介護休暇とは
介護休暇とは、家族が病気やケガ等で要介護状態になった時に取得できる休暇を言います。要介護状態とは、病気・ケガ等の理由で2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態のことです。介護と言うと要介護認定を受けている高齢者を介護しているイメージが強いと思います。しかし、介護休暇で定められている要介護状態は、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態であれば良いので、割りと短期間の介護状態でも休暇を取得できるということになります。
介護休暇で認められている介護の内容は、食事・排泄等の日常生活における介護、病院への送迎、買い物等です。介護休暇は育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律(育児・介護休業法)によって規定されています。企業は、労働者から介護休暇の申請があったらこれを拒むことができません。また、介護休暇を取得したことをもって解雇理由とすることができません。以上は上記法律で規定されています。
1年間に5日間取得できる
労働者は1年につき最大5日間の介護休暇を取得することができます。ただし介護対象者が2名以上の場合は、企業は労働者に対して、介護休暇を10日間取得させることができます。介護休暇は、有給休暇とは別に取得することができます。
申請方法について
労働者に介護休暇を申請させるには、口頭で伝えさせれば良いです。企業のルールで、申請書を使って申請させることもできるので、自社に都合の良いやり方で決めて下さい。介護休暇を取得できる労働者は、要介護状態の対象家族を介護する労働者となります。従って、正社員はもちろん、契約社員やアルバイト、パート等の非正規社員も介護休暇を取得できるのです。
対象家族の範囲とは
介護休暇の対象家族の範囲は、配偶者(事実婚含む)・父母・配偶者の父母・子・同居かつ扶養している祖父母・兄弟姉妹・孫までとなります。
介護休暇を取得できない労働者
介護休暇は全ての労働者が取得できる訳ではないので、運用には注意して下さい。介護休暇を取得できない労働者は、日雇い労働者・雇用期間が6ヶ月未満の労働者・1週間の所定労働日数が2日以下の労働者・半日単位での介護休暇取得が困難な業務に従事している労働者が該当します。
介護休暇中の給与はどうなるか
労働者に介護休暇を取得させる時、給与は有給か無給かについて説明します。
無給でも違法ではない
介護休暇中の給与は有給にすることも可能ですし、無給でも違法ではありません。介護休暇は基本的に5日間しか取れませんから、無給にすると、労働者は有給休暇を取得した方が良いと判断する可能性はあるでしょう。介護休暇の取得を促すなら、有給にした方が適切です。
企業の就業規則を確認しよう
労務担当者としては、介護休暇の申請方法について自社の就業規則を確認しておくことが必要です。申請方法が曖昧であれば改めていきます。また、そもそも、労働者の中には介護休暇の存在を知らない者がいたり、介護休暇という名称から要介護認定を受けている家族がいる場合しか取得できないと思っている者がいたりする場合が考えられます。従って、労務担当者は社内に介護休暇について周知し、適切に取得させることが重要です。
法改正後の介護休暇について
介護休暇は、平成29年に育児・介護休業法が改正され、半日単位の取得が認められることになりました。
介護休暇は労働者の権利
介護休暇は労働者の権利です。有給休暇とは別に取得でき、企業は介護休暇取得を拒めません。家族の介護のために離職することなく、休暇を取得してもらう制度です。
半日単位の取得ができるように
育児・介護休業法が改正されたことで、時間単位又は半日単位の取得ができるようになって労働者はより柔軟に介護休暇を取得できるようになりました。
介護休暇と介護休業との違い
介護休暇と類似した名称に介護休業があります。両者の違いは取得できる休暇日数・給付金の有無・申請方法に違いがありますので具体的に説明します。
取得できる休暇日数
介護休暇は1年に5日間取得することができますが、介護休業は年に通算93日の休暇を取得することができます。また、3回まで分割して休暇を取得することができます。介護休業中は無給です。とはいえ、93日間も無収入では生活が成り立たないので、労働者は何らかの収入の確保をする必要があります。
給付金の有無
介護休暇中の労働者には給付金の支給はありませんが、介護休業中の労働者には給付金が支払われることがあります。介護休暇中の給付金は、介護休業給付金制度という雇用保険によって支払われる給付金となります。介護休暇を取得したら必ず支払われる訳ではなく、以下の3つの条件を満たすことで支払われます。
・各支給単位期間において労働した日数が10日以下であること
・各支給単位期間において賃金が支払われた場合は、休業開始日前に受けていた平均賃金と比べて80%未満の賃金であること
介護休業給付金制度の給付金額は、休業開始時賃金日額×支給日数×67パーセントです。給付金は、介護休業期間終了後に支給されます。直ぐに給付金が支給される訳ではないので、介護休暇中の生活費についてはある程度準備をしておく必要があるでしょう。また、労働者が給付金をもらうには、企業がハローワークに「雇用保険被保険者休業開始時賃金月額証明書」「介護休業給付金支給申請書」を提出しなければいけないことに留意して下さい。提出時期は、介護休業終了日の翌日から起算して2か月を経過する日の属する月の末日までとなります。
申請方法
介護休業の申請方法は、介護休暇と違って口頭での申請ができません。労働者は企業に対して、書面により「家族が要介護状態であること」「休業開始予定日及び休業終了予定日」等を提出することで休業することができます。申請は、休業を開始する日の2週間前までに行う必要があります。
介護休暇は子供の入院付き添いでも使える
介護休暇の意外な使い道を紹介しましょう。介護休暇は、家族が要介護状態になった時に使うことのできる休暇制度です。実は、子供の入院付き添いになった時でも休暇を取得することができるのです。
常時介護が必要であるか否か
介護休暇は、病気・ケガ等の理由で2週間以上の期間にわたり常時介護が必要になった家族がいる場合に取得できる休暇です。子供は身の回りのことを自分でできないので、2週間以上の入院が生じた場合は、常時介護が必要な状態となり、介護休暇を取得することができるのです。
介護休暇をうまく活用しよう
介護休暇は、家族が要介護状態になった時に取得できる制度です。要介護状態には入院になった子供も含まれるので、意外と活用の範囲が広い休暇制度です。国の制度ですから、労働者が介護休暇を申請したら、企業はそれを断ることができません。また、企業の観点から言っても、有給休暇だけでは休暇が足りない労働者が介護休暇を取得することで、労働者が柔軟に働けるようになります。労使共に、介護休暇をうまく活用しない手はありません。
まとめ
介護休暇は、2週間以上の期間にわたって要介護が必要になった家族を介護するための休暇です。介護休暇の対象範囲は広く、両親だけではなく、子供や孫も対象に入っていました。企業は、介護休暇をうまく活用して、労働者の柔軟な働き方を許容し、人材が定着する制度にしていきたいところですね。