労災隠しとは?なぜ労災隠しはばれるのか?労災隠しが起こる理由・違法性を紹介

労災隠しの記事
労災隠しは違法です。それにもかかわらず企業の中で労災隠しが未だに横行しているのが現実。しかし労災隠しは隠しきれるものではなく、必ずばれてしまいます。労災隠しがなぜばれるのか?そして、労災隠しが起こる理由・違法性について詳しく紹介していきます。
目次

労災隠しとは

労災隠しとは
労災隠しとは、労働災害(労災)が発生した時に、会社が労働者に対して労災が起こったことを隠すように指示したり、労働基準監督署への報告を怠ったりするような違法行為を言います。

労災の種類について

労災にはどんな種類があるでしょうか。「仕事でケガをした」「通勤中にケガをした」「仕事のストレスによりうつ状態になった」というような例が挙げられます。これらを労災認定される時の基準は以下の2つです。労災認定されるには、どちらか一方が認められれば良いことになります。

・業務遂行性…仕事中にケガ・病気になったこと
・業務起因性…仕事が原因でケガ・病気になったこと

例で考えると、「仕事でケガをした」というのは仕事中のケガですから業務遂行性が認められます。他方、「仕事のストレスによりうつ状態になった」というのは仕事中に病気になった訳ではありませんが、仕事が原因でうつ状態になったのですから業務起因性が認められるということです。

労災の報告は企業の義務

労災が発生したら、企業は労働基準監督署に報告する義務を負います。報告を怠ると刑事責任が問われる場合があります。また、労災が発生したことにより労働者が死亡または休業した場合には、企業には労働者死傷病報告を労働基準監督署に提出する義務があります。

労災隠しはなぜばれる?

労災隠しはなぜばれる?
労災について説明したところで、本題の労災隠しについて解説していきましょう。労災隠しは隠しきれません。なぜ労災隠しはばれてしまうのでしょうか?

健康保険を使用したことによる医療機関からの通報

仕事中にケガをした労働者に対して、会社が「仕事中のケガでないと言え」と強要したとします。労災隠しですね。労働者は忠実に守ろうと健康保険を使おうとします。しかし、診察する医師は労働者に「なぜケガが起こったのか?」を聞きます。ここで労働者が隠し通せれば良いのですが、うっかり口を滑らせてしまうこともあるでしょう。

そうなると「これは労災です」ということになり、健康保険は使えません。労働者が「労災ではない」と訴えても、医師が労災隠しに協力する訳にはいかないので、労災にするしかありません。このように、医師の診察の中で労災隠しがばれてしまうケースがあります。

負傷者本人の労基署への相談

会社が労働者に「労災隠し」を強要しても、労働者がそれに従わないことで労災隠しがばれるケースがあります。労働者が労働基準監督署に相談するケースですね。労災隠しが違法だと知らない労働者でも、労災なら医療機関に労働者がお金を払う必要がないのに、健康保険を使うと自分でお金を払わなくてはなりません。

これは理不尽ですから、労働者が労働基準監督署に通報して、労災が発覚することになります。労働基準監督署に通報されたら、労働基準監督署が会社に調査しにくる可能性もありますし、刑事責任を問われる場合もあります。

従業員からの内部告発

労働者が労働基準監督署に相談しなくても、労働者が会社のコンプライアンス委員会とか人事部に内部告発して労災隠しがばれるケースもあります。

労災隠しはなぜ起こるのか?

労災隠しはなぜ起こるのか?
労災隠しは企業にとっても労働者にとってもメリットがないように思えますが、なぜ労災隠しは発生するのでしょうか?

企業イメージの悪化を恐れるため

労災が発生したことによって企業イメージが悪化すると考える企業は、労災隠しを行います。例えばマスコミが企業の労災を報道すれば、報道に触れた人は「あの会社は安全配慮義務を怠っている会社なんじゃないか」というイメージを持ちます。企業イメージの悪化は、経営に支障をきたしたり、株価の低迷が起こったりする原因となります。そうならないように、企業は、隠せるものなら労災を隠したいという気持ちになります。

しかし、もし労災隠しがばれてしまうと、マスコミの報道は労災が発生したことよりも加熱するでしょうから、労災隠しはしないに越したことはありません。それでも隠し通せるだろうと浅はかな気持ちで労災隠しをしてしまうのです。

労働基準監督署の監査を恐れるため

労災が起こると、労災認定をするため労働基準監督署は調査を行います。その時に会社の不都合な事実が露見することを恐れて労災隠しをしてしまうことがあります。

労務担当者が労災手続きを嫌がったため

ただでさえ忙しい労務担当者。労災手続きのようにイレギュラーな業務はやりたくないものです。労務担当者が労災手続きを嫌がったことにより、労災隠しが発生するケースもあります。

労災隠しの違法性について

労災隠しの違法性について
労災隠しの違法性がどれだけのものなのでしょうか。単に違法であるということよりも、企業には、違法性の程度を知ることで、労災隠しをすると大変だという意識を持って頂きたいと思います。

罰金が課される

労災隠しが発覚すると罰金が課されることになります。労災隠しを行った会社は、労働基準監督署に送検され50万円以下の罰金が課されます。

労災隠しが発覚したことによる企業イメージの悪化

労災隠しが発覚したことをマスコミに嗅ぎ付けられると、労災が発生した場合よりも企業イメージが悪化します。労災隠しは違法であり、労働基準監督署に送検されたという事実があるのですからマスコミによる報道の格好の餌食になります。

一度、マスコミに報道されて悪いイメージを植え付けられた会社に対しては、人はいつまでも悪いイメージで会社を見ることになります。現在はインターネットがありますから労災隠しをした事実はいつまでも閲覧され、拡散され続けることになります。会社が労災隠しをする理由は様々ですが、マスコミの報道による企業イメージが悪化を考えれば、労災隠しの方が会社にとってはデメリットが大きいと考えられます。

労災隠しに遭った場合の対処法

労災隠しに遭った場合の対処法
これまで会社側の視点に立って労災隠しを見てきました。次に、実際に労災隠しに遭った労働者の視点に立ってどう対処していけば良いかを考えてみることにしましょう。

労働基準監督署に相談する

会社から「労災隠しに応じてくれ」と言われても、応じる必要はありません。労災隠しには応じませんとはっきりと断りましょう。それでも強制してくる場合は労働基準監督署への相談も検討して下さい。

会社が労災隠しを強制し続ける場合は労働基準監督署に相談します。労災隠しがばれる理由の1つにも、労働者が労働基準監督署に相談することが挙げられていました。労働基準監督署は労働者の味方ですから、労災隠しを強制された事実があれば労働者の相談に乗ってくれます。医療機関は労災指定病院を選んで受診することを忘れずに。

医療機関に労災であることを伝える

医療機関に労災であることを伝えることも、対処法の1つです。医療機関には「療養補償たる療養の給付請求(様式第5号)」という書類を提出することになります。こちらは労災指定病院へ提出する書類になります。

まとめ

労災隠しのまとめ
労災隠しは違法であり、企業にとってはメリットがあるようで、労災隠しが発覚した後のリスクを考えるとデメリットが大きいです。ですから、どんな理由であれ労災隠しは違法なのでやってはいけませんし、本稿で述べたように必ずばれてしまいます。会社側が労災隠しをしようとしているようでしたら、労務担当者がきちんと諫められるように理論武装しておいて下さい。

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