客単価とは?定義・計算方法・下がる原因・上げるための方法を紹介

客単価の記事
客単価とは企業の利益を高めるために必要な考え方です。客単価とは消費者が一度の購入で支払った額をいい、客単価が高くなれば利益上昇に繋がります。客単価の計算方法には短期・長期の考えがあり、それぞれで使うマーケティングも違います。記事では、客単価の定義、計算方法、客単価が下がる原因や客単価を上げるためにはどうしたら良いかを解説していきます。
目次

客単価とは?

企業の利益を高めるために必要な客単価という考え方。客単価の定義を説明します。

客単価の定義

客単価とは消費者が一度の購入で支払った額のことをいいます。消費者がたくさん店舗を訪れても、客単価が低ければ売上高上昇には繋がらず、結果、利益上昇は見込めません。客単価を高めることで企業の利益上昇に繋がるので、企業運営において客単価は重要なKPI(重要業績評価指標)となります。

客単価の計算方法

客単価の計算方法を具体的に見ていくことにしましょう。ある百貨店の化粧品売り場で、1日に買い物をしたアヤカさん・マイさん・ユウコさんの客単価を求めてみます。3人が買った金額は次の通りでした。

・アヤカさん:7,800円
・マイさん:5,500円
・ユウコさん:4,000円、4,200円

この時の客単価の計算方法は(7,800+5,000+4,000+4,200)÷3=7,000円となります。ポイントは消費者の数で割るということ。ユウコさんが4,000円と4,200円と2つの化粧品を買っていますので注文数で割りたくなりますが、客単価は一度の購入で支払った額をいいますから消費者数で割ります。消費者個々の支払金額は7,000円を下回っていますが、一度に支払った額である客単価で考えると7,000円となるのですね。

短期で見るか?長期で見るか?で変わる客単価

短期と長期で客単価の見方が変わってきます。前項で説明したのは短期の計算方法についてです。客単価を長期で見てみると客単価の額が変わってきます。消費者3人の1年間の客単価を調査していきましょう。

アヤカさんは7,800円の化粧品を買いましたが、その後は他の店舗で買っているのか、リピートには繋がりませんでした。アヤカさんは7,800円のまま変更ありません。次に、マイさんは5,500円の化粧品を季節ごとに買ってくれ、年間で計算すると5,500円×4回=22,000円を消費しました。また、ユウコさんも4,000円の化粧品をリピートしてくれ、4,000円+4,200円+4,000円=12,200円を年間で消費しました。

それでは、1年間の長期で見た時の客単価を計算してみましょう。計算方法は(7,800円+22,000円+12,200円)÷3=14,000円となります。1日の客単価と比べてみるとどうでしょうか?2人の消費者のリピートが増えたことで客単価も上がっています。長期と短期の客単価は、以下の例のようにマーケティングの方法が変わります。

・短期の客単価:年間で買った方が得になるキャンペーンを行う
・長期の客単価:来店時に特典を買ってもらう

まずは長期の客単価から説明します。マイさんは季節ごとに同じ化粧品を買っています。夏であればUVクリーム、冬であれば乾燥対策になる化粧水を売って、マイさんの客単価をさらに上げるマーケティングを行うことができるのです。来店時に特典を買ってもらうマーケティングですね。

続いて短期の客単価のマーケティングの説明です。1年間で1度の買い物に留まったアヤカさんに対して、年間で買った方が得になるキャンペーンを紹介します。アヤカさんが店頭で商品を気に入って買ったのであれば「年間で買っても良いかな」と思えるはずです。化粧品は毎日使うものですから、このように、1度の買い物でも客単価を上げることも可能なのです。

売上高を上げるための客単価の重要性

売上高は客単価×消費者数で表すことができます。「客単価」と「消費者の数」のどちらを増やしたら良いのでしょうか?売上高は客単価と消費者数の掛け算ですから、バランス良く客単価と消費者数を上げることができれば理想的です。

しかし、限られた消費者数でビジネスを行っている事業もあります。また、短期的に消費者数を増やすことができて売上高増に繋がっても、飽きられてしまえば事業は成り立ちません。ですので、客単価と消費者数のバランスを保つことは理想なのですが、売上高を上げるには客単価を上げるマーケティングを行うことが重要だということを理解しておきましょう。

客単価が下がる原因とは

客単価の計算方法や客単価の重要性について理解した上で、客単価の注意点として、やってはいけない客単価戦略にはどんなものがあるかを説明し、客単価が下がる原因を解説していきます。

戦略のない値下げ

価格戦略として値下げを行う場合があります。しかし、値下げを行えば消費者はたくさん購入してくれるのでしょうか?自社が値下げをすれば、他社も真似をして値下げをするでしょう。値下げは価格競争を生み、商品そのものの価値で消費者を引き付けることができなくなります。人間は損をしたくないと思っていますから、価格競争が起こっているうちは安い店でしか買わなくなります。

ビジネスモデルが成熟化すると、どの製品も類似してきます。消費者は似たり寄ったりの製品には手を伸ばさなくなり、客単価は下がってしまうのです。さらに値下げをすれば最安値を提示できた会社が多くの客単価を獲得できるように見えます。しかしそれも一時期です。製品にイノベーションが起きれば、価格が安いだけの製品は淘汰されるのです。

以上、見てきたように戦略のない値下げは価格競争を生み、客単価を下げてしまいます。そして、製品にイノベーションが起きると安いだけの製品では市場から駆逐されてしまいます。戦略のない値下げをするくらいなら、消費者が購入に至るプロセスと購入後のフォローを含めたカスタマーエクスペリエンス(顧客体験)に焦点を当てたビジネスを展開するべきです。

誤った価格設定

価格設定を誤った場合も客単価が下がる原因となります。例えば、開発に時間とお金をかけて作った製品を市場に売り出した時、価格設定は高めに出します。その理由は、投資した時間とお金を高い価格設定で回収したいからですね。しかし、いくら質の高い製品を売り出したところで、製品の質が高いだけではいずれは他社から模倣されてしまうのが市場原理です。

アップルのiPhoneは2007年の発売以来、新製品を出す度にメディアを騒ぎ立てる製品となりました。iPhoneが成功したのは質が高いからでしょうか?iPhoneが息の長い成功を継続できるのは、質が高い製品であることに加え、直観的な操作性、iTunesやApp Storeのようなプラットフォーム、質の高いアフターサービス等が総合的に消費者を満足させているからです。

投資した時間とお金を回収するために高い価格設定をしても、他社から模倣されれば価格競争に陥らざるを得ません。iPhoneのような他社が真似できないプラットフォーム、アフターサービス等によって差別化することで、高い価格設定を維持できるのです。

客単価を上げるには?

最後に客単価を上げるにはどうしたら良いのかを解説します。

新規性のある商品を開発・販売する

商品がヒットしたからといって、同じ商品のリニューアルばかりでは消費者は飽きてしまいます。飽きてしまった固定客は商品を買わなくなり、客単価が下がります。固定客が「これは面白そうだ」「楽しそうだ」と思える新規性のある商品を開発・販売することで多く購入してもらえるので、客単価が上がります。

新規性のある商品を販売し、広告を使って販促すれば、新規顧客を開拓することもできます。消費者が増えていけば客単価も上がっていくでしょう。

スノッブ効果を活用する

消費者の行動心理として「皆が持っているものを持ちたくない」「限定商品に弱い」というものがあります。このような行動心理を説明したものとして、米国の経済学者ハーヴェイ・ライベンシュタインが提唱したスノッブ効果があります。スノッブ効果とは、他人の消費が増えていくほど消費者の消費が減少していくというもの。希少性が高く、あるいは限定的な商品を見ると、消費者は「欲しい」と思う心理になるのです。

スノッブ効果を活用すると客単価を上げることができます。例えば「女優Yさんが映画で着用!限定100枚のTシャツ」として売り出すことで、商品に希少性が生まれ消費者は買いたいと思うようになるのです。希少性の高い商品は単価を上げても売れますから、客単価も上がっていくのです。

タイムセール

期間限定のタイムセールをしているECサイトを見かけますよね。タイムセールも客単価を上げる方法の1つです。タイムセール期間中なら8,000円で買えた化粧品が、期間が過ぎると定価の10,000円に戻ってしまったらどう思いますか?消費者は「今買えば8,000円で買えるのに、定価の10,000円で買うのは損よね」と、損をしたくない心理が働きますよね。

行動経済学では損をしたくない消費者の心理をプロスペクト理論といいますが、これはマーケティングでも使える概念です。タイムセールは損をしたくない消費者に商品を買わせ、客単価を上げる方法ですね。タイムセールは消費者に「つい買ってしまう」ように行動を促すのです。

割引クーポンを付ける

割引クーポンが付いていると、つい商品を買いたくなるものです。例えば、10,000円以上の購入で10%割引のクーポンを見ると、10,000円以上にするために余計な商品をプラスして購入することがあるでしょう。消費者は「余計な商品を買った」とは思っておらず、自分を納得させながら10,000円以上の買い物をしているのです。割引クーポンの効果は消費者の合理性に訴えながら客単価が上げる方法といえます。

クロスセルを使う

マイさんの例で特典を付けるマーケティングを説明しました。販売員が「夏の紫外線対策にこちらのUVクリームはいかがですか?ばっちり紫外線を予防できるんです」といわれると、消費者は「確かにCMで見たことがあるし、すぐに減るものだし買っても良いかな」と思って買ってくれます。

1つの商品にプラスして別の商品を薦めるマーケティングはクロスセルといいます。マイさんの例では定期購入している例でしたが、初回購入の時でも有効な手法です。どちらにしても、1つの商品だけでなく別の商品も買ってもらうことで、客単価を上げることができるのです。

まとめ

客単価は、企業の売り上げを上げ、さらに利益を上げるために必要な考え方です。客単価には短期・長期で計算方法が違い、採られるマーケティング施策も変わってくることが分かりました。消費者の行動心理をはかりつつ、客単価を上げる方法も参考にして下さい。

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