ハインリッヒの法則とは?ドミノ理論との違いや活用するためのヒント


ビジネスにおいては、多くの学者たちによって様々な法則や理論が生み出されてきました。今回はその中の1つである、「ハインリッヒの法則」について解説します。ハインリッヒの法則はビジネスにおけるリスクを回避するためにも重要なものなのでぜひ覚えておいてください。
目次

ハインリッヒの法則とは

ハインリッヒの法則とは
ハインリッヒの法則とは、1:29:300の法則とも呼ばれる労働災害に関する法則です。これは、1件の重大な事故や災害の背景には29件の軽微な事故や災害があり、さらにその背景には怪我にはならなかった小さな事故(ヒヤリとするような事故)が300件あるというものです。
アメリカの保険会社に勤めていた、ハーバート・W・ハインリッヒが見出した法則で、法則は自身の著書で取り上げた調査報告がもとになっています。

1.重大な事故

重大な事故とは、商品やサービスの行方を左右するような大きなトラブルのことです。1件と数は少ないですが、商品の販売や会社の評判などにも大きく影響する可能性があります。

2.軽微な事故

軽微な事故とは、重大な事故ほど大きな影響を与えることはなく、公になるようなものではありません。しかし、重大な事故1件に対して29件が起こっているということもあり、決して無視できるものでもないと言えます。

3.ヒヤリとするような事故

ヒヤリとするような事故は、軽微な事故よりも規模としてはさらに小さいものですが、その数は非常に多いと言えます。サービスや商品に対する顧客の小さな不満と考えることもできます。

ハインリッヒの法則の根拠

先ほども少し触れていますが、ハインリッヒの法則は、この法則を導き出したハインリッヒが、保険会社で自らが担当した事故調査をもとに統計学的にまとめたものです。そのためその根拠は保険会社の事故調査にあると言えます。

ハインリッヒの法則とドミノ理論

ハインリッヒの法則とドミノ理論
ハインリッヒの法則の法則をドミノ理論があります。この理論においては、ハインリッヒの法則における1:29:300の前に「作業環境の不良」「材料不良」「設備不良」「人員不良」「管理不足」の5つの状態があるという定義されています。
これらの5つの状態を排除することができれば、ハインリッヒの法則における重大な事故を防ぐことができると、考えています。
ここからは、ドミノ理論の背景にある要素をより細かく紹介していきます。ここでは、自動車事故を例にそれぞれ紹介しています。

1.環境的欠陥

まず環境的欠陥は、事故で例えると、「雨が降っていた」「見通しの悪い交差点だった」など環境面での不良や欠陥が該当します。

2.管理的欠陥

管理的欠陥は、運転中の注意力が散漫散漫だったり、加齢に伴い視野が狭くなってきたりといった管理能力の欠如が当てはまります。

3.不安然状態・不安全行動

不安然状態・不安全行動は、「脇見運転」「音楽を聴いていた」「隣の人との会話に夢中になっていた」「片手運転をしていた」など、事故につながるような危ない行動を行なっていた、もしくは危ない状態にあったことを指します。

4.事故

事故は、その名の通り、「落ちている木にあたってしまった」「縁石に乗り上げた」「ガードレールにぶつかった」「こすってしまった」など車の事故が該当します。

5.災害

災害は「事故に伴いむち打ちになった」「骨折した」「入院した」といったものが当てはまります。この災害1件の背景には災害にはなっていない29件の事故があり、さらにその背景には300件の不安全行動があったというわけです。

3「不安然状態・不安全行動」をなくすことが重要

では、災害をなくすためには、何が重要なのでしょうか。
天気などの環境を改善するのは難しいと言えます。また、管理能力についても同様に難しいです。
一方で、不安然状態・不安全行動は取り組み次第でなくすことができます。環境的欠陥、管理的欠陥があったとしても、不安然状態・不安全行動が起こらなければ、そこから先の事故や災害は発生しません。そのため、不安然状態・不安全行動をなくすことが重要になるのです。

ハインリッヒの法則やドミノ理論を活用するために

ハインリッヒの法則やドミノ理論を活用するために
ハインリッヒの法則やドミノ理論は、内容を理解できても実際に活用できなければ意味がありません。そこで、続いては、これらの法則や理論を活用するためのポイントについて解説します。

定期的に現状の振り返り・報告などを行う

ハインリッヒの法則やドミノ理論における事故や災害を起こさないためは、定期的に仕事の振り返りを行い、危険はなかったかどうかを把握することが大切です。また、必要に応じて、報告会を行ったり、報告書を作成したりして、現状把握とその共有に努めるようにしましょう。

危険に対する感度・意識を高める

事故や災害を起こさないためには、危険に対する意識や感度を高めなければいけません。このためには、危険なこととはどのようなものであり、なぜその危険は発生しているのかという事例を知ることが大切です。
そのため、日々の業務に関して定期的に振り返りを行い、適宜報告をするようにしましょう。危険を共有することができれば、企業やチーム内における危険に対する意識も高くなるはずです。

ヒヤリハット報告書について

ヒヤリハット報告書について
続いては、企業内での危険な状態や状況を把握・共有するための方法として活用できるヒヤリハット報告書を紹介します。

ヒヤリハットとは?

ヒヤリハットは「ヒヤリとした」「ハッとした」という2つの言葉を組み合わせた言葉です。元々は医療現場から出てきた言葉ですが、現在では介護や製造業など様々な場面で使用されています。

ヒヤリは「危ない!!」というようなヒヤリとする出来事のこと、ハットは「〜〜をしていないと危ないのではないか」というような気づきのことです。

これらのヒヤリやハットを情報として共有することで、事故や災害を未然に防ぐのです。

報告書を作成する目的

ヒヤリハット報告書の作成目的は、ヒヤリハットを起こさないようにすることで、重大な事故や災害の発生を防ぐことにあります。また、それと同時にヒヤリハットな事例を組織全体で共有することで、組織全体の安全確保、事故・災害防止を行うという目的もあります。
ヒヤリハットは言ってみれば事故を防ぐための最初の1歩だと言えます。重大な事故や災害であっても、その理由を調べてみると、防ぐことのできたかもしれません。そう言った自体を招かないためにもヒヤリハット報告書を作成し、防げる事故を防ぐのです。

報告書に記載する項目

ヒヤリハット報告書には、以下のような項目を記載するのが一般的です。


・いつ起こった出来事か
・どこで起こった出来事か
・誰が起こした出来事か
・何が、何をどのようにした(しなかった)
・結果として何が起こったか

このように内容としては非常にシンプルです。誰が読んでも理解しやすいように事実を簡潔にまとめるようにしましょう。

実際の記入例

実際にヒヤリハット報告書に記入するとなったら、以下のような書き方をします。


・いつ起こった出来事か:○月○日(○曜日)○時ごろ
・どこで起こった出来事か:工場の中で
・誰が起こした出来事か:作業員の○○さんが
・何が、何をどのようにした(しなかった):○○○をつけていなかった
・結果として何が起こったか:手を切ってしまった

まとめ

ハインリッヒの法則のまとめ
今回は、ハインリッヒの法則とドミノ理論について解説しました。企業活動を行う上で事故や災害が起こる可能性は決してゼロではありません。今回紹介した法則や理論はそのような事故・災害を防ぐためにも非常に重要な考えとなります。ぜひ覚えておくようにしましょう。

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