労働基準法とは?
労働基準法とは、労働者の労働基準を定めた法律を言います。労働基準とは、労働条件に関する最低基準のこと。具体的に解説します。
労働者の最低限の条件を定めた法律
労働基準法とは、労働者の最低限の条件を定めた法律です。労働基準法は、労働者の労働時間・休日・賃金等について最低基準を定めています。例えば労働時間で言えば、企業は、労働者に対して休憩を除き1週間について40時間を超えて労働させることができません。これが労働基準法で定められた最低基準ということになります。
尚、労働基準法は、正規社員・非正規社員・パート社員の区別を問わず、国家公務員の一部を除いて全ての労働者に適用されます。
労働基準法を下回る就業規則は無効になる
労働基準法で定められているのは労働者の最低基準。ですので、企業は労働者の労働基準を守ることはもとより、それを向上させることに努めなくてはなりません。また、労働基準法は最低基準なので、それを下回る就業規則や労働契約を締結してもその部分については無効となります。例えば、週40時間を超えて労働させることができないのに45時間働かせる就業規則を作ったとしても、その部分については無効なのです。
労働基準法に違反するとは?
労働基準法は罰則付きの法律です。従って、労働基準法に違反すると罰則を受ける可能性があります。罰則は罰金刑や懲役刑等があります。
罰則の対象者
労働基準法に違反した場合、罰則の対象者は使用者。労働基準法における使用者は社長や役員だけでなく、部長や所長等の管理監督者も当てはまります。使用者のみならず会社そのものも罰則の対象者となります。罰則の対象者は、使用者および会社と認識して下さい。
罰則内容について
気になる罰則内容について確認していきましょう。罰則には様々な種類がありますが、「30万円以下の罰金」から、「1年以上10年未満の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」まで幅広いです。罰金だけでなく懲役刑もあり得るということが、労働基準法の罰則の重さを物語っていますね。
労働基準法違反の事例7ケース
どのような場合に労働基準法違反となるのか、7つの事例を見ていきましょう。
賃金未払いに関する違反
賃金未払いに関する違反です。賃金未払いにも色々な場合があります。賃金が全額支払われない場合、給料日に支払われない場合です。
残業代・休日手当の未払いに関する違反
残業代・休日手当の未払いに関する違反はよくありがちです。特に残業代が支払われない場合は、サービス残業をさせていることでもありますので、サービス残業=残業代未払いであり、労働基準法に違反してしまいます。ちなみに、残業代については、労働者には退職しても2年間は請求する権利があります。
労災に関する違反
労働者が業務中、あるいは通勤中に事故に遭ったり病気に罹患したりした場合は労災の適用が認められます。労災は労働者に必要な療養をさせたり、時には休ませたりしなくてはなりません。労災に関しては労働基準法にも規定があります。労災に関して療養給付や休業補償の手続きをしない等、企業の義務を履行しないと労災に関する違反となります。
妊娠・出産に関する違反
労働者が妊娠・出産した時について、労働基準法は産前産後休業をさせるように定めています。そのルールに従わないと妊娠・出産に出産の違反です。具体的には、6週間前に女性の労働者が休業を申し出た場合、使用者は休業させなくてはなりません。また、出産後8週間を経ない女性は申し出のある・なしにかかわらず休業させなくてはならないように定められています。
解雇に関する違反
解雇について労働基準法は労働者保護の観点から厳格なルールが存在します。解雇する場合は解雇予告をするか、解雇予告手当を支払わなくてはなりません。具体的には、解雇予告する際には30日前に実行しなくてはならない定めがあります。解雇予告せずに解雇する場合は平均賃金30日分を解雇予告手当として労働者に支払うことで解雇することができます。これらに違反することは解雇に関する違反です。
労働条件に関する違反
労働条件に関する違反も労働基準法では違法であると定めています。例えば、入社前に労働条件を明示されなかったり、入社前の労働条件と入社後の労働条件が異なったりする場合がこれに該当します。
企業は労働者に対して、どんな条件(賃金、仕事内容、就業場所)で働いてもらうのか明示しなくてはなりません。また、就業規則を作成する義務がある企業は作成し労働者がいつでも見えるように管理しておかなくてはなりません。これに違反することは労働条件に関して違反することになります。
時間外労働に関する違反
労働基準法では、週の労働時間を1週間に40時間までと定めています。36協定を締結していない場合、労働者に時間外労働をさせることができません。36協定は一度締結すれば済むものではなく、毎年の更新が必要となりますので、忘れずに更新しておくようにして違反にならないようにしたいところです。
労働基準法違反の罰則内容
労働基準法に違反するとどのような罰則内容があるのでしょうか。
時間外労働に違反した時の罰則内容
時間外労働に違反した場合、6か月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されます。
強制労働の禁止に違反した時の罰則内容
強制労働とは、労働者の意思に反して無理やり労働させることを言います。強制労働に違反すると労働基準法の中でも最も重い罰則となり、「1年以上10年未満の懲役または20万円以上300万円以下の罰金」が科されます。強制労働の禁止の趣旨は、監獄部屋のような日本の過去の悪習を排除するためです。憲法18条にも、「何人も、いかなる奴隷的拘束も受けない」旨が定められています。
会社が労働基準法に違反していた時の対処法
ここまでの記事内容で、「自分の会社が労働基準法に違反しているんじゃないか?」「違反していた場合はどういう対処をすれば良いのか?」と思った方は以下の対処法を参考にしてみて下さい。
人事部への連絡
上司や先輩からサービス残業を強いられたり、産前産後休業を認められなかったりする等、現場から労働基準法違反があった場合は、人事部に連絡しましょう。人事部は労務管理に精通していますから、まずは事実を確認し労働基準法違反であれば直ちに対処を取るはずです。人事部は、労働基準法に違反すると罰則が重いことを知っているからです。
ただし、全て人事部に頼りきるのではなく、上司や先輩からサービス残業を強いられたり産前産後休業を認められなかったりした証拠を記録したり、録音したりすることが適切な対応です。自身の身体は労働者自身で守らなくてはなりませんし、人事部が事実確認する際にも適当な証拠となります。
労働基準監督署への通報
人事部に相談しても事態が解決しない場合、労働基準監督署への通報を行います。労働基準監督署は厚生労働省の出先機関で労務管理について相談に乗ってくれます。法律の知識や労働基準法違反への対応方法も熟知していますので、人事部への相談と共に労働基準監督署に相談してみても良いでしょう。
労働問題に強い法律事務所の活用
労働基準監督署に相談して対応方法を実行しても埒が明かない場合は、法律事務所を活用することも手段の1つですね。コストはかかるものの、労働者自身の権利を守るためには法律事務所の活用は検討してしかるべきです。
まとめ
労働基準法は労働者保護の観点から厳格にルールが定まっています。違反すると重い罰則規定があるので、企業は違反しないように注意してマネジメントを進めることが必要です。記事の事例を元に、違反しているか・いないかをチェックしてみると自社の労働基準法の運用内容が整理できます。