賞与支払届とは?概要・手続き・手続き上の注意ポイントを紹介

賞与支払届の記事

賞与支払届は、社会保険料の納付に関係する書類です。法人は社会保険の納付が必須なため、作成方法や手続き方法を確認しておきましょう。また、様々なケースに応じて、正しく賞与支払届を作成する必要があります。ここでは、賞与支払届の概要や手続きの方法、作成の注意点などについて詳しく解説します。
目次

賞与支払届とは?

企業が取り組む時短ハラスメントへの対策

まずは、賞与支払届とはどのような書類なのか詳しくみていきましょう。

賞与を支給した時に手続きするもの

賞与支払届とは、賞与を支給した際の社会保険料の納付に必要な書類です。社会保険料は、企業と従業員で折半します。折半するといっても、従業員が企業を通さずに社会保険料を支払うわけではありません。企業は、従業員の賞与から天引きして、社会保険料を支払います。

賞与支払届の概要

賞与支払届には、被保険者賞与支払届と被保険者賞与支払届総括表があります。それぞれの特徴や賞与支払届の対象となる賃金について詳しくみていきましょう。

被保険者賞与支払届

被保険者賞与支払届は、賞与の支給額などを記載した書類です。社会保険料は、賞与の支給額で変動するため、日本年金機構へ届け出る必要があります。被保険者賞与支払届で標準賞与額が決定し、金額に応じた社会保険料額が決定します。

また、従業員が将来受け取る年金額にも関わるため、必ず提出しなければなりません。

被保険者賞与支払届総括表

被保険者賞与支払届総括表は、賞与の支払いがない場合でも提出が必要です。詳しい記入方法は後述します。

賞与支払届の対象となる賃金について

対象となる賞与は、手当や給料、賃金などの名称に関係なく、年3回以下の頻度で従業員に支給するものです。年4回以上支給されるものは標準報酬月額とされます。

賞与支払届の手続き

それでは、賞与支払届の手続き方法について詳しくみていきましょう。

手続き書類の受け取り

賞与支払届は、日本年金機構へ事前に登録した賞与支払予定月の前月にあらかじめ被保険者の指名や生年月日などが記された同書類が登録している住所へ送付されます。賞与の支払いがなくても提出が必要な賞与支払届総括表、算定基礎届総括表、新規適用届などの書類の内容から、賞与支払予定月が決定します。

標準報酬月額・保険料を計算する

続いて、標準報酬月額から保険料を計算しましょう。賞与にかかる社会保険料額は、税引き前の賞与から1,000円未満を切り捨てた標準賞与額に社会保険料の保険料率をかけて算出します。標準賞与額には上限が定められています。

社会保険料の上限は、4月1日~翌年3月31日までの保険料の累計額573万円、厚生年金保険料の上限は月150万円です。なお、年2回以上、賞与を支給するケースでは、それぞれが合算された額が上限になります。

作成

賞与支払届を作成しましょう。被保険者賞与支払届総括表には、事業主の指名や住所、賞与支払情報と内訳などを記入します。被保険者賞与支払届には、事業主の指名や住所賞与支払年月日、被保険者整理番号、賞与支払予定年月などの情報を記入しましょう。

提出

賞与支払届は、日本年金機構へ提出します。


提出期限
賞与を支払った日から5日以内


提出方法
郵送、電子申請、CDかDVD、窓口持参


提出先
事業所の所在地を管轄する事務センター

CDかDVDで提出する場合は、日本年金機構の電子媒体申請にて、届書作成プログラムをダウンロードし、届書を作成する必要があります。事業所の名称や整理記号などを記載したラベルを提出するCD・DVDに貼りましょう。

また、希望すれば、賞与支払予定月の前月に被保険者の情報などを習得したCDが送付されます。スムーズな手続きを希望する方は、日本年金機構に申請しておきましょう。

保険料納付

賞与にかかる保険料は、同月の標準報酬月額の保険料と合算して翌月末までに納付します。

賞与支払届の注意ポイント

賞与支払届を作成する際には、次のことに注意しましょう。

賞与不支給の時

賞与不支給の場合は、被保険者賞与支払届の提出は不要です。ただし、被保険者賞与支払届総括表は、賞与不支給の場合でも日本年金機構に提出しなければなりません。

70歳以上の従業員がいる時

2018年までは、70歳以上の従業員に賞与を支給したときは、「被保険者賞与支払届」ではなく、「70歳以上被保険者賞与支払届」の提出が必要でした。

2018年からは、両方の賞与支払届が兼用となったため、分ける必要はありません。70歳以上の従業員に賞与を支給したときは、被保険者賞与支払届の備考欄にある「70歳以上被保険者」に〇をつけ、マイナンバーもしくは基礎年金番号を記入します。

また、高齢任意加入保険者の場合は、被保険者指名欄の余白に「高齢任意」の記述が必要です。70歳以上の従業員がいるかどうかで書類の作成方法が異なるため注意しましょう。

中途入社者がいる時

年の途中で入社した従業員の賞与は、入社日以降に支払われたものだけが保険料計算の対象です。入社前に支払われた賞与は、社会保険料の計算とは無関係のため注意しましょう。ただし、同じ年度内で転勤や転職をして被保険者資格の取得または喪失があると、保険者単位で標準賞与額の累計を算出します。

そのため、同じ年度に被保険者期間が複数ある場合は、それぞれで決定した標準賞与額を合算します。また、退職した従業員がいる場合は、退職した月の前月までに支払われた賞与が対象です。ただし、月末に退職する場合は、その月に支払われた賞与も対象になるため注意しましょう。

訂正が必要な時

賞与支払届に計算ミスや基本給の変更などで賞与の金額を訂正する必要がある場合は、過去の分も訂正が必要です。新たな被保険者賞与支払届の提出をもって、訂正を申請したことになります。訂正の方法は、訂正前の賞与支払額を二重線で訂正し、正しい賞与支給額を記入する方法が一般的ですが、正しい賞与支給額だけを記載することを求められる場合もあります。事前に管轄の年金事務所や事務センターに確認しましょう。

提出を失念した時

賞与支払届は、賞与支給日の5日後が期限です。期限を過ぎた場合は、年金事務所や事務センターから催告状が送付されます。提出を忘れていた場合は、すぐに賞与支払届を提出し、保険料を納付しましょう。また、賞与支払届の提出を失念していた事実は、従業員に送られる「ねんきん定期便」で発覚する場合があります。社会保険料が支払われていない事実を従業員が把握すると、トラブルになる場合があるため注意しましょう。

また、提出漏れが発覚したら、「事業主からの自主的な申出にかかる申出者リスト(賞与支払届提出もれ用)」を持って、年金事務所か事務センターに相談が必要です。なお、賞与を支給した日から2年以上が経過すると、社会保険料徴収の時効が成立するため、従業員が受け取れる年金額が減ってしまいます。大きなトラブルに繋がりかねないため、催告状が届いたり従業員から指摘されたりしたら、すぐに対応しましょう。

まとめ

賞与支払届は、賞与にかかる社会保険料を納付した際に、管轄の年金事務所か事務センターに提出が必要です。社会保険料の納付に関わる書類のため、忘れずに提出しましょう。また、70歳以上の従業員に賞与を支給したときや、年度途中で入社した人物に賞与を支給した場合など、様々なケースに正しく対応してください。

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