリットも存在します。続いては、メリット・デメリットについて解説します。

みなし残業代のメリット

みなし残業代のメリットとして挙げられるのは、想定した残業時間を下回っても一定の残業代が与えられる点です。例えばみなし残業が45時間で設定されていた場合に、残業時間が30時間だったとしても、みなし残業代は全額支払われます。
残業時間が少ない方がより効率的に高い給与がもらえることになるため、従業員の生産性向上につなげることも可能です。

みなし残業代のデメリット

一方のデメリットとしては、会社が「残業代を払っているのだからその分は働いてもらう」という考えに陥りやすい点が挙げられます。また、社員からしてみれば、みなし残業代によって基本給が高く見えても、実は基本給が低いということに気づきにくいという点もデメリットになるでしょう。

みなし残業の注意点

みなし残業の注意点
最後に、みなし残業を利用する際の注意点について解説します。

最低賃金を確認する

先ほども触れているように、基本給にみなし残業代を組み込んだ結果、みなし残業代を除いた純粋な基本給だけだと最低賃金を下回る可能性があります。そのため、先ほど紹介した計算方法でみなし残業代を除いた基本給を求め、時給を算出してみてください。自分が働く地域の最低賃金を下回っていると違法になります。

就業規則などで詳細をしっかりと確認する

みなし残業を行う場合、何時間のみなし残業があるのか、みなし残業代はいくらなのかを就業規則などで明確に示さなければいけません。また、労働契約書でも同じように時間や金額を明示するようにしましょう。

実働時間がみなし残業時間よりも少ない場合

先ほども触れているように、残業時間がみなし残業時間よりも少なくても、もともと決められたみなし残業代は支払われます。また、逆に超過した場合は、超過分の残業代を別途支払ってもらえます。

みなし残業代に深夜割増はあるのか?

深夜残業に関しては、通常の残業代(時給を1.25倍した金額)と深夜割増として時給に0.25を乗じた金額を支払わなければいけません。そのため、企業側はみなし残業代であっても、深夜割増分については別途支払うことになります。

まとめ

みなし残業代のまとめ
今回は、みなし残業代について、その概要からメリット・デメリット、具体的な残業代の算出方法などについて解説しました。みなし残業代を取り入れている企業は少なくありません。転職活動を行う際などは求人情報をしっかりと読むようにしましょう。その時みなし残業代を除いた金額が最低賃金を下回っていると違法となるため、そういった会社は避けた方がいいかもしれません。

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