プロダクトライフサイクルとは?段階ごとのマーケティング戦略と事例

プロダクトライフサイクルの記事
新しい商品も最初は売れませんが、徐々に浸透していき、売上を確保した後はニーズの低下と共に、いずれは市場から消えていきます。人間と同様に商品にも寿命があり、市場に投入してから撤退するまでの成長曲線のことをプロダクトライフサイクルと言います。プロダクトライフサイクルは商品の段階ごとのプロセスを分析し、どうすれば市場に生き残っていけるかを論じたマーケティング戦略です。プロダクトライフサイクルに必要なポイントを説明します。
目次

プロダクトライフサイクルとは?

人間は誕生して成長し、そしていつかは寿命により死が訪れます。人の寿命と同じく商品にも必ず寿命があります。プロダクトライフサイクルは、製品やサービスを市場に投入してから撤退するまでの成長曲線を言います。このプロセスの中で企業がどんなマーケティング戦略を取るべきか、プロダクトライフサイクルを知ることで分かるようになります。

プロダクトライフサイクルの5段階

プロダクトライフサイクルには導入期・成長期・成熟期・飽和期・衰退期の5段階が示されています。プロダクトライフサイクルは、アメリカの経済学者ジョエル・ディーンがハーバードビジネスレビューで発表した概念です。PLCと略されることもあります。尚プロダクトライフサイクルは、米国の経営学者フィリップ・コトラーが『マーケティングマネジメント』の中で紹介したことでも知られます。

段階ごとに戦略を打ち出していく

プロダクトライフサイクルでは、導入期・成長期・成熟期・飽和期・衰退期の5段階について、段階ごとにマーケティング戦略を打ち出していきます。製品・サービスを市場に投入した時期に行うマーケティングと、成熟期に行うマーケティング戦略が同じだったら消費者に適切なアプローチをできていないことになります。従って、段階ごとに、異なるマーケティング戦略を行う必要があるのです。

プロダクトライフサイクルとイノベーター理論

プロダクトライフサイクルはエベレット・M・ロジャーズが提唱したイノベーター理論に通じる考え方です。イノベーター理論では、イノベーションの普及をイノベーター・アーリーアダプター・アーリーマジョリティ・レイトマジョリティ・ラガードの5つの段階に分けて説明しました。

市場全体に占める普及率は、イノベーターが2.5%、アーリーアダプターが13.5%、アーリーマジョリティが34%、レイトマジョリティが34%、ラガードが16%となっています。イノベーター理論は、市場に製品を投入した時、新製品の普及率が時系列的にどの程度普及していくかを表しているので、時間の流れと共に【イノベーター】→【アーリーアダプター】→【アーリーマジョリティ】→【レイトマジョリティ】→【ラガード】と進みます。

イノベーター理論の5つの段階は導入期・成長期・成熟期・飽和期・衰退期の5段階と対応しているので、プロダクトライフサイクルにはイノベーター理論に通じる部分があるということです。

プロダクトライフサイクルの導入期

プロダクトライフサイクルの導入期は、製品・サービスを市場に投入し始めたばかりの段階です。消費者への認知度が低いため容易には売れません。そのために、市場で満足に売れずに導入期で撤退してしまう企業も生まれます。導入期の消費者はイノベーター層です。

導入期のマーケティング戦略

導入期の普及率は2.5%です。導入期にいかに商品を普及させていくかがポイントです。新しいモノが好きな消費者、先端的な技術を駆使したモノを買いたい消費者、専門性の高いモノを買いたい消費者に売り込むことになります。ただし闇雲に売るのではなく、普及率が低い段階でどの程度売れるのかを見極めることも必要ですから、売れない商品は早期に見切りをつけて潔く撤退することも検討します。

プロダクトライフサイクルの成長期

プロダクトライフサイクルの成長期は、製品・サービスが徐々に浸透し、消費者からの需要が高まっていく時期です。成長期の消費者はアーリーアダプター層です。

成長期のマーケティング戦略

成長期は、マーケティング戦略上、非常に重要な段階です。成長期の普及率は、イノベーター理論で言うと13.5%。成長期・導入期の普及率16%の段階と、その後の成熟期・飽和期・衰退期の84%の段階には、キャズムという深い溝があると言われています。なぜ成長期が重要かというと、この溝を乗り越えられないと84%という大きな普及に進むことができないからですね。

アーリーアダプター層には、次の成熟期のアーリーマジョリティ層への影響力を持つインフルエンサーがいます。アーリーマジョリティ層は、アーリーアダプター層が良いと思って採用している製品・サービスを、自分たちも良いと思って導入します。アーリーアダプター層は流行に敏感なので、成長期のマーケティングではSNSやInstagramのようなツールを使って消費者に訴求することが大切です。

プロダクトライフサイクルの成熟期

プロダクトライフサイクルの成熟期は、既に流行が進み、多くの消費者が製品・サービスを手に取っている時期。成熟期の消費者はアーリーマジョリティ層です。

成熟期のマーケティング戦略

成熟期の普及率は34%です。成熟期の普及率は大きく上昇していきますので、販路拡大のために資金を投じていくべきです。競合も参入してきますから、競合にも対処しなくてはならず、そのためには自社のブランド力を高めていく必要があるでしょう。大量生産が可能になるため価格が低下し、規模の経済が効いてきます。

プロダクトライフサイクルの飽和期

プロダクトライフサイクルの飽和期は、製品・サービスが十分に浸透し、消費者からのニーズが停滞して売上・利益共に低下していく段階です。飽和期の消費者はレイトマジョリティ層です。

飽和期のマーケティング戦略

飽和期の普及率は34%です。既に市場としては大きくなっているので、新しい製品・サービスを買い求める消費者は減少していきます。少ないパイを競合と奪い合うために低価格化が起こります。レイトマジョリティ層は、製品・サービスがすっかり浸透した頃に買い求める消費者です。そのため、製品・サービスの新規性を訴求するマーケティングは、レイトマジョリティ層には不向きです。

レイトマジョリティ層は製品・サービスに「世の中の標準」を求めます。標準からズレているものは嫌がるので、安心して買える要素があるものを買う訳です。成熟期までに市場への浸透度を高めていますので、この時期に多額の広告費をかけるというよりは、ブランド力で推したり低価格で勝負したりする戦略を立てることになります。

プロダクトライフサイクルの衰退期

プロダクトライフサイクルの衰退期は、需要はすっかり落ち込んで、売上・利益は前期よりも更に低下する時期です。また、市場から製品・サービスが消えていく時期でもあります。

衰退期のマーケティング戦略

衰退期の普及率は16%です。衰退期の消費者であるラガードは、保守的で、他者が良いと言ったり、業界のスタンダードという情報を耳にしたりしても、必ずしも購入に至る訳ではありません。むしろ今使っている商品で満足して、購入に至らないことも考えられます。あまり売れないようであれば、思い切って市場から撤退することも視野に入れます。衰退期のマーケティング戦略としては、利益の確保を目指したり、撤退したりするといったことが挙げられます。

事例から分かるプロダクトライフサイクル

イノベーター理論を交えつつ、商品の寿命を表したプロダクトライフサイクル。具体例があった方が分かりやすいので、3つの例を交えて解説します。

石炭

石炭は、かつては国のエネルギー資源として重要な位置を占めていました。しかし、火力・水力・原子力等が発展することにより、徐々に石炭の需要は頭打ちとなり、衰退期を迎えて市場から撤退し、他のエネルギーに代替されています。

Wii

任天堂は、ゲームの映像技術の発展ばかりでゲームに遊びを求める消費者が取り残されていると考え、コントローラを用いて直観的に楽しめるゲーム機Wii(ウィー)を開発し大ヒットを記録しました。世界で1億台を記録するほどの人気を博し、後継機のWiiUを市場に投入しましたが、既に直観的に楽しめるゲーム機のニーズは低下しており、4年程度で撤退を強いられました。Wiiの飽和期に似たような仕組みのゲーム機を投入したことで早期に市場から消えていったのでした。

Netflix

Netflix は、映像ストリーミング事業で現在も成功を収め続けている企業、またはブランドの名称です。創業期にはDVDレンタルサービス事業で発展しましたが、映像ストリーミング事業に軸足を移します。オリジナル作品の人気・評価が高く、米国アカデミー賞で監督賞を受賞した作品が出たこともあるほどです。ただ、Amazon等の競合も増えており、2019年第2四半期の有料会員数は1億5,100万人を突破しましたが、市場の予想を下回っています。プロダクトライフサイクルで言えば、Netflixの現状は成熟期に入っていると見ることができます。

まとめ

プロダクトライフサイクルは、市場に投入された製品・サービスが浸透、成熟、そして市場から消えていく一連のプロセスを表したものです。段階ごとに適切なマーケティング戦略を講じることを教えてくれます。

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