モラルハラスメント(モラハラ)とは
モラルハラスメントとはモラル(倫理・道徳)に反する嫌がらせのことを言います。モラハラと略称で呼ばれることがあります。モラハラは職場や学校、家庭内等で行われますが、本記事では職場のモラハラについて解説していきます。
モラハラの提唱者
モラルハラスメントを提唱したのは、フランスの精神科医マリー=フランス・イルゴイエンヌです。彼女はモラルハラスメントについて一般向けの書籍を書いています。
パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントとの違い
モラルハラスメントと共に職場の嫌がらせとして知られるハラスメントに、パワーハラスメントとセクシュアルハラスメントがあります。モラハラとそれらとの違いを見ていきましょう。
パワーハラスメントは職務上の地位・人間関係を利用して精神的・肉体的な嫌がらせを与えることを言います。モラハラも精神的な嫌がらせを指しますが、肉体的な嫌がらせは含みません。モラハラも職務上の地位・人間関係を利用することもありますが、倫理・道徳に反する嫌がらせであれば地位・人間関係にかかわらず、モラハラと言えます。
セクシュアルハラスメント(セクハラ)は性的な嫌がらせを与えることを言います。セクハラは相手の身体に触ったり、性的な言動を表して相手に嫌がらせを与えることなので、モラハラの倫理・道徳と違い部分はありますが、「性的な嫌がらせ」に限定しているところが大きく異なる点です。
職場におけるモラルハラスメントの具体例
職場のモラルハラスメントにはどんな嫌がらせがあるのか、4つの具体例を紹介します。具体例を知ることでモラルハラスメントの問題の大きさを知って頂ければと思います。
会議に1人だけ呼ばない
会議を開くのに1人だけ会議に呼ばないモラルハラスメントです。会議で重要な議題が決まったり、今後の方針が決まったりしても会議に呼ばれないとそれを知る術がありません。結果的にモラハラを受けた当人だけが組織の決定事項に触れないまま仕事をすることになります。決定事項を知らないがゆえの失敗をしたり、関係者から悪く言われたりすれば、その組織で働くことの居心地の悪さを感じざるを得ません。
人前で陰湿な叱責を受ける
仕事でミスをすれば叱責を受けることがあります。しかし、それも度を超える叱責になると問題も変わってきますね。人前で陰湿な叱責を受けることは、叱責を受けた当人にとっては、恥ずかしさや後ろめたさもあり叱責を受けること自体に忍耐し難いものがあります。
ミスをしてしまって当人が反省している場合、既に「申し訳ないことをした!」と思っている訳ですから、「だからお前はダメなんだ。この前も注意したじゃないか」と陰湿な叱責をしてしまうと当人の傷口は大きく開いてしまうでしょう。
少ない情報を与えて仕事をさせる
少ない情報を与えて仕事をさせることもモラルハラスメントとなり得ます。これは、誤って少ない情報を与えてしまったのではなく、これだけの情報では相手が仕事ができないことを意図して、少ない情報を与えることを意味しています。少ない情報では仕事ができない訳ですから、当人は仕事ができずに困ってしまいます。
「もう少し情報を頂けませんか」と聞いたのに、「君ならこれくらいの情報で仕事ができるでしょ」と言ってしまうこともまた、同様にモラハラとなり得ます。相手が仕事をする上で困るほどの少ない情報を与え、情報を求めても与えないことがモラハラの1つです。
仕事量が他者より極端に少ない
仕事が多過ぎることはハードワークとなりますが、極端に他者よりも仕事量が少ないとモティベーションが上がりません。1日7時間の労働時間のうち、午前中で終わってしまうような仕事を毎日与えられていると、毎日何をして良いか分からなくなるモラハラの1つです。
職場のモラルハラスメントの悪影響とは
職場のモラルハラスメントを受けると当人にはどんな悪影響をこうむるのか、確認していきます。
メンタルヘルス不調を起こす
モラルハラスメントを受けていると、メンタルヘルス不調を起こすことが挙げられます。陰湿な叱責や少な過ぎる仕事量の付与によって、当人はモラハラを受けたと感じ、徐々に精神的に追い込まれていきます。そうなるとメンタルヘルスは安定感を保てなくなりメンタルヘルス不調を起こすのです。
職場にいられなくなり離職する
モラルハラスメントを受けていると、同じ職場に居続けることが大変苦痛になります。部署異動もままならないとすれば、離職してしまうことになります。
うつ病等の精神疾患を起こす
メンタルヘルス不調が悪化すればうつ病等の精神疾患を起こす可能性が出てきます。精神疾患に罹れば当人は職場を長期的に離脱する可能性がありますし、離職する可能性もあります。
モラルハラスメントを起こす人の特徴
モラルハラスメントを起こす人にはどんな特徴があるでしょうか。特徴を知ることでモラルハラスメントを起こしそうな人を想定しておくのも、モラハラ対策になり得ます。
共感性が低い
共感性が低い人は、モラルハラスメントを起こしがちとなります。例えば「会議に1人だけ呼ばれない」ことで相手がどう思うかという心情に配慮を示せないと、嫌がらせをすることに躊躇いがありません。
突然優しくなる
相手を傷つけておきながら、突然優しくなるのもモラハラを起こす人の特徴です。例えば「人前で陰湿に叱責した」にもかかわらず、舌の根も乾かないうちに「さっきはごめんね」と突然優しくなる人が事例として挙げられます。「さっきはごめんね」と謝ってもそれは真意からの謝罪ではありません。モラハラを起こす人は突然優しくなっても、嫌がらせをやめることができません。
他責的である
職場に問題が起こると「あいつのせいだ」とか「会社が悪い」と言う人はいませんか?他責的であることもモラハラを起こす人の特徴です。
自分が一番だと思い込んでいる
自分が一番だと思い込んでいる人はモラハラを起こす人の特徴です。一番だと思い込んでいるので、他者のがんばりをしっかり評価できなかったり、むしろ嫉妬したりして否定する訳で、それが嫌がらせに繋がるとモラルハラスメントとなります。
モラルハラスメントの被害に遭った時の対処法
モラルハラスメントの被害に遭った時、どう対処していったら良いでしょうか?被害に遭わないのが一番ですが、被害に遭った時に泣き寝入りしている訳にはいかないので、対処法を参考にして下さい。
加害者の言動を録音しておく
モラルハラスメントの被害に遭った時、当人がどう行動するにしても加害者の言動を録音しておくべきです。録音しておけば労働基準監督署や人事部に相談する時、あるいは訴訟する際にも役立つからです。モラハラを受けると傷付きますが、モラハラの悪影響にて説明した通りメンタルヘルス不調になったり離職したりすることがあります。そうなる前に録音することで自分の身を守って下さい。
メールやSNSのメッセージを保存する
メールやSNSメッセージにおいて、モラハラをしてくる人もいますので、メールやSNSのメッセージを保存することも対処法として必要です。証拠を取っておけば他者や労基署等の機関に相談する時にも、モラハラの被害者にとって有利に進む可能性が出てくるからです。
人事部に相談する
モラハラをしてくる人は上司や先輩・同僚等、日ごろから接している職場のメンバーであることが多いでしょう。誰からにモラハラの被害を相談する時は職場を頼りにくいですから、人事部に相談してみて下さい。人事部は従業員を守るセクションですので相談に応じてくれることと思います。
労働基準監督署に相談する
所轄の労働基準監督署に相談することも対処法の1つとして有効です。その際は、録音データやSNSメッセージ等を準備し、また、どういう経緯でモラハラを受けているかといった点を時系列で整理することも必要です。
まとめ
職場のモラルハラスメントは、倫理・道徳に反する嫌がらせです。あってはならないことですが、もしモラハラが起こり、その被害者になってしまった場合は対処法を参考に泣き寝入りすることなく自分の身を守って頂ければと思います。