賞与とは?決算賞与との違いは?税金などの計算方法も含めて説明

賞与とは社員の誰しもが心待ちにしているものです。一方で経営者にとっては通常時よりも多額の給与を支給しなければならず、負担がかかるものでもあるでしょう。今回の記事では賞与そのものの説明や支給に伴う税金の平均額などに関して説明します。
目次

賞与とは?

賞与とは?

賞与とは、毎月支払われる給与とは別に支払われる特別な給与のことです。

法律では「賞与とは、定期又は臨時に、原則として労働者の勤務成績に応じて支給されるものであって、その支給額が予め確定されていないもの」と定義されています。

賞与のほかに「ボーナス」「特別給与」と呼ばれることも多いです。

賞与の算出方法は?

賞与の算出方法に明確な決まりはないため、勤めている企業によって異なります。

しかし多くの場合、「給与連動方式」によって賞与の支給額が決定されます。これは毎月支払われる基本給に支給率をかけて賞与を算出する方式です。

「賞与は基本給の3ヶ月分」といった話をよく耳にすることも多いかと思いますが、この場合賞与は給与連動方式によって決定されています。

その他には賞与が一定額である「定額方式」や、各社員の評価やスキルによって変動する「利益配分方式」などが挙げられます。

賞与の支払い義務は?

多くの企業が導入している賞与ですが、支給することを法律で義務付けられているわけではありません。

しかし就業規則や労働協約、労働契約に明記されている場合には支払いを行う義務が発生します。

もし現在転職を考えている方がいれば、就業規則などに賞与に関する記載が明記されているかよく確認するようにしましょう。

賞与が支払われる時期は?

法律で支払いが義務付けられていない以上、賞与の支払い時期も明確な定義はありません。

しかし、多くの企業が夏と冬の年2回に賞与の支払いを行っています。

四半期決済の企業の場合は決済時期に合わせて年4回賞与の支払いを行うことが多いです。

賞与の平均は?

厚生労働省の調査によると、2018年の夏季賞与の平均額は383,879円、冬季賞与の389,926円となっています。

若干ではありますが、冬季給与の方が賞与の支給額が大きいようです。

賞与は業種によって差が大きいことが特徴としてあげられます。

夏季賞与を例に挙げると、最も平均賞与が多い情報通信業の平均賞与額が691,269円であるのに対し、最も平均賞与が少ない飲食サービス業の平均賞与額は68,641円です。

また事業所規模によっても違いがあり、従業員500人以上の企業の平均賞与額は665,818円であるのに対し、従業員5〜29人の企業の平均賞与額は264,883円となっています。

参考リンク:厚生労働省 毎月勤労統計調査(全国調査・地方調査)

決算賞与とは?

決算賞与とは?

決算賞与とは、決算が終わった後に支払われる賞与のことです。

企業の業績が想定よりも良く、大幅な利益が見込める場合に支払われます。

そのまま大幅な利益を留保した状態で申告を行うと、徴収される税金も高額となるため企業の節税対策としても用いられます。

しかし会社の利益を従業員への臨時ボーナスとして還元するため、従業員のモチベーションアップにつながることは間違いないでしょう。

決算賞与の算出方法は?

先述したように決算賞与は企業が大幅な利益が見込める場合に支払われるものであるため、明確に定められた算出方法はありません。

想定されていた利益を100%として上回った%分を分配するという算出方法が用いられることもありますし、また各従業員の業績に応じて配分を決定する算出方法を用いる場合もあるようです。

決算賞与とボーナスの違いは?

決算賞与と賞与の違いとして最も大きな違いは支給される頻度です。

これまでご説明した通り、決算賞与が必ずしも支給されるわけではありません。

対して、就業規則などに明記されている場合、賞与は必ず決められた回数で支給が行われます。

また、決算賞与を支給するにあたっては下記の要件を満たさなければなりません。

  1. 決算日までに決算賞与の支給額をすべての対象者それぞれに通知している
  2. 決算日1ヶ月以内に対象者全員に支給する
  3. 決算で未払計上する

このような要件があることも決算賞与と賞与の違いとして挙げられます。

決算賞与の時期は?

決算賞与の時期は「決算日から1ヶ月以内」と明確に決まっています。

これは先述した決算賞与を支給するために必要な要件の一つに「決算日1ヶ月以内に対象者全員に支給する」というものがあるためです。

企業の決算月は3月・6月・12月のいずれかであることが多いため、4月・7月・1月に支給されることが大半でしょう。

決算賞与の平均は?

決算賞与は企業の業績状況によって支給されるものであるため、具体的な平均相場はありません。

しかし、「給与連動方式」によって支給額が決定される傾向にある賞与よりは少ない場合が多く、数万円から十数万円程度のようです。

賞与に対する税金や保険の計算方法

賞与に対する税金や保険の計算方法

賞与は毎月の給与と同様に税金や保険料が天引きされて支払われます。

しかし、実はその計算方法は給与とは異なるのです。ここではその計算方法を説明します。

所得税の計算方法

賞与にかかる所得税は「賞与から社会保険料を控除した後の金額x税率」によって求められます。

ここにおける税率は国税庁が定めた「賞与に対する源泉徴収税額の算出比の表」から調べることができます。

この表は前月の社会保険料を基準に税率が定められます。

そのため、「賞与額50万円、前月の給与25万円、扶養親族なし」という条件の場合、賞与の所得税は以下となるのです。なお、金額はそれぞれ社会保険料を控除したものとします。

500,000 x 4.084% = 20,420 (円)

また、前月に給与がない場合や賞与が前月の給与の10倍よりも多い場合は国税庁のホームページを参照してください。

社会保険料の計算方法

賞与にかかる社会保険料は「健康保険料」「厚生年金保険料」「介護保険料」「雇用保険料」の4つが存在します。
早速それぞれの計算方法をご説明します。

▼健康保険料▼

健康保険料は「標準賞与額x保険料率」によって求められます。

標準賞与額とは賞与額から1,000円未満の端数を切り捨てた金額のことです。

保険料率は企業が「協会けんぽ」に加入している場合や健康保険組合を設立している場合によって異なります。

▼厚生年金保険料▼

厚生年金保険料は「標準賞与額x保険料率」によって求められます。保険料率は18.3%です。

しかし、厚生年金基金に加入している場合は2.4%〜5%の料率が控除されます。

また労使折半により、企業と従業員が半分ずつ負担します。

賞与を支給するメリット

賞与のメリット

社員のモチベーションを上げることに大きく貢献する賞与。ここではその他の賞与のメリットを説明します。

人件費の変動に対応しやすい

企業を経営する上で人件費は最も高額な費用になります。

経営が傾いた際にリストラによって人件費を抑えることはしばしば起こります。

これに対して賞与は人件費の変動に対応しやすいというメリットがあります。業績に応じて変動することが可能であるためです。

業績が悪化した場合にも賞与を減らす、といった対応を行え、人件費をコントロールすることができます。

残業手当と退職金に影響しない

賞与は残業手当や退職金を算出する際に影響しないというメリットもあります。

残業手当を計算する際は時間給が用いられます。

この時間給に賞与は含めなくて良いと法で定められているのです。

また退職金も退職直前の基本給や勤続年数によって算出されることが大半であるため、賞与は関係しません。

相対的に残業手当と退職金を抑えられることができるのです。

賞与のデメリット

賞与のデメリット

これまで説明してきたように賞与には多くのメリットが存在します。そのデメリットももちろん存在しますので下記に記載します。

既得権になりやすい

上述したように賞与というのは必ず与えなければならないものではありません。

しかし、大抵の企業では最低でも年に2回賞与が与えられます。

よって貰えて当然という認識を持つ社員も中にはいることでしょう。

このような社員にとって、業績悪化によって賞与の減額や不支給は非常にモチベーションを下げてしまうことにつながってしまいます。

退職時期が固まりやすい

賞与のデメリットとしてもう一つ挙げられるのは退職時期が固まりやすいというものです。社員が退職してしまうのを防ぐというのはできません。

しかし、辞める前にできるだけ多くの給料を受け取って辞めようと考えるのは誰しもが思うもの。

よって、賞与の支給後に退職者が集中することが考えられるのです。

一斉に退職者が出てしまうと、空いたポストへの人材配置やリクルート活動を活発化させなければならず、企業にとって非常に負担がかかってしまいます。

まとめ

賞与のまとめ

これまでご説明した通り、賞与というものは必ずしも支給しなければならないものではありません。

しかし、社員のモチベーションを上げるものであることには間違いなく、優秀な社員を獲得するために有効なものと言えるでしょう。

そのために経営が危うくなるといったことがあってはいけません。

今回ご紹介した給与の算出方法やかかる税金などをご参考いただければ幸いです。

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