介護業界とは?離職率・深刻化する人手不足と原因・対策を解説

高齢化社会である日本においては、介護需要が高まることで、介護業界への注目が高まっています。しかし介護業界では深刻化する人手不足が課題となっていて、介護サービスへの需要に応えにくくなっています。記事では、介護業界のなりたちや介護業界の人手不足の原因と対策について解説します。

目次

介護業界とは?

高齢化が進む日本において、介護業界が注目されています。まずは介護業界のなりたちから知っていきましょう。

介護保険制度から始まった介護業界

介護業界を知る上では介護保険制度を知る必要があります。

日本における介護は家族介護が主流でしたが、女性の社会進出により家族介護をすることが難しくなりました。2000年に始まった介護保険制度により、介護サービスを利用して介護するスタイルへと変わっていきました。

介護保険制度から介護業界が始まったのです。 高齢化社会である日本において、介護業界への注目は高まるばかりですが、一方で介護業界では離職率が高いことが問題となっています。

離職率が高いと介護業界では人手不足となってしまいます。次の項目で離職率の実態を探っていきたいと思います。

介護業界の離職率の実態

介護業界の離職率の実態を解説します。

全産業よりも高い介護業界の離職率

公益財団法人介護労働安定センターによれば、介護業界の離職率は15.4%でした。全産業の離職率は14.6%なので介護業界の離職率は高めといえます。

参考:平成30年度介護労働実態調査

押し寄せる日本の高齢化

日本の高齢化率は2019年に総人口の28.4%となり、過去最多を記録しています。

高齢化率はさらに高まることが予想され、介護業界へのニーズも増えることでしょう。しかし、増加するニーズと比べて介護業界は離職率が高いです。離職率の高さは人手不足に繋がり、増加するニーズに応えきれないことが問題といえます。

介護業界の人手不足と原因

介護業界が人手不足になってしまうのには、どういう原因があるでしょうか?原因別に解説します。

介護業界の人手不足の現状

介護業界ではどの程度、人手不足が生じているのでしょうか。

公益財団法人介護労働安定センターの「平成30年度介護労働実態調査」によると、人手不足を感じている事業所の割合は年々高まっていて、平成29年で66.6%、平成30年では67.2%と増加傾向にあります。

人手不足の理由の1位には「採用が困難である」があり、89.1%となっています。

人手不足の原因【採用難】

人手不足の原因として採用難が挙げられます。平成30年度介護労働実態調査でも89.1%の事業所が採用難による人手不足があると説明しています。採用難の原因には「同業他社との人材獲得競争が厳しい」という原因があります。

人手不足の原因【女性のライフステージの変化に対応できない】

女性のライフステージの変化に対応できないことも人手不足の原因といえます。慢性的に人手不足である介護業界では職員が有給休暇を取りにくくなります。

妊娠中のつわりで休みたいと思っても有休を取れない可能性があります。

保育園から「子どもが熱を出した」といわれれば早退しなくてはいけませんが、介護業界では早退しにくいのです。結果的に、介護業界には人が集まりにくくなってしまうのです。

人手不足の原因【賃金を上げられない】

介護業界の月給の平均は234,873円です(平成30年度介護労働実態調査)。

全産業の月給の平均は306,200円なので、介護業界の賃金はかなり低い状態にあります。

平成30年賃金構造基本統計調査

「賃金が低いなら上げればいいじゃないか」と思われるかもしれませんが、介護業界ではなかなか賃金を上げられない現状があります。その理由の1つに介護報酬制度があります。

介護サービスに応じて介護報酬が定められているため、需要が高まったとしても価格を上げることができません。結果として介護業界で働く従業員の賃金の抑制に繋がっています。

人手不足の原因【人間関係が悪い】

介護業界では人手不足や労働環境のため人間関係が悪くなりがち。高齢者を介護するために身体を酷使している中で人が足りていないので、1人ひとりにあてられる仕事量は多くなります。

一所懸命に働いているのに賃金も安い。そうなると従業員は精神的にも辛くなるので、人間関係は悪化しやすくなります。人間関係が悪い業界では働きたくないので、人手不足となってしまうのです。

人手不足の原因【肉体労働がキツい】

介護業界では肉体労働がキツいです。1人ではトイレや浴室にも行けない高齢者に対して、従業員は介助してあげなくてはなりません。相手は大人の体重があるので、介助するにも身体を酷使するのです。

介護業界の人手不足を解消するための対策

介護業界の人手不足を解消するための対策を解説します。

女性が働きやすい環境を整える

平成30年度介護労働実態調査によると、介護業界で働く従業員のうち72%が女性です。ですから、女性が働きやすい環境を整えることで従業員の満足度は高められることになります。

女性は妊娠、出産、育児といったライフステージに変化があります。妊娠しても、子どもを育てながらでも介護業界で働ける環境を整えることで、人手不足解消に繋がります。

成果を出した人材に報いる賃金制度に改める

介護業界では従業員が心身ともに疲弊しがちとなります。他者よりもがんばって働いて成果を出した従業員に対して報いる賃金制度にすることで、従業員のモチベーションが上がります。

全員一律に賃金を上げるのではなく、賃金が上がる従業員と上がらない従業員がいるような賃金制度にするのです。 そうすれば、他業界より賃金が低いとしても将来「賃金が上がる見込み」があります。

介護業界にいても良いと思うでしょう。賃金制度を変えることで人手不足を解消する対策となります。

ITシステムを導入して労働環境を改善する

介護業界で働く従業員が疲弊するのは肉体労働や人間関係だけではありません。業務以外の事務処理が多いことで労働時間が長くなりがちとなるのです。

事務処理のために「こんなに事務処理があるなら介護業界で働きたくない」と従業員に思わせてしまうのです。 そこで実行したいのが ITシステム導入によるペーパーレス化です。

介護施設に入居している高齢者を介護するための事務処理をペーパーレス化すれば労働時間を削減できるでしょう。介護することに喜びを感じているホスピタリティの高い従業員は、面倒な事務処理から解放され介護に専念することができます。

人間関係を改善するためのユニットケアの導入

人手不足の原因である「人間関係の悪さ」。これを改善するためにユニットケアというシステムがあります。ユニットケアは介護施設の入居者10人前後を1ユニットと位置付け、顔なじみの従業員が介護にあたるという仕組み。

1ユニットが10人前後と少ないことで、介護にあたる従業員の心身の負担も減り人間関係の改善に繋げることができます。

外国人を受け入れる

介護業界に外国人を受け入れることも、人手不足を解消する対策になります。外国人は言語の壁がありますので、丁寧な指導が必要となります。

介護業界の人手不足の解消に成功した事例

介護業界の人手不足の解消に成功した事例を2社、紹介します。

リエイ

株式会社リエイは外国人材を受け入れることで、人手不足を解消しました。リエイでは日本的介護に優位性を持ち、海外の介護人材の養成事業も行っています。

社会福祉法人甲山福祉センター

社会福祉法人甲山福祉センターでは女性が働きやすい環境を整えることで、人手不足を解消しました。産前産後休暇の他、つわり休暇や生理休暇、子どもの病気看護休暇等があり、介護業界で働く72%の女性が働きやすい労働環境を整備しました。

まとめ

日本の高齢化率は2019年に総人口の28.4%となりました。これからも日本の高齢化は高まることが予想され介護需要は高まります。一方で介護業界は人手不足であり、人手不足を解消するための対策を実行する必要があります。

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