自己都合による退職をした場合、退職金や失業保険はどれくらい受け取れるのでしょうか?
退職には、「自己都合退職」の他に「会社都合退職」があります。
それぞれ失業保険の支給開始日と給付日数が異なりますので違いを知っておきましょう。
この記事では、損をしない退職をするために、自己都合退職と認められる正当な理由を見ていきましょう。
自己都合退職について
退職には退職原因の所在により、「自己都合退職」と「会社都合退職」の2つのパターンがあります。
自己都合退職とは
「自己都合退職」とは、労働者側が自分の意思や都合で退職を申し出ることをいいます。
自分の意思や都合とは、転職、結婚、妊娠、出産、引っ越し、家庭の都合などが挙げられます。
会社都合退職とは
「会社都合退職」とは、会社側が経営不振、リストラ、倒産といった理由により、労働契約を解除することです。
労働者に退職を余儀なくさせたり、労働者が早期退職制度に応募して退職した場合も会社都合退職となります。
会社都合退職に該当する正当な退職理由
会社都合に該当する正当な退職理由は以下の通りです。
・会社の倒産(破産、民事再生、会社更生、手形取引の停止等)
・事業所単位で1カ月に30人以上の離職予定、もしくは会社の3分の1を超える人の離職
・事業所の廃止
・解雇(違反・違法行為などを起こした際の懲戒解雇は自己都合退職扱い)
・会社側から直接もしくは間接的に退職の勧奨を受けた場合(退職勧奨)
経営悪化により、倒産のリスクがあると自分で判断して退職を申し出た場合は、自己都合退職です。
会社都合退職のメリット・デメリット
会社都合退職のメリットは、会社から「解雇予告手当」を受け取れる可能性があることです。
会社側は労働者に対して、離職日の30日以上前に解雇を予告する義務があります。
予告がなかった場合は、従業員は会社から30日分以上の平均賃金を解雇予告手当として受け取ることが可能です。
また、会社都合退職は自己都合退職よりも失業保険をもらえる日数と金額が多く設定されています。
会社都合退職のデメリットには、転職活動において不利になる可能性があることです。
「会社都合による退職」と履歴書に記入した場合、
採用担当者はその理由を確かめるはずです。
会社の倒産は個人の力ではどうにもならないので問題にはなりません。
しかし、解雇の場合は、人間関係のトラブルがあったのか、就労態度の問題、営業成績の実力不足などが考えられます。
一度で会社都合退職をすると、いつでも経歴上に「会社都合退職」と記入しなけらばなりません。
転職活動においては、自己都合退職と比べて、より慎重に対策を考える必要があります。
自己都合退職のメリット・デメリット
自己都合退職のメリットとデメリットはどうでしょうか?
自己都合退職のメリット
自己都合退職の場合は、失業手当は7日間の待機期間に加えて、3カ月間の給付制限期間があります。
履歴書の退職理由は「一身上の都合」として記載するだけで問題ありません。
自己都合退職は、転職活動においては退職理由を深く追及はされないこともメリットです。
自己都合退職のデメリット
自己都合退職すると、失業給付金の支給を受けるまで3ヶ月の「給付制限」があります。
ハローワークへの申請を済ませてから、最低でも待機期間は7日間待つ必要があるため、最速で3ヶ月と7日後に支給となります。
自己都合退職の場合は、会社都合退職よりも退職金が減額され、給付期間も短くなるのもデメリットと言えます。
詳しくは、会社の就業規則を確認してください。
会社都合なのに退職願などが求められた場合
悪質な企業の場合は、会社都合の場合でも労働者に退職願や退職届の提出を求めて、自己都合退職扱いにしてしまうケースがあります。
会社都合退職の場合は、退職願や退職届を提出する必要はありません。
不当に自己都合退職扱いにされることを避けるためにも、退職願や退職届を求められたら、断ることが大切です。
良識のある会社でも退職勧奨の際には、手続き上の理由で退職届の提出を求められることがあります。
会社都合退職の通知書を求めて証拠を残しておいたり、退職届には「貴社、退職勧奨に伴い」と記入すれば、トラブルを予防できます。
自己都合退職における正当な理由について
自己都合退職における正当な理由の例を見ていきましょう。
正当な自己都合退職と認められた場合
自己都合退職における正当な理由と認められるには
「就業規則」を確認して退職を申請します。
民法には雇用期間がない社員はいつ退職を申し出ても問題ないと定められています。
ただし、会社の就業規則に則って申告する必要があるので、前もって退職の意志を伝えることが大切です。
正当なものとして認められる理由は?
自己都合退職における正当な理由は、より良い条件を求めて転職したい場合、転居・結婚・介護・病気療養といった退職も挙げられます。
自己都合退職に関して知っておきたい7つのこと
自己都合退職における7つのチェックポイントを見ていきましょう。
1. 給付制限が免除される特殊なケースがある
自己都合退職には、「特定理由離職者」として給付制限が免除される特殊なケースがあります。
・親の死亡によって家庭状況の急変した場合
・30日以上の長期間にわたる家族への看護や介護を行っていた場合
・結婚や事業所の移転などにより、往復の通勤時間が4時間以上となり通勤が難しくなった場合
・医師の判断で退職したほうが良いとアドバイスされていた場合
「特定理由離職者」の認定は個別の事例によって異なり、必要書類の提出が求められます。
詳細はハローワークでご相談ください。
2. 自己都合退職の場合、申し出は何日前にするべきか
労働者の都合による退職について、労基法上は何の定めもありません。
民法627条には、雇用契約の解約に関する定めがあり、雇用期間の定めがない場合は、退職日の2週間前までに申し出るという規定があります。
月給制により勤務している場合は、賃金締切期間の前半に申し出れば、賃金締切期間の末日に退職となります。
賃金締切期間の後半に申し出れた場合は、次の賃金締切期間の末日が退職日です。
3. 再就職手当について
雇用保険に加入していた場合、一定の期間で失業保険を受け取ることができます。
満額の失業保険を受け取るために失業期間が長くなるケースを防ぐために再就職手当があります。
失業保険を受給している期間中に、安定した職業への就職が決まった場合に支給される手当です。
再就職手当は、退職後に早期の再就職を促進するための制度なので、早く就職先が決まるほど支給額が増えます。
4. 自己都合退職の場合の履歴書
退職届を出して辞めた人、自己都合退職による履歴書の書き方は「一身上の都合により退職」と記入します。
退職した年月と「一身上の都合により退職」と記入します。
2009年月 ◯◯◯◯株式会社 入社
2014年月 一身上の都合により退職
退職理由の具体的な内容は、職務経歴書と面接で採用担当者に伝えます。
5. 自己都合退職する際の送別会について
自己都合退職する際に、送別会を開いてくれる場合は、有り難く参加する、または丁重に早目に断る選択肢があります。
お断りする場合は、日時や会場が決まる前に早めに
伝えることがマナーです。
例えば、「自己都合の退職のため、送別会を開いていただくには心苦しく、お気持ちだけ頂きます。」
と伝えましょう。
6. 自己都合退職後の再雇用について
再雇用とは、一度退職した社員を出戻りで雇用することです。
即戦力を求める企業は、自社と仕事内容に理解が深い再雇用をして、退職前と同職種への配属するケースがあります。
採用活動のコストを削減できて、研修が必要ないため再雇用ケースは増えてきています。
7. 自己都合退職する人への餞別や贈り物について
お世話になった人へ餞別や贈り物をする場合のマナーを見ていきましょう。
定年退職者も含む退職者の餞別は、現金が最も定番です。
退職者へのせんべつの相場は、同僚の場合は3,000円〜10,000円、上司へは5,000円〜20,000円です。
転居を伴う転職の場合は、新居で使っていただけそうな生活用品、カタログギフト、商品券も良いです。
せんべつにかけるのし袋の水引は、紅白ちょう結び、表書きは御餞別、祝定年御退職、御礼、御祝などです。
まとめ
自己都合退職と会社都合退職は、失業保険と退職金の受取りが異なりますので違いを理解しておきましょう。
退職勧奨を承諾して、自分から退職を申し出た場合は、自己都合退職もしくは合意解約となります。
この場合、会社都合退職にはならず自己都合退職となるので要注意してください。